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隣地境界線とは。確認方法や建築する際のルール、トラブル回避の手段を紹介

家選びネット公式 (ie-erabi.net) 2023-12-05
基礎知識

隣地境界線とは、敷地と敷地の境界を示す線のこと。全ての土地の境界線がきちんと定められていれば問題ありませんが、土地によっては曖昧なこともあります。さらに、境界をめぐるルールを把握していないと、トラブルに巻き込まれるケースも少なくありません。今回は、隣地境界線の定義やルール、トラブル事例やトラブル回避方法などをご紹介します。


隣地境界線とは?ほかの境界線との違い



まずは、隣地境界線の定義や重要性、ほかの境界線との違いを確認しましょう。


隣地境界線とは、土地と土地の境を示す線のこと

隣地境界線とは、隣り合った土地同士の境目を示す線のことです。一般的な住宅の場合、隣地との境界に打ち込まれた「境界杭」や「境界標」と呼ばれる目印を結んだ線が、隣地境界線となります。


なお、境界を示す境界標は必ずしも存在するとは限りません。実際に境界線として明示されていることはなく、垣根や塀によって仕切られていることもあります。


隣地境界線の重要性

隣地境界線には法的な効力があり、さまざまなルールが存在します。家の建築や増築、外構工事の際は、民法や建築基準法に定められている決まりに則って対応する必要があるため、隣地境界線の確認は欠かせません。


もし、隣地境界線のルールを無視して建築すると、予期せぬトラブルを招くことも考えられます。トラブルを事前に回避するためにも、土地の購入や相続を検討する場合には、隣地境界線を明確にしておくことが重要です。


隣地境界線と「道路境界線」「敷地境界線」との違い

境界線には、隣地境界線以外にも「道路境界線」や「敷地境界線」があります。それぞれの違いを確認しましょう。


道路境界線

道路境界線とは、土地と、その土地に接する「道路」との境界を示す線のこと。ここで示す「道路」は、区や市が所有する公道を示し、私道は含みません。


隣地境界線との違いは、線の位置といえます。道路境界線は、道路と土地の間を示すのに対し、隣地境界線は隣接地同士の間を示します。


敷地境界線

敷地境界線とは、土地の外周を示す境界線のことです。隣地境界線と道路境界線を含めたもので、境界線の総称として呼ばれることもあります。そのため、隣地境界線との大きな違いはありません。敷地境界線の一部が隣地境界線であると捉えるとよいでしょう。


隣地境界線を確認する3つの方法



隣地境界線は、土地にある境界標と呼ばれる目印で確認できるのが一般的です。しかし、境界標がない場合は、以下の3つの方法で把握できるため、それぞれの特徴を理解しましょう。



法務局で地積測量図の取得
測量の実施
筆界特定制度の利用
確認までの期間
当日~1週間
3~4カ月程度
6カ月
費用
500円程度
35~80万円程度
土地の価格によって異なる


【方法1】法務局で地積測量図を取得する

地積測量図とは、土地の面積が記載された公的な図面のこと。最寄りの法務局で地積測量図を取得することで、隣接する土地との境界を把握できます。


インターネットや郵送で取得することができ、費用も数百円なので手軽に確認できる方法といえます。


ただし、古い地積測量図は図面に記載されている面積や境界が間違っていることもあります。測量や記載方法が定まっていない昭和時代に作成された図は、信用度が低いといわれているのが実情です。可能であれば、現在の測量方法で地積測量図が作成されている2005年3月7日以降のものを参考にするとよいでしょう。


【方法2】測量を実施する

地積測量図が古く信用できないときや法務局に地積測量図が存在しないときには、測量を実施することで境界を確認できます。測量とは、土地の形や面積を正確に測ること。土地家屋調査士に依頼し、新しく測量図を作成する「境界確定測量」という方法がとられます。


