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日照権とは?トラブル事例や日当たりの良い家を建てる工夫

家選びネット公式 (ie-erabi.net) 2024-01-11
基礎知識

日照権とは、建物の日当たりを確保する権利のこと。家を建てるときは、日照権に考慮した家づくりはもちろんですが、日照権が侵害されるケースも知っておく必要があります。今回は日照権の意味や規制の内容、日当たりにまつわるトラブル事例とその解決方法などをご紹介します。日当たりの悪い立地を有効活用する工夫も解説するので、家づくりの参考にしてください。


日照権とは「建物の日当たりを確保する権利」のこと



日照権とは、最低限の日当たりを確保し快適な暮らしを守る権利のことです。日照権は法律で定められているわけではありません。しかし、人が生きていく上で有する当然の権利であるという考えから、日照権を守るための規制や制限が建築基準法で設けられています。それが「日影規制」「斜線制限」です。


現在、家や建物を建築する場合は必ず建築基準法に則って建てる必要があります。そのため、「最低限守るべき基準」である建築基準法をクリアしていれば、最低限の日照は確保されていると捉えられるでしょう。


日照権を守るための「日影規制」「斜線制限」とは



日照権を守るための「日影規制」と「斜線制限」は、どちらも建物の高さを制限する規制です。2つの規制について確認しましょう。


「日影規制」とは

日影規制(ひかげきせい・にちえいきせい)とは、周囲の日照確保を目的に、建物の高さを制限する規制です。1年で最も日が短い冬至の日(12月22日頃)を基準に、日陰を一定時間以上生じさせてはならない、と定められています。

規制内容は、建物を建てる場所の「用途地域」や「建物の高さ」によって決められています。さらに、地域によって環境や土地の利用事情が異なるため、自治体の条例で指定するケースもあります。




「斜線制限」とは

斜線制限とは、建物と建物の間の空間を確保し、道路や隣地の日照だけでなく、採光や通風の妨げにならないよう、建物の高さを規制するものです。斜線制限は、次の3つに分けられます。


1.道路斜線制限
2.隣地斜線制限
3.北側斜線制限


1.道路斜線制限


道路斜線制限とは、道路やその周辺の日照や採光・通風を確保するための制限です。道路の反対側の道路境界線から上空に向かって、一定の勾配で引いた斜線より下に建物を建てる必要があります。


勾配の角度は、一般的に住宅系用途地域では道路幅に対して「1.25倍」で、そのほかの用途地域では「1.5倍以下」になるように建物の高さが制限されています。なお、道路から一定の距離が離れた場合は、制限がなく直線的に建てることが可能です。


2.隣地斜線制限



隣地斜線制限とは、隣に住む人の日照や採光・通風を確保するために定められた制限です。隣接した建物部分の高さが20mまたは31mを超える部分に適用されるため、主にマンションや高層ビルが建つような場合に関係します。

隣地斜線制限は、建物の敷地と敷地の境界である「隣地境界線」を起点として「高さ」と「傾斜の勾配」が定められています。高さと勾配の比率は、住宅系用途地域であれば「1:1.25」、そのほかの用途地域であれば「1:2.5」の範囲内で建築する必要があります。


第一種・第二種低層住居専用地域では、「絶対高さの制限」と呼ばれる建物の高さ上限が10mまたは12mのいずれかに設定されています。そのため、隣地斜線制限は適用されません。


3.北側斜線制限


北側斜線制限とは、北側隣地の採光や通風を確保するため、建物の高さを規制したものです。第一種、第二種低層住居専用地域・中高層住居専用地域で設けられています。

まず、北側隣地の境界線上に一定の高さをとります。そこをスタート位置として、北から南方向へ一定の傾きの斜線を引き、その範囲内でしか建築できません。先に述べた「一定の高さ」は、第一種・第二種低層住居専用地域の場合「5m」、中高層住居専用地域では「10m」と定められています。


我慢すべき範囲の限界を示す「受忍限度」とは



建物を建築する際には、「日影規制」と「斜線制限」を守らなければいけません。規制を無視した建築物を建てた場合は、工事差し止め請求や損害賠償請求されるケースもあるため注意が必要です。


一方で、規制に反していない建物であっても、社会生活を送るうえで、我慢すべき限界を超える状況が生じている場合、日照権を侵害していると訴えられるケースがあります。


この「我慢すべき限界」のことは「受忍限度(じゅにんげんど)」と言い、法律はありませんが、市町村や都道府県ごとに基準が設けられています。

トラブルが発生して裁判になった場合、受忍限度を超えているかの判断は、影響を受けた被害者側の気持ちなどの状況によって異なります。


受忍限度の判断基準

具体的な受忍限度の判断基準は以下の通りです。

  • 用途地域が「住居系」「商業系」のどちらか
  • 日光被害がどの程度、生じているか
  • 被害者側の生活にどのような悪影響を与えているか
  • 先に建物を建てたのはどちらか