
高度利用地区をわかりやすく解説。不動産におけるメリットや注意点
高度利用地区とは、土地同士を集約し都市機能の向上を図る地区のこと。都市計画法における地域地区の1つです。土地の購入を検討している方のなかには、土地の特徴や将来における影響について知りたい方もいるのではないでしょうか。今回は、高度利用地区の概要や高度地区との違いに加え、不動産におけるメリットや注意点も紹介しますので、土地購入時の参考にしてください。
高度利用地区とは、高い建物を建て有効活用を図る土地のこと
高度利用地区とは、都市計画法で定める「地域地区」の一つで、高い建物を建て都市機能の向上を図る目的で指定される地区のことです。
高度利用地区では小規模建築物の建築を抑制し、高い建物を建築することで、歩道や広場、屋上緑化などに有効な空地の確保を行います。市街地中心部の限定されたエリアが指定されるのが一般的です。
なお、地域地区とは、計画的な街づくりを進める地域において、土地の用途を定めたエリアのこと。防火・防災や景観に関するものなど、21種類に分類され、指定目的に応じてさまざまな制限がかかります。
高度利用地区と「高度地区」の違い
地域地区の目的 | 建物の高さ制限 | |
---|---|---|
高度利用地区 | 小規模建築物の建築を抑制するとともに 建築物の敷地内に有効な空地を確保し、 土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新を促進する | なし |
高度地区 | 用途地域内において、市街地の環境を維持する 土地利用の増進を図る | あり |
(参考:国土交通省「高度利用地区」)
(参考:国土交通省「高度地区」)
高度利用地区と混合しやすい地域地区に「高度地区」があります。高度利用地区と高度地区の違いは、地区を定める目的と、それによる高さ制限の有無です。
高度利用地区は、建物の高さ制限が設けられていません。
一方の高度地区は、周辺環境における日照や採光、通風などを確保するために、建物の高さの最高限度又は最低限度が決められています。高さの最高限度と最低限度は、市区町村が必要に応じて定めます。
高度利用地区における4つの建築制限
高度利用地区では、目的にあった街づくりを行うために、建物を建築する際の規制が定められています。規制内容は、国土交通省の通達に従って各都道府県や指定都市が定めるため一律ではありません。ここでは、大まかな概要を確認しましょう。
1.容積率の最高限度と最低限度
高度利用地区では、高い建物を建てられるよう容積率の最高限度が定められています。たとえば東京都の場合、「容積率の緩和の最高限度」と「容積率自体の最高限度」が条件ごとに細かく定められており、その基準に従って建築する必要があります。
加えて、低い建物が建築できないように、容積率の最低限度も定められています。基準容積率の数値の範囲内で、適切な数値を定めるとしています。
※基準容積率とは |
2.建ぺい率の最高限度
高度利用地区では、建ぺい率の最高限度も定められています。
建ぺい率を制限する目的は、敷地内にオープンなスペースを設け、環境を整備することにあります。最高限度の数値は、都市計画の内容や商業地域内の建築物の種類などによって異なります。
3.建築面積の最低限度
高度利用地区では、敷地規模の現状や容積率の最高限度などを総合的に判断し、建物面積の最低限度も定めています。市街地環境の悪化を招くことがないようにするためのものです。
小さな土地での建築を抑制し、土地を集約して高度利用できるよう再開発を促進することが、建物面積の最低限度を定める目的です。
4.壁面位置の制限
壁面位置の制限は、高度利用地区内における歩行者などの通行確保のほか、植込みや芝生を整備し、市街地の環境向上を図る目的で設けられています。なお、壁面の位置は立体的に定めることも可能です。
参考:国土交通省「高度利用地区の指定について」
参考:東京都「東京都高度利用地区指定方針及び指定基準」
高度利用地区における建築基準の例外
高度利用地区に指定されると、原則として指定内容に適合する建物しか建築できませんが、例外も一部あります。どのような建物が例外に該当するのか、建築基準法をもとにご紹介します。
【例外1】撤去や移転が容易な建物
建築基準法第59条によると、以下のような建物が例外として示されています。
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(参考:e-Gov法令検索「建築基準法」第59条)
つまり、木造や鉄骨造、コンクリートブロック造などの、2階建て以下で地下がない一般的な戸建て住宅は、撤去や移転が容易なため、建築が可能と解釈できます。
