
漆喰壁とは?基礎知識から後悔しないためのポイントを解説
自然素材の漆喰壁に興味を持ち、家づくりに取り入れたいと考える方もいるのではないでしょうか。なかには「漆喰壁の特徴は?」「取り入れる際の注意点は?」など、疑問を持つ方もいるでしょう。
そこで今回は、漆喰壁の特徴やメリット・デメリット、漆喰壁が向いている場所などを解説します。後悔しないためのポイントもご紹介しますので、併せて参考にしてみて下さい。
漆喰(しっくい)壁とは
漆喰とは、石灰石(炭酸カルシウム)を焼き、水を加えてできた消石灰(水酸化カルシウム)を主原料とした建築材料のこと。その漆喰を使った壁が「漆喰壁」です。
石灰石はもともとサンゴ礁が長い時間をかけて変化したもので、自然由来の材料です。シックハウス症候群の原因物質を分解する効果もあるとされ、体に優しい壁材として漆喰壁の需要が高まっています。
漆喰は雨風にも強いため、建物の内壁だけでなく、外壁や庭の造作などにも使われます。
【シックハウス症候群とは】 建材や家具に含まれる化学物質のほか、結露によるカビなどが原因で、頭痛やめまい・目の刺激感といった症状を引き起こす健康被害のこと |
漆喰壁と「珪藻土」の違い
漆喰壁と混同しやすい塗り壁材の1つに「珪藻土(けいそうど)」があります。珪藻土も自然素材の塗り壁材ですが、漆喰とは成分や見た目、機能面、価格に違いがあります。以下の表で詳しく見ていきましょう。
漆喰 | 珪藻土 | |
---|---|---|
主原料 | 消石灰(水酸化カルシウム) | 植物性プランクトンの化石 |
仕上がり | 見た目がツルツルしている | 手触りがザラッとしている |
機能 | ・耐久性が高い ・調湿性や脱臭効果、防火性がある など | ・調湿性が高い ・脱臭効果や防火性を持つ など |
価格 | 珪藻土より価格が高い | 漆喰よりやや低価格 |
珪藻土は、珪藻という植物性プランクトンの化石が堆積したものです。仕上がりは、漆喰がツルツルとした見た目であるのに対し、珪藻土の方は手触りがザラっとしています。機能面は同じような性質を持ちますが、双方を比べると、周囲の湿度に合わせる調湿性は珪藻土壁、耐久性は漆喰壁の方が優れています。価格は、珪藻土の方が漆喰より低価格です。
どちらを採用するか悩んだ際は、施工会社に相談したり実物を確認したりして、自分好みの塗り壁材を見つけるとよいでしょう。
漆喰壁のメリット
漆喰壁は、日本だけでなく世界各国で昔から使われてきた建材であり、現在の住環境においてもさまざまなメリットがあります。ここからは、漆喰壁のメリットを確認しましょう。
【メリット1】耐久性が優れている
漆喰壁の最大のメリットは、耐久性に優れている点です。原料である消石灰は二酸化炭素を吸収することで硬くなる性質があり、劣化しにくく、年月を経るほどに耐久性が向上するという特徴があります。
そのため、漆喰壁の耐久年数は約100年と言われており、日本のお城や武家屋敷の壁のほか、世界各国の歴史的建造物で使用されています。
【メリット2】調湿性がある
漆喰壁には目には見えない細かな穴が空いていることから、調湿性能も期待できます。調湿性とは、周囲の湿度をコントロールする力のこと。湿度の高い夏場は湿気を吸い取り、乾燥する冬場は湿気を放出するため、快適に過ごせるのが特徴です。
また、湿度を適切に保つことでカビ・ダニの繁殖や結露を抑え、家自体の耐久性を維持する効果も期待できます。漆喰壁の調湿性効果を最大限に活かすためには気密と断熱が重要とされており、気密性に優れた現代の住宅に最適な壁材と言えるでしょう。
【メリット3】耐火性が高い
漆喰壁の主原料である消石灰は、不燃性のため耐火性が高いことも魅力の1つです。一般的な住宅に使用されるビニールクロスより燃えにくく、防火対策としてもおすすめです。万が一壁が燃えてしまった場合にも、自然由来であるため、有害物質を発生する可能性は低いでしょう。
【メリット4】断熱効果がある
漆喰壁は優れた断熱効果があるのも嬉しいポイントです。漆喰は、表面にたくさんの細かな穴があり空気層をもつため保冷・保温の効果が働き、夏は涼しく、冬は温かい空間を保ってくれます。室内を快適な温度に保てることで、光熱費の節約にもつながるでしょう。