注意点として、境界確定測量において境界図を作成する場合、「隣接する土地の所有者」と「隣接する道路を管理する市区町村」の立会いが必要です。


測量にかかる費用は35〜80万円程度が相場ですが、市区町村などの関係者である官民の立ち合いや土地の形が複雑なケースは、費用が高くなる傾向にあります。測量は3〜4カ月と期間もかかるため、測量を実施する際は早めの対応が必要となるでしょう。


【方法3】筆界特定制度を利用する

3つ目は、筆界特定制度の利用です。筆界特定制度とは、公的機関である筆界特定登記官が土地の登記に基づき調査し、境界位置を明示する制度のこと。「測量を希望しても隣人が協力してくれない」「境界線で揉めている」といったときに活用されるケースが多いです。


筆界特定制度にかかる手数料は土地の価格によって異なりますが、土地の価格が安いと数千円程度です。また、調査のなかで、測量が必要になった場合には、追加で測量費用も申請者が負担します。


参考:法務省「筆界特定制度」


隣地境界線から何cm離さなければならない?距離に関するルール



ここからは、実際に家を建築する際の隣地境界線に関するルールを解説します。民法では「建物と境界線との間に必要な幅」が定めているため、詳細な数値を把握し家づくりに役立てましょう。


建物を建築する際は境界から50㎝以上の距離を保つ

境界線付近の建築制限として、民法第234条1項では「建物を建築する場合、境界から50㎝以上離さなければならない」と定められています。さらに、この規定に違反した場合には、隣地の所有者は、その建築の中止、又は変更させることができるとしています。


一方で、50㎝以上離さなくてもよいという慣習がある地域も存在します。その場合は、民法236条において「その慣習に従う」と示されています。この場合、双方の解釈の違いによってトラブルに発展する場合も考えられるため注意が必要でしょう。


参考:e-Gov法令検索「明治二十九年法律第八十九号民法」


耐火構造等の条件を満たす場合は50㎝未満でもよい

建築基準法63条においては、防火地域又は準防火地域内にある建築物で、外壁が耐火構造のものである場合に関して、外壁を隣地境界線に接して設けられるとしています。


民法では50㎝以上の距離を保つという規定がありますが、建築基準法においては、耐火構造等の条件を満たしていれば50㎝未満でもよいとされており、迷う方もいるでしょう。


この内容において、裁判では「建築基準法を優先する」という判例が出ています。参考事例として認識しておくとよいでしょう。


参考:e-Gov法令検索「昭和二十五年法律第二百一号建築基準法」


窓や縁側は境界から1m以上離すか目隠しを設置する

建物については「境界線から50㎝以上離す」という定めがありますが、隣接する宅地を見通せる窓や縁側は境界線から1m以上離すか、目隠しを設置する必要があるとしています。(民法235条)


プライバシー保護の観点から義務付けられているものなので、開閉できない曇りガラスの窓である場合には目隠しの設置が不要です。


参考:e-Gov法令検索「明治二十九年法律第八十九号民法」


隣地境界線を守らなかった場合のリスク


隣地境界線が定めるルールを守らなかった場合、どのようなリスクがあるのでしょうか。


隣人とのトラブル発生

隣地境界線における法律は次のような目的で定められています。


  • 土地の侵害防止
  • 災害時の安全性確保
  • 日照や通風といった住みやすさの確保


法律を無視した家の建築が行った場合、隣人の快適な生活を奪うことにつながり、隣地所有者とのトラブルに発展することが考えられます。


建築中止や建築物の変更

住宅建築時に境界線から50㎝以上の距離を保たなかった場合、隣人は建築の中止や変更を請求できます。すでに建物の建築着手から起算し1年経過している場合や完成後は、法律に違反した相手に対し、損害賠償を請求できるとしています。このような事態が生じた場合、建築の中止や変更、損害賠償の発生により、多額の費用がかかることが予想されます。


隣地境界線に関連するトラブル事例