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地盤改良工事とは?工事の種類や必要となるケース、依頼時の注意点などを解説

家選びネット公式 (ie-erabi.net) 2023-08-07
基礎知識

住宅など重量のある建物を建てる場合、そのままの地盤では強度が足りないことがあります。そのようなとき、地盤に手を加え補強する工事が「地盤改良工事」です。良い家を建てたとしても、建物を支える地盤が弱ければ、揺れたり、傾いたりする恐れがあるため、家を建てる際には建築前に地盤調査を行い、必要に応じて地盤改良工事を実施するのです。今回は、地盤改良工事が必要なケースや工法別の費用目安、依頼時の注意点などをトラブル事例を交えてわかりやすく解説します。


地盤改良工事とは?



地盤改良工事とは、住宅などの建築物を建てる土地の地盤が弱い場合に、土質や地盤を改良し、地盤を補強する工事のことです。地盤の弱い土地では、建物を建てた際に地盤沈下が起きる可能性が高まり、地震が起きた際には家が崩壊しやすくなります。安心して暮らすためには、建物を建てる前に人工的な改良を加えて地盤補強をしておく必要があるのです。ここでは地盤改良が必要なケースを詳しく見てみましょう。


地盤改良工事が必要なケース



地盤改良工事は、すべての建築に対して必要になるわけではありません。家づくりにおいてできるだけコストは抑えたいものですが、地盤改良工事については必要性があると判定されれば避けては通れない道になります。


では、どのような場合に地盤改良工事が必要になるのでしょうか。「必要」と判断されることが多い2つのケースをご紹介します。


<ケース1>地盤調査の結果、軟弱地盤と判断された場合

家を建てる前に行われる地盤改良の前には、建築会社によってまずその土地の強度を図るための「地盤調査」が行われます。その結果、地盤に問題のあることが判明した場合にのみ、地盤改良工事が必要と判断されます。地盤調査では、地耐力(建物を支える強度)、つまり家の重さに耐えられるかどうかが判断基準となります。


<ケース2>土地の歴史的に地盤強化が必要と判断された場合

建物の建築予定地やその周辺が、土地履歴によって地盤強化が必要と判断された場合にも地盤改良工事が必要になります。もともと河川や湖沼などの水辺を埋め立てた土地、過去に地震での液状化があった土地、陥没があった土地などがその対象です。



地盤改良工事の工法は3つ。種類別の特徴一覧



地盤補強工法には、「表層改良工法」「柱状改良工法」「小口径鋼管杭工法」の3つがあります。土地の性質によって工事ができるケースとできないケースがあったり、費用相場が違ったりと、工法によって特徴はさまざまです。

以下の表に、種類別の特徴を一覧でまとめました。どれが自身の家づくりに最適な工法か比較するときの参考にしてください。


メリット
デメリット
1.表層改良工法
  • 比較的リーズナブル(改良深度が浅い場合)
  • 小型重機でも施工可
  • 地中に石やコンクリートがあっても施工可
  • 工期は1〜2日程度
  • 勾配がきつい土地では工事が難しい
  • 地盤改良面よりも地下水位が高い場合は施工できない
2.柱状改良工法
  • 比較的リーズナブルで採用率高め
  • 強固な地盤がなくても施工可
  • 工期は2日〜1週間程度


  • 特定地盤(有機質土)の場合、セメントの固化不良が発生することも
  • 施行後の地盤の原状復帰は難しい
  • 狭小地や高低差のある土地では重機の搬入ができず施工できない可能性も
3.小口径鋼管杭工法
  • 施工後の地盤強度が他に比べて高い
  • 柱状改良より小型の重機で施工可
  • 狭小地・変形地でも対応OK
  • 工期は1〜2日程度
  • 支持層(強固な地盤)が無ければ施工不可
  • 工事中の騒音や振動が大きい
  • 柱状改良工法より工事金額が高額になる傾向がある