【メリット5】高い消臭効果が期待できる
漆喰は、消臭効果が期待できることもメリットです。表面の細かな穴がにおいを吸収する力をもつため、快適な環境を保てるでしょう。漆喰はアルカリ性なので、生ゴミや酸性のにおいなどの生活臭に対して、特に効果があるとされています。また、抗菌作用にも優れており、カビや細菌を防いでくれるでしょう。
【メリット6】デザイン性が高い
漆喰塗り壁材の種類や仕上げ方法によって、豊富なデザインを実現できるのも漆喰のよさです。高級感や温かみを演出できるのは、塗り壁材ならでは魅力といえるでしょう。塗り方や色を変えて、個性的でおしゃれな空間を演出することも可能です。
漆喰壁のデメリット
メリットの多い漆喰壁ですが、家づくりに取り入れる際はデメリットを押さえておくことも大切です。ここからは、漆喰壁のデメリットをご紹介します。
【デメリット1】手間と時間がかかるので価格が高い
漆喰の施工には専門的な技術や手間と時間が必要となるため、一般的なビニールクロスに比べてコストがかかります。漆喰は、養生をしてから下塗り・仕上げ塗りという長い工程を経て完成となります。また、職人の経験や腕によっては、仕上がりに差が出る可能性もあります。
一方で、漆喰壁は耐久性が高いため、ビニールクロスのように定期的な張り替えコストがかかりません。初期費用は高くなりますが、長い目で見れば費用対効果が高いと考えられるでしょう。
【デメリット2】汚れが目立ちやすい
吸湿性があるため、汚れが目立ちやすい点も漆喰壁のデメリットとして挙げられます。特に内装で漆喰壁を使用した場合、コーヒーやワインなどがついた際は水をはじかずシミになる可能性があります。
汚れがついたあとの対処法としては、削ったり塗り直したりするなどの方法もあります。しかし、部分的な補修箇所が目立って気になる場合には、全面的に補修する必要も出てくるでしょう。
【デメリット3】ひび割れが発生する可能性がある
高い耐久性を誇る漆喰壁ですが、ひび割れが発生する可能性を理解しておくことも大切です。ひび割れは、環境が適していなかったり下地に問題があったりすると起こりやすいと言われています。
特に、外壁の場合は雨風や日差しが直接当たるため、漆喰が剥がれたり、ひび割れたりするリスクが高まります。
なお、ひび割れした場合には、上塗りをすることで対処が可能です。
漆喰壁にかかる費用と適している場所
ここからは、漆喰壁を取り入れる際にかかる費用や、漆喰壁に適している場所をご紹介します。
漆喰壁にかかる費用
塗り壁内装費用は、一般的に材料費と施工費用を合計したものが施工金額となります。漆喰壁の費用相場は、1平方メートルあたり4,000円〜8,000円程度と言われていますが、施工内容や職人の技術によって金額が変動します。
一方、壁紙などのビニールクロスの場合は、1平方メートルあたり1,000円〜3,000円程度が相場です。比較すると、漆喰壁の方が約2倍〜4倍以上の費用がかかると考えられるでしょう。
種類 | 1平方メートルの費用相場 |
---|---|
漆喰壁 | 4,000円~8,000円程度 |
ビニールクロス | 1,000円~3,000円程度 |
費用を抑えたいときは、漆喰壁をプランに組み込める施工会社へ依頼するのがおすすめです。漆喰壁を下地から施工できれば工程が少なく済み、その分費用を抑えられるからです。一方で、既存の壁を漆喰壁に変更する場合には、下地の状態によって施工時間や期間、費用が変わり、無駄な費用も発生しやすくなります。
家を建てる段階から漆喰壁を希望する場合には、施工事例がある会社を選び、あらかじめ費用について相談しておくと安心でしょう。
なお、「DIYで費用を抑えたい」と考える方もいるかもしれません。漆喰は、養生するためのテープやコテなどのさまざまな道具が必要となり、それらをすべて揃えようと思うと費用がかさみます。また、施工者の技術によって耐久性を左右するため、専門の職人や施工会社に依頼したほうが得策でしょう。
漆喰壁が向いている場所
