用途地域の一つである第二種住居地域は、主に住居の環境を守るための地域のことです。住宅や土地の購入を決める際は、用途地域の内容を確認し、建てられる建物の内容や具体的な制限を把握することが大切です。
今回は、第二種住居地域の概要や家を建てる場合の制限、選ぶメリット・デメリットを紹介します。第一種住居地域との違いや第二種住居地域の土地を選ぶ際の注意点も解説しますので、家づくりの参考にしてください。
第二種住居地域とは、主に住環境を優先する地域
第二種住居地域とは、「用途地域」の一つであり、主に住居の環境を保護するための地域を指します。地域全体でみると住宅の割合が高いものの、住宅以外の建築が認められていることから、学校・商業施設・工場などが混在する地域でもあります。
なお用途地域とは、快適な住環境や街の利便性を図る目的で、行政によって土地の使い方や建物の建て方に制限がかけられている地域のこと。大きく「住居系」「商業系」「工業系」の3つの種類に区分され、さらに13種類の地域に分けられています。
第二種住居地域は住居系の種類に属し、「建築できる建物」と「できない建物」は以下のように定められています。
〇 建築できる建物
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住宅 ・戸建て、マンション、下宿などの住宅 ・店舗や事務所などとの兼用住宅(床面積などに規制あり)
公共施設や病院、学校 ・交番や警察署、税務署、郵便局、消防署、保健所、図書館、自動車教習所 ・幼稚園や保育園、小学校、中学校、高等学校、高等専門学校、大学
・病院や診療所、身体障害者福祉ホーム、老人ホーム、老人福祉センター ・神社や寺院、教会
建物の2階以下で床面積の合計が10,000㎡以下の店舗や飲食店、事務所 ・ホテルや旅館 ・ボウリング場やスケート場、ゴルフ練習場、プール、カラオケボックス、パチンコ屋、マージャン屋
面積が50㎡以下で危険性や環境を悪化させる恐れが非常に少ない工場 ・ガソリンスタンドなどの危険物の処理や貯蔵量が非常に少ない施設 ・2階以下で床面積の合計が300㎡以下の自動車車庫 ・営業用ではない倉庫 など
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✖ 建築できない建物
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・映画館や劇場 ・床面積の合計が10,000㎡を超える店舗や飲食店、事務所 ・作業場の床面積が50㎡以上の工場 ・危険物の処理や貯蔵量が多い施設 ・営業用倉庫 ・キャバクラやキャバレー、ナイトクラブ など
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第二種住居地域と他の用途地域の違い
13種類の用途地域の中には、「第二種居住地域」と名称が似ている地域があります。第二種居住地域と似た名称をもつ「第一種住居地域」「第二種低層住居専用地域」について、それぞれ解説します。
第一種住居地域とは?第二種住居地域との違い
第一種住居地域は、住居環境を保護する地域です。第二種住居地域とほぼ同じ種類の建物が建築できますが、大きな違いもあります。それは、第一種住居地域ではカラオケボックスやパチンコ屋などの遊戯施設が建築できないことです。
また、第一種住居地域は、第二種住居地域に比べて建築できる店舗や事務所、工場の規模が小さくなります。より住宅に特化したエリアと言えます。
第二種低層住居専用地域とは?第二種住居地域との違い
第二種低層住居専用地域は、住居の環境や景観を維持することを目的とした地域です。主に戸建てや低層マンションなどの低層住居のみ建築できます。
第二種住居地域と比較すると、第二種低層住居専用地域の方が建築できる建物の種類や規模が限定的です。小中学校や老人ホーム、150㎡までの一部店舗は建築できます。しかし、低層住居専用地域は建物の高さ限度が10mまたは12m以下と決まっているため、大学や病院、大規模店舗、遊戯施設は建築できません。
第二種住居地域と比べると、主に低層住居に特化しているエリアのため、静かで採光などにも配慮された住みやすい環境であると言えます。一方で、大型商業施設や最寄り駅などが近くにないことで、買い物や移動は不便に感じるかもしれません。
第二種住居地域に家を建てる場合の制限
用途地域ごとに建物の建て方に制限がありますが、第二種住居地域は、他の住居系用途地域に比べると規制が緩やかだと言われています。ここからは、第二種住居地域に設けられている「容積率」「建ぺい率」「高さ制限」の3つに対する制限を見ていきましょう。