【例外2】公益上で必要な建物
以下のような公益上必要と認められる建物も建築可能です。
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(参考:e-Gov法令検索「建築基準法」第59条)
上記の通り、学校や公民館、図書館など、公益上必要な建物は建築可能です。
高度利用地区に指定される場所とは?具体的なケース
どのようなエリアが高度利用の対象とされるのでしょうか。高度利用地区に指定される土地の特徴をご紹介します。
【ケース1】防災機能が低い
人や建物が密集する地域でありながら、防災機能が低いと判断された場合には、高度利用地区に指定されることがあります。
建物の一体化と高層化により十分な道路幅を確保できれば、緊急車両が侵入しやすくなり、消火と人命救助がスムーズにできるほか、避難経路の確保や延焼の防止につながります。
【ケース2】土地が有効に活用されていない
公共施設が分散していることで、土地が有効活用されていない状況においても、高度利用地区に指定されることがあります。
高度利用によって分散した機能が一カ所に集約すれば、暮らしの利便性が上がり、人の流れが誘発されるなど、街そのものの活性化につながります。
【ケース3】沿道地区計画として実施される
道路交通の騒音による障害緩和と防止を目的に沿道地区計画として、高度利用地区に指定されるケースもあります。
沿道に、防音または遮音に強い構造の高い建築物を建築できれば、沿道より奥にある地域は、騒音を遮りやすい街並みが実現できます。
高度利用地区に家を建てるメリット
先ほども述べたように、高度利用地区では条件にあった戸建て住宅なら建築が可能です。ここでは、高度利用地区に家を建てるメリットを紹介します。
周辺に商業施設や役所があり利便性が高い
高度利用地区は、利便性の高さが魅力の一つです。近くに商業施設や学校や役所といった施設が集約されているほか、駅にも近く、バスなどの公共交通機関も充実しています。
将来土地が高く売れる可能性も
利便性の高さから、高度利用地区やその周辺の土地は、将来不動産が高く売れる可能性があります。将来的に不動産の資産価値が高まることは、自身の資産形成を考える上で重要な要素です。
今後の不動産価格の動向は不透明ですが、高度利用地区であることを有利に資産価値が高まることは嬉しいポイントになるでしょう。
高度利用地区のデメリット・注意点
高度利用地区では、高層ビルなどの高い建物が建つので、一般的な戸建て住宅を建築する場合は、眺望や日当たりが悪くなることが考えられるでしょう。
家を建てるときは、現在の状況だけでなく、将来周辺の土地に高い建物が建つ可能性も考慮して、採光が取れる間取りを検討したいですね。
また、のちに所有する土地が高度利地区に指定された場合、高層ビルの建築などを理由に、低層の居住建物は立ち退きを迫られるケースもあります。よい条件で買い取ってもらえる可能性もありますが、そのようなリスクも知っておくとよいでしょう。
高度利用地区の場所を調べる方法
これから土地の購入をする場合、どこが高度利用地区に指定されているのか知りたい方もいるでしょう。ここでは、高度利用地区の場所を調べる方法についてご紹介します。
なお、高度利用地区は、将来の不動産の価格や利便性を左右する大事なポイントです。自分が購入しようとする土地が、高度利用地区の近くなのかも確認しておくことをおすすめします。
自治体窓口で都市計画図を閲覧する
高度利用地区を調べたいときは、自治体の窓口で確認する方法が最も確実です。都市計画図を閲覧することで、今後の計画などを把握できるでしょう。
インターネットで概略図を確認する
高度利用地区を手軽に概略図で確認したい場合は、インターネットで検索することもできます。「(調べたい地域)+ 高度利用地区 」で検索すると、自治体のホームページから概略図を確認できる場合が多いです。
しかし、インターネットでの検索では詳細な内容まで把握できない場合があります。正確な情報を知りたい場合には、自治体の窓口で確認するのがよいでしょう。
高度利用地区の特徴を知って、納得のいく家づくりを
市街地における、土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新を目的に制限を定められている、高度利用地区。高層ビルなどの高い建物を建てられる場所ではありますが、2階建てといった戸建て住宅も建てられます。
高度利用地区は商業施設や役所などが集約され、利便性の高さが魅力です。一方で、将来的には、眺望や採光が遮られることや、売却を迫られることなども考慮する必要があるでしょう。高度利用地区の特徴を知って、納得のいく家づくりを進めていけるとよいですね。