「子育てエコホーム支援事業」は、主に子育て世帯や若者夫婦世帯を対象にした国土交通省の事業です。高い省エネ基準を満たす新築住宅の取得や省エネ改修への支援を目的としています。新築住宅の取得やリフォームを検討されている方は、子育てエコホーム支援事業を活用しましょう。
今回は、子育てエコホーム支援事業の補助金額や適用条件、申請方法などをご紹介します。申請に関する疑問についても解説していますので、参考にしてみてください。
子育てエコホーム支援事業とは?
子育てエコホーム支援事業とは、「高い省エネ性能を有する新築住宅の取得」や「住宅の省エネ改修」などに対する補助金制度のこと。主な対象は子育て世帯と若者夫婦世帯です。支援によって省エネ投資の下支えをすることで、2050年のカーボンニュートラルの実現を目指しています。
子育てエコホーム支援事業は予算額が決まっているため、予算の上限に達した時点で早期終了となる場合があることに注意しましょう。
子育てエコホーム支援事業の対象
子育てエコホーム支援事業の対象となるケースは、「注文住宅を新築する場合」「新築分譲住宅を購入する場合」「リフォームをする場合」の3つに分けられます。
| 注文住宅を新築する場合 | 新築分譲住宅を購入する場合 | リフォームをする場合 |
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補助対象者
| 建築主
| 購入者
| 工事発注者
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補助対象者の条件
| 子育て世帯または若者夫婦世帯
| 子育て世帯または若者夫婦世帯
| 世帯制限なし
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補助内容
| ・長期優良住宅:1住戸につき100万円 ・ZEH水準住宅:1住戸につき80万円 | ・長期優良住宅:1住戸につき100万円 ・ZEH水準住宅:1住戸につき80万円 | ※世帯の形態とリフォームの内容によって異なる ・子育て世帯/若者夫婦世帯:1住戸につき30万~60万円 ・その他の世帯:1住戸につき20万~30万円 |
子育て世帯、若者夫婦世帯とは
子育てエコホーム支援事業は、主に「子育て世帯」「若者夫婦世帯」が対象です。ただし、リフォームをする場合は、子育て・若者夫婦世帯以外の世帯も申請することができます。
「子育て世帯」「若者夫婦世帯」については、以下の通りです。
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対象範囲 | 2024年3月末までに 工事着手した場合の年齢 |
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子育て世代
| ・申請時点において子どもを有する世帯 ・子どもの年齢が2023年4月1日時点で18歳未満(2005年4月2日以降に出生)
| 子どもの年齢が2022年4月1日時点で18歳未満(2004年4月2日以降に出生)
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若者夫婦世代
| ・申請時点において夫婦である世帯 ・夫婦いずれかの年齢が2023年4月1日時点で39歳以下(1983年4月2日以降に出生)
| 2022年4月1日時点でいずれかが39歳以下(1982年4月2日以降に出生)
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高い省エネ性能を有する新築住宅とは
子育てエコホーム支援事業では、長期優良住宅もしくはZEH水準住宅が「高い省エネ性能を有する住宅」として記載されています。
「長期優良住宅」とは、長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられている住宅で、都道府県や市町村の認定を受けたもののこと。
一方、「ZEH水準住宅」は、強化外皮基準に適合し、再生可能エネルギー等を除き、基準一次エネルギー消費量から20%以上の一次エネルギー消費量が削減される性能を有するもののことです。
ここからは、対象ケースごとの詳細について解説していきます。
注文住宅を新築する場合
注文住宅を新築する場合の「補助対象者」「補助金額」「適用条件」は以下の通りです。
補助対象者
注文住宅を新築する場合は、建築主が補助対象者です。子育て世帯または若者夫婦世帯であることが条件で、エコホーム支援事業者と工事請負契約を締結し、住宅を新築する方を対象としています。
補助金額
注文住宅を新築する場合の補助金額は、住宅の種類および立地区域によって異なります。
長期優良住宅
| 1住戸につき100万円 ※ただし「市街化調整区域」かつ「土砂災害警戒区域又は浸水想定区域」に立地している場合は1住戸につき50万円 |
ZEH水準住宅
| 1住戸につき80万円 ※ただし「市街化調整区域」かつ「土砂災害警戒区域又は浸水想定区域」に立地している場合は1住戸につき40万円
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適用条件