容積率
容積率とは、敷地面積に対する延床面積(各階の床面積の合計)の割合のこと。
「延床面積 ÷ 敷地面積 × 100 = 容積率(%)」で求めることができます。
- 第二種住居地域の容積率は、100%・150%・200%・300%・400%・500%のいずれかに指定されている
- 同じ用途地域でも、場所によって指定の容積率は異なる
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なお、容積率は指定された割合がそのまま適用されるわけではありません。土地に面する前面道路の幅が狭い場合が12m未満の場合は指定された容積率よりも厳しく制限されます。これを「前面道路幅員による容積率制限」と言います。
<前面道路の幅が12m未満の場合>
- 前面道路の幅員が12m未満の容積率の算出方法は、接する道路の幅員に特定の係数をかける(建築基準法第52条第2項)
- 第二種住居地域は係数が40%と定められているため、「道路の幅員 × 0.4(係数) = 容積率」で求める
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敷地の前面道路幅が12m未満の場合は、「指定の容積率」と「道路の幅員に係数0.4を掛けた容積率」を比較し、小さいほうの容積率が適応となります。
容積率を調べる際は、敷地の前面道路幅の有無も確認し適切な容積率を把握しましょう。
建ぺい率

建ぺい率とは、敷地面積に対する建築面積の割合のこと。
「建築面積 ÷ 敷地面積 × 100 = 建ぺい率(%)で求めることができます。
通風や採光の確保、防火の観点などから決められており、土地に対してどのくらいの面積の建物が建築できるかを意味しています。
- 第二種住居地域の建ぺい率は、50%・60%・80%
- 容積率と同様に、同じ用途地域でも場所によって割合が異なる
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なお、建ぺい率は土地の形状や場所の条件によって制限が変わることがあります。自治体によって規定が異なるため、土地を管理する不動産会社などに詳細を確認することが大切です。
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高さ制限
第二種住居地域は、低層住居専用地域に定められている「絶対高さ制限」(高さ限度)が定められていないため「高層マンション」や「3階建て」などが建築可能です。一方で、第二種住居地域には、守るべき3つの高さ制限として「日影規制」「道路斜線制限」「隣地斜線制限」があります。
<日影規制>
日影規制とは、冬至の日を基準に、一定時間以上の日影が生じないように建物の高さを制限する規制のこと。第二種住居地域では、10m以上の建物に適用されます。規制される日影時間などは以下の通りです。
測定水平面
| 規制される日影時間
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地面から4m
| 敷地境界線から5m~10mの範囲:4時間 敷地境界線から10mを超えた範囲:2.5時間
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地面から6.5m
| 敷地境界線から5m~10mの範囲:5時間 敷地境界線から10mを超えた範囲:3時間
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測定水平面とは、日影時間を測る高さのことで、2階の窓中央を想定した4m・3階の窓中央を想定した6.5mのいずれかで測定されます。
なお、日影規制は、地域によって環境や土地の利用事情が異なるため自治体の条例で指定するケースもあります。詳しい内容は、自治体に問い合わせましょう。
<道路斜線制限>
道路斜線制限とは、道路の日照や採光・通風の確保のための制限です。接している道路幅に基づいて、接する道路の反対側の道路境界線から上空に向かって、一定の勾配で引いた斜線より下に建物を建てる必要があります。
第二種住居地域の場合、勾配は敷地と接する道路の反対側の境界線から「1.25」と定められています。指定の容積率に応じた道路の反対側の道路境界線からの適用距離は、以下の通りになります。
容積率
| 適用距離
| 傾斜勾配
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200%以下
| 20m
| 1.25