1.表層改良工法

表層改良工法は、セメント系固化材を使用して地表面を強くする地盤改良工事です。軟弱な地盤が地表から2m程度までの深さ、硬い地盤が比較的浅い層に見られた場合に用いられています。


軟弱な層を掘削し、新たな土とセメントなどの固化材を混ぜ合わせたものを流し込んで埋め戻し、地盤の強度を高めます。地盤は基本的に深くなればなるほど固くなる性質があるため、表層部分のみを改良する比較的簡易な工法です。


向いている土地

勾配が小さく、地盤改良面よりも地下水位が低い土地の場合は、表層改良工法が向いています。また、狭い土地や正方形や長方形以外の形をした変形地などでも施行が可能です。


注意点

勾配のきつい土地での施工は難しく、地盤改良面よりも地下水位が高い場合には工事ができません。また、施工業者のスキルによって仕上がりの強度が変わってくることもあるため注意が必要です。


費用の目安(40坪の場合)

簡易的な工法である表層改良工法は、地盤改良の中で最も費用を抑えることができます。さまざまな条件によって金額は左右されますが、表層改良の坪単価相場は1〜2万円程度で、40坪の費用相場は50〜100万円程度になるといわれています。


2.柱状改良工法

柱状改良工法は、柱状に地盤を強くする地盤改良工事です。まず地盤に直径60cmほどの円柱状の穴を数カ所開け、強固な地盤まで掘り進めます。次にセメント系の材料と土を流し込み、地中にコンクリートの柱(地盤改良杭)を複数つくり、地盤の強度を上げます。軟弱地盤が地表から2〜8mの深さ、表層改良よりも深い層の場合には、こちらの工法が用いられます。


向いている土地

柱状改良工法は、軟弱地盤で不同沈下(地盤のゆがみなどにより建物が傾く、地中に沈むこと)の可能性がある場合に用いられます。


注意点

有機質土のような特定の地盤では、セメントが固まらない固化不良が発生するケースがあります。また、施工後は地盤の原状復帰が難しく、改良体撤去にはかなりの費用がかかります。将来的に土地を売りたい場合には価格の低下につながる可能性があることや、改良杭が残った場所に新しく別の建物を建てる場合には、工法の再検討が必要になる点に留意しましょう。


費用の目安(40坪の場合)

柱状改良工法は、比較的リーズナブルで住宅の地盤改良工法として多く採用されています。柱状改良の坪単価相場は3〜5万円程度で、40坪の費用相場は80〜150万円程度です。ただし、改良を行う柱の深さと打ち込む本数によって費用が大きく変わります。事前に建築予定地付近で実績の多い施工業者を探し、事前におおまかな費用相場を聞いてみるとよいでしょう。


3.小口径鋼管杭工法

小口径鋼管杭(読み方:しょうこうけいこうかんくい)工法は、地表から10〜30mの深さまで鋼製の管を打ち込む地盤改良工事です。表層改良や柱状改良よりもさらに深い位置に基礎地盤が見られる場合に用いられます。柱状改良との大きな違いは、差し込む材料がコンクリートよりも強固な「鋼製」になるという点で、地盤強度は3つの工法の中で一番高くなります。


向いている土地

表層改良や柱状改良工法では対応できない場合、あるいは狭小な土地で、重機を搬入しにくい場所での工事に向いています。また打ちこんだ鋼管で地中から建物を安定させるため、3階建てなどの重量がある建物にも対応可能です。


注意点

小口径鋼管杭工法では、鋼管を打ち込むように施行するため、支持層(強固な地盤)がなければ施工できません。また、工事中に大きな騒音や振動が発生する可能性が高いため、事前に近隣への配慮が必要になるでしょう。


さらに、圧密沈下(長時間かけて土中の水分が抜け、土の体積が減少して起きる沈下)の大きい土地では、建物は沈下せずに建物の周りの地盤が下がり、杭の抜け上がりが起こる可能性もあります。


費用の目安(40坪の場合)