注文住宅を新築する場合の適用条件は以下の通りです。
- 証明書等により、長期優良住宅に該当することが確認できる
- 証明書等により、ZEH水準住宅に該当することが確認できる
- 所有者(建築主)自らが居住する
- 住戸の床面積が50㎡以上240㎡以下である
- 土砂災害防止法に基づく、土砂災害特別警戒区域又は災害危険区域(急傾斜地崩壊危険区域又は地すべり防止区域と重複する区域に限る)に原則立地しないもの
- 都市再生特別措置法第88条第5項の規定により、当該住宅に係る届出をした者が同条第3項の規定による勧告に従わなかった旨の公表がされていないもの
- 交付申請時、一定以上の出来高の工事完了が確認できる
1・2のいずれか、かつ3~7をすべて満たす必要があります。詳しい適用条件については、下記の参考ページをご確認ください。
新築分譲住宅を購入する場合
新築分譲住宅を購入する場合の「補助対象者」「補助金額」「適用条件」は以下の通りです。
補助対象者
新築分譲住宅を購入する場合は、購入者が補助対象者となります。子育て世帯または若者夫婦世帯に限るとされ、エコホーム支援事業者と不動産売買契約を締結し、新築分譲住宅を購入・所有する方が対象です。
補助金額
新築分譲住宅を購入する場合も、住宅の種類と立地区域によって補助金額が異なります。
長期優良住宅
| 1住戸につき100万円 ※ただし「市街化調整区域」かつ「土砂災害警戒区域又は浸水想定区域」に立地している場合は1住戸につき50万円
|
ZEH水準住宅
| 1住戸につき80万円 ※ただし「市街化調整区域」かつ「土砂災害警戒区域又は浸水想定区域」に立地している場合は1住戸につき40万円
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適用条件
新築分譲住宅を購入する場合の適用条件は、以下の通りです。
- 証明書等により、長期優良住宅に該当することが確認できる
- 証明書等により、ZEH水準住宅に該当することが確認できる
- 所有者(購入者)自らが居住する
- 住戸の床面積が50㎡以上240㎡以下である
- 土砂災害防止法に基づく、土砂災害特別警戒区域又は災害危険区域(急傾斜地崩壊危険区域又は地すべり防止区域と重複する区域に限る)に原則立地しないもの
- 都市再生特別措置法第88条第5項の規定により、当該住宅に係る届出をした者が同条第3項の規定による勧告に従わなかった旨の公表がされていないもの
- 不動産売買契約締結時点において、未完成または完成から1年以内であり、人の居住の用に供したことのないもの
- 交付申請時、一定以上の出来高の工事完了が確認できる
1・2のいずれか、かつ3~8をすべて満たす方が対象となります。詳しい適用条件については、下記の参考ページをご確認ください。
リフォームをする場合
リフォームをする場合の「補助対象者」「補助金額」「適用条件」は、以下の通りです。
補助対象者
リフォームをする場合、補助対象者は工事発注者です。「エコホーム支援事業者と工事請負契約等を締結してリフォーム工事をする方」であり「リフォームする住宅の所有者等」に該当する方を対象としています。
なお、リフォームをする場合は、注文住宅を新築する、もしくは新築分譲住宅を購入する場合と異なり、世帯が限定されていないのがポイントです。
補助金額
リフォームをする場合の補助金額は、世帯の形態とリフォームの内容によって異なります。
【子育て世帯または若者夫婦世帯】
既存住宅を購入しリフォームを行う場合
| 60万円/戸
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長期優良住宅の認定(増築・改築)を受ける場合
| 45万円/戸
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上記以外のリフォームを行う場合
| 30万円/戸
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【その他の世帯】
長期優良住宅の認定(増築・改築)を受ける場合
| 30万円/戸
|
上記以外のリフォームを行う場合
| 20万円/戸
|
適用条件
リフォームをする場合の適用条件は、以下の通りです。
- 開口部の断熱改修
- 外壁、屋根・天井又は床の断熱改修
- エコ住宅設備の設置
- 子育て対応改修
- 防災性向上改修
- バリアフリー改修
- 空気清浄機能・換気機能付きエアコンの設置
- リフォーム瑕疵保険等への加入
上記8つの工事等が対象となっていますが、4~8に関しては、1~3のいずれかの工事と同時に行う場合のみ補助対象となることに注意が必要です。詳しい適用条件については、下記の参考ページをご確認ください。
子育てエコホーム支援事業の申請方法
子育てエコホーム支援事業の申請手続きなどは、個人ではなく事前に事業者登録をした建築事業者や販売事業者、工事施工業者が行います。ここでは申請に関して個人が行うことを解説します。
1.エコホーム支援事業者に問い合わせる
子育てエコホーム支援事業の申請手続きは、個人ではできません。
まずは子育てエコホーム支援事業の公式サイトから子育てエコホーム支援事業者を検索をし、ハウスメーカーや工務店をピックアップしましょう。その上で各メーカーや工務店へ問い合わせ、相談することをおすすめします。