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200%超~300%
| 25m
| 1.25
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300%超~400%
| 30m
| 1.25
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400%
| 35m
| 1.25
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<隣地斜線制限>
隣地斜線制限とは、隣人の日照や採光・通風を確保するために決められた制限のこと。敷地の境界である「隣地境界線」を起点として「高さ」と「傾斜の勾配」が定められています。
第二種住居地域の場合、隣接側に面した建物の高さが20mを超える部分に適応され、規定の勾配は「1.25」です。道路斜線制限同様、地面と斜線の範囲内の高さでしか建物を建築できません。
第二種住居地域を選ぶメリット・デメリット
ここからは、第二種住居地域を選ぶメリット・デメリットをご紹介します。
第二種住居地域のメリット
第二種住居地域の最大のメリットは、生活に必要な施設がほとんど建築できるエリアのため、生活における利便性が高いことです。さまざまな公共施設や学校、病院はもちろん、商業施設も多く立ち並び、快適な日常生活がおくれるでしょう。
さらに、幹線道路沿いや郊外の駅前が指定地域となることが多いため、通勤・通学にも便利です。夜間でも街が明るく、防犯面も安心でしょう。
建物においては、高さ制限が厳しくないため3階立てなど高さを生かした建設が可能です。
第二種住居地域のデメリット
第二種住居地域のデメリットとして、幹線道路沿いに位置することから、車の通りが多く「騒音」「排気ガス」が気になる場合があることが挙げられます。
幹線道路周辺という立地から、高層マンションの場合は風圧の強さと排気ガスの影響で「ベランダに洗濯物が干せない」という人もいるようです。
また、商業施設や遊戯施設が立ち並ぶエリアのため、人の出入りが多く落ち着かないと感じることもあります。閑静な住宅街を希望する場合には「店舗の近くは避ける」など、土地購入の前に立地状況はよく確認することが大切です。
第二種住居地域の土地を選ぶ際の注意点
最後に、第二種住居地域の土地を選ぶ際の注意点をご紹介します。建物の構造や設計に関わることなので、事前にしっかり確認しましょう。
防火地域・準防火地域の確認
土地の購入を検討する際は、用途地域だけでなく防火地域・準防火地域の確認も大切です。
防火地域・準防火地域とは、都市計画法で定められた都市を火災から守るために配慮すべき地域のことを指します。特に住宅が密集する市街地は「火災の被害が起きやすい地域」さらに「火災を防ぐために予防すべき地域」として、防火地域・準防火地域と定められています。
第二種住居地域は建物が密集するエリアであるため、「準防火地域」に指定されていることが多いです。準防火地域では、建物の規模に応じて、準耐火建築物と呼ばれる防火措置を施した建物を建築し、防火性や耐火性を高めて延焼の抑制を図る必要があります。
準耐火建築物は「壁や柱などの主要部分の構造材を準耐火性能の満たすものにする」「延焼の恐れのある窓や扉を防火戸にする」など特別な対応が求められます。そのため、建築コストも通常より割高になることを覚えておきましょう。
近隣が空き地の場合は設計に工夫が必要
第二種住居地域は、北側敷地の日差しを確保するための制限がありません。つまり、建物の高さを規制する「北側斜線制限」や、建物高さの上限を示す「絶対高さの制限」がないエリアです。
そのため、近隣に空き地がある場合は、将来高い建物が立ち、日照や採光に影響を及ぼすことも考えられます。住宅の設計時は、天窓や吹き抜けを取り入れたり、二階リビングを採用したりするなど、採光を取り込みやすい工夫を施しておくと安心でしょう。
第二種住居地域の特徴を理解して希望のエリアか見極めよう
第二種住居地域は、戸建てやマンションなどの住居を優先する一方で、学校や病院、商業施設、工場などが立ち並ぶエリアです。駅や幹線道路も近いため、利便性が高く、暮らしやすい特徴があります。一方で、騒音や人の出入りが多く気になる方もいるかもしれません。
土地を購入する際は、実際に現地に出向き、街の雰囲気など立地状況を確認することが大切です。悩んだときは、土地に合わせた家づくりをサポートしてくれる大手ハウスメーカーといった家づくりのプロに相談するのもおすすめです。自分の理想の暮らしができるエリアか見極め、家づくりを進めていきましょう。