小口径鋼管杭工法では、他の地盤改良工事に比べて最も地盤改良費用が高くなります。鋼管杭改良の坪単価相場は5〜7万円程度で、40坪の費用相場は100〜200万円程度になるといわれています。比較的、大規模な施設などの建築に使われることが多い工法です。


地盤改良工事のトラブル事例



地盤改良工事では、さまざまなトラブルが生じる可能性もあります。ここでは、実際に考えられるトラブル事例を3つ紹介しますので、トラブルを回避するための参考にしてください。


<事例1>遺跡などの埋設物が見つかる

地盤改良工事の途中で埋葬文化財が出てきてしまった場合、所轄の市区町村に連絡を入れて対応を待つ必要があります。その間は工事を中断せざるを得なくなり、さらに発見された埋蔵物が重要なものであった場合は、施主が埋蔵物の掘削を行わなければいけなくなるケースもあります。


自治体によっては「埋蔵文化財マップ」という発見エリアを示したマップを公開しているので、参考にしてみてはいかがでしょうか。


<事例2>軟弱層の厚さが異なり、しっかり杭を打ち込めていない



軟弱層とは、建物を支えきれずに沈下を起こす可能性がある地盤のことで、具体的には以下のような土地を指します。


  • 埋立地
  • 河川や水田の跡地
  • 土をもって土地を高くする「盛土」や、土を削って土地を低くする「切土」が混在する造成地など


この軟弱層に家を建てると、地震のときに大きく揺れたり、不同沈下が発生したりする恐れがあります。


建物を支えるのに適した十分な固さを持つ「支持地盤」に傾斜がある場合、軟弱層の厚さは異なります。十分な調査をせずに杭を打ち込んだ場合、片方しか支持層に届いていないというような不良工事になりかねません。その結果、支持層に届いていない方の地盤や軟弱層の厚い方に建物が沈んでいくというようなトラブルが発生するケースがあります。


<事例3>農耕地ではセメントが十分固まらない

農耕地のように腐葉土がある土地は、セメントが十分に固まりません。一般的な地盤改良工事では、セメントを流し込み地盤を強固にして支持力(地盤が支えられる力の大きさ)を高めるケースもありますが、農耕地においてはセメントとの相性が悪く、トラブルの原因になります。土地の状態に合わせた地盤改良の工法を検討するようにしましょう。


地盤改良工事を施工会社に依頼するときの注意点


地盤改良工事で失敗しないためには、信頼できる施工会社に依頼することが大切です。実際に依頼する場合には、工事内容を必ず説明してもらい、依頼する側もしっかりと内容を把握しましょう。工事後には業者から地盤改良工事報告書を発行してもらい、実際に行った地盤改良工事の内容についてチェックしておくことが大切です。また、地盤改良工事によって出る残土をどう処理するか、扱いや費用などについて明確にしておきましょう。


ハウスメーカーに相談する前に地盤改良について理解しておこう



建物を建てる際に必要な可能性のある地盤改良工事。基本的には「表層改良工法」「柱状改良工法」「小口径鋼管杭工法」の3つの工法に分かれていますが、ハウスメーカーでは独自の方法で改良を行うケースも見られ、かかる費用もさまざまです。


気になるハウスメーカーがあれば、地盤調査の方法についても営業担当者に確認してみると、内容や費用相場を教えてもらえるでしょう。


地盤改良の予算を考慮した家づくりを



今回は地盤改良工事について、概要や必要なケース、工法の種類、工事によるトラブル事例などをご紹介しました。地盤改良工事は、地盤が弱い土地でも家を建てられるよう地盤を改良するものです。工事の必要性については、事前の地盤調査とあわせて過去の土地履歴などから総合的に判断することが大切です。また、実際に家を建てる際に「予算が足りなかった」とならないよう、あらかじめ地盤改良が発生する可能性があることを認識しておきましょう。地盤改良工事を含めた予算を組み、安心して生活できる家づくりが進められると良いですね

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