2.工事請負契約書(不動産売買契約)を締結する
メーカーや工務店が決まったら、事業者と工事請負契約書もしくは不動産売買契約を締結します。子育てエコホーム支援事業では、建築着工もしくは工事着手の前に工事請負契約を締結、あるいは不動産売買契約を締結した住宅が対象です。
締結時には、必ず契約内容が子育てエコホーム支援事業の適用対象となっていることを確認しましょう。
3.共同事業実施規約を締結する
子育てエコホーム支援事業では、建築主、購入者、工事発注者のいずれかと事業者が共同実施規約を結ぶ必要があります。共同実施規約は、「必要な証明書類を提出し協力して補助事業を実施すること」や「補助金の受取方法」などをあらかじめ取り決めておくためのものです。
4.補助金を受け取る
竣工・工事の引き渡しを終え、事業者による完了報告・実績報告が終わると、補助金額が確定します。金額の確定後、交付あるいは振込が行われます。
補助金の還元方法は「(1)補助事業に係る契約代金(最終支払に限る)に充当する方法」もしくは「(2)現金払い」のいずれかで、原則は(1)となっています。還元方法については、事前に事業者と取り決めておきましょう。
子育てエコホーム支援事業の申請期間
子育てエコホーム支援事業の申請期間には、「交付申請期間」と「対象工事の着手期間」があります。なお、契約日の期間は問いません。
交付申請期間
子育てエコホーム支援事業の申請期間は、2024年4月2日~予算上限に達するまでで、遅くとも2024年12月31日までとされています。予算の上限に達すると2024年内であっても事業終了となるので、早めに申請できるよう事業者と打ち合わせておきましょう。
なお、締切は子育てエコホーム支援事業の公式サイトにて、予算執行状況に合わせて公表されています。
対象工事の着手期間
対象工事の着手期間は、2023年11月2日以降とされています。対象工事とは、注文住宅の新築および新築分譲住宅の購入の場合、基礎工事より後の工程の工事を指し、リフォームにおいては、リフォーム工事そのものを指します。
子育てエコホーム支援事業の申請に関するよくある疑問
子育てエコホーム支援事業の申請についてよくある疑問をまとめましたので、参考にしてみてください。
〈疑問1〉他の補助金と併用できる?
国が行っている他の補助制度との併用はできません。ただし、国費が充当されていない地方公共団体の補助制度は使用可能な場合があるので、事前に併用可能かを確認しておきましょう。
なお、子育てエコホーム支援事業の前身事業である「こどもエコすまい支援事業」(2023年に実施)との重複は認められていません。ただし、こどもエコすまい支援事業で補助を受けていた場合でも、補助対象が重複しないかつ、請負工事契約が別である場合は子育てエコホーム支援事業で補助を受けることができます。
〈疑問2〉申請手続きに費用はかかる?
子育てエコホーム支援事業の事務局が交付申請費用を請求することはありません。しかし、申請に必要な書類の準備等には費用がかかります。また工務店やハウスメーカーに手数料を支払う必要がある場合もあります。
申請にかかる手数料は、工務店やハウスメーカーによって異なりますが、10万~15万円前後が相場となっています。契約を結ぶ前に、事業者と手数料についても確認しておきましょう。
〈疑問3〉2023年10月に着工している場合は対象外となる?
新築住宅で2023年10月に着工している場合でも、基礎工事より後の工程の着工が2023年11月2日以降であれば、補助の対象に含まれます。2023年11月1日時点で着手可能な工事と、着手済みで補助対象とならない工事は以下の通りです。
2023年11月1日時点で着手可能な工事
| 杭、基礎、地下室、基礎断熱、足場等の仮設、給排水、電気、土台敷、外構
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2023年11月1日時点で着手済の場合で、対象とならない工事
| 地上階の柱、壁、梁、屋根
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子育てエコホーム支援事業のことはハウスメーカーに相談しよう
子育てエコホーム支援事業は、主に登録事業者であるハウスメーカーなどが申請を行います。大手ハウスメーカーなら、補助制度の知識も豊富な営業マンに相談できるため、安心して申請を進められます。多様な価値観に合わせた住まいを実現するためのメソッドはもちろんのこと、補助制度についても気軽に質問してください。
子育てエコホーム支援事業の制度内容を理解して活用しよう
子育てエコホーム支援事業は「注文住宅を新築する場合」「新築分譲住宅を購入する場合」「リフォームをする場合」の3つに活用できますが、それぞれの補助対象者や適用条件が異なることに注意が必要です。
補助金制度は仕組みが複雑で、わかりにくいと感じることもあるかもしれません。しかし、家づくりのプロであるハウスメーカーに相談することで、家づくりはもちろん、補助金制度の申請も安心して任せることができます。子育てエコホーム支援事業を活用して、素敵な家づくりができるとよいですね。