漆喰壁は外装にも使用できますが、特に内装におすすめです。ツルッとした質感や風合いが特徴のため、和室や洋室を問わずどんな雰囲気の部屋にも調和し、温かみのある室内を演出します。
また、調湿性や消臭・抗菌効果があるため、リビングやキッチン、玄関、トイレなど、においがこもりやすい場所に取り入れると快適な空間になりやすいでしょう。
漆喰壁で後悔しないために知っておきたい4つのポイント
漆喰壁を取り入れる際は、きれいな状態を維持するために気をつけるべきこともあります。漆喰壁で後悔しないために知っておきたいポイントを見ていきましょう。
1.10~15年ごとのメンテナンスが大切
漆喰壁は、汚れが目立ちやすく傷やひび割れが発生する可能性もあるため、きれいに保つためには定期的なメンテナンスが不可欠です。メンテナンスの頻度は、環境状況や漆喰の種類によって異なりますが、一般的に10年〜15年ごとに塗り替え(重ね塗りのこと)を行う必要があります。
メンテナンスを怠ると漆喰壁の劣化が進み、張り替え(下地から全面的な補修のこと)や修理で高額な費用がかかる可能性もあるため、注意が必要です。
2.画鋲などを使って壁掛けをする場合は工夫が必要
漆喰壁に壁装飾をする場合、カレンダーや写真などの軽いものであれば画鋲で飾る事ができますが、時計や絵画など重量のあるものは工夫が必要です。穴を開けて重量のあるものを飾ると、重さによって落ちてしまうことがあり危険だからです。
また、漆喰壁は、穴を開けても簡単に上から塗って補修できる点がメリットですが、せっかくの漆喰に穴を開けたくないと考える方もいるでしょう。最近では、壁や天井にピクチャーレールを設置し、フックに絵画や時計、植物などをかけてインテリアを楽しむ方もいます。
ちょっとした小物を置いたり掲示物を貼ったりするには、マグネットボードや有孔(ゆうこう)ボードを活用するのもおすすめです。
3.カビを発生させないためには換気が大切
調湿性を有する漆喰壁ですが、住環境によってはカビが発生することも覚えておきましょう。カビが発生する主な原因は、以下の要因によって壁が湿気を吸いすぎ、吸湿性が限界に達しているためです。
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カビの発生を防ぐためには、十分に換気をして湿気を逃していく必要があります。また、定期的に壁のホコリを取り除き、カビの原因を増やさないことも大切です。
4.漆喰壁紙を活用するのも1つの方法
漆喰壁にはさまざまなメリットがありますが、デメリットや注意点を考慮して導入を悩む方もいるかもしれません。漆喰壁の雰囲気や機能を少しでも取り入れたいときには、漆喰壁紙を活用するのも1つの方法です。
漆喰壁紙とは、漆喰風や漆喰調の壁紙のこと。実際に漆喰を壁に塗るタイプと比較すると、機能は劣りますが、一般的なクロスよりも調湿性や耐久性が高いのが特徴です。種類によって、施工費用や期間に違いがあるため、予算や用途に応じて選択するとよいでしょう。
大手ハウスメーカーで漆喰壁の住まいを
大手ハウスメーカーで家づくりを検討している方の中には、「漆喰壁を取り入れたい」「自然素材の家にしたい」と考えている方もいるのではないでしょうか。
大手ハウスメーカーは、理想の住まいにかける想いに寄り添い、最新の技術や豊富な実績をもとに、最適で心地よい住まいを提案・設計することをお手伝いします。漆喰壁や自然素材を取り入れる際の効果やおすすめの導入場所などにおいても、適切なアドバイスがもらえるでしょう。
ハウスメーカーによってさまざまな特徴があるので、住宅展示場に足を運んだり、資料請求をしたりしながら、ご自身の希望に合ったハウスメーカーを探してみてはいかがでしょうか。
漆喰壁の特徴を理解して理想のマイホームを建てよう
漆喰壁はもともと、耐久性や防火性が優れていることから、国内外の建物の外壁・内壁に使われていました。現代では、自然素材ならではの機能性やデザイン性の高さが注目され、室内壁に取り入れる方が増えています。
一方で、取り入れる際には、費用がかかることやメンテナンスについて理解しておくことが大切です。漆喰壁のメリットやデメリットなど十分理解したうえで、漆喰壁を使った快適な住まいを手に入れられるとよいですね。