準工業地域とは?家を建てるのはアリ?制限や後悔しないための注意点を解説
新築一軒家を検討し始めると、「希望のエリアで見つけた手頃な土地が『準工業地域』だった」という場面に直面することがあります。
住宅専用の地域ではないと聞くと、「工場の騒音がひどいのでは?」「将来、隣に大きなビルが建って日当たりが悪くなるかも」と不安を感じるかもしれません。しかし、実は利便性とコストパフォーマンスを両立したい共働き世帯に選ばれている、穴場のエリアでもあります。本記事では、準工業地域特有の建築制限や住み心地のリアルを徹底解説します。
準工業地域とは?「住宅・商業・工場」が共存する自由度の高いエリア
「準工業地域」と聞くと、煙突が並ぶ工場地帯をイメージするかもしれませんが、実際には「住宅・お店・中小の工場」が共存しているエリアです。
都市計画法というルールによって、街は大きく分けて「住居系」「商業系」「工業系」という3つのグループに分類されています。準工業地域は、その名の通り「工業系」に属していますが、工業系グループの中で唯一、家を建てるのに適したエリアと言われています。
参考:e-Gov法令検索「都市計画法 第九条」
用途地域の中での位置づけ
私たちが住む街は、効率よく快適に暮らせるよう、場所ごとに建ててよい建物の種類が決められています。これを「用途地域」と呼びます。
用途地域は全部で13種類ありますが、大きく分けると以下の3グループになります。
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さらに工業系は、どんな工場も住宅も建築可能だが住環境としては厳しい「工業地域」、住宅を建てることは法律で禁止されている「工業専用地域」、そして、「住居・商業・工業」の3つの顔を併せ持っている、非常に自由度が高い「準工業地域」の3つにわかれています。
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準工業地域の特徴
準工業地域の最大のポイントは、危険性の高い工場や、激しい環境汚染の恐れがある工場は建てられないという点です。
古くからある町工場と、新しい戸建て住宅やマンション、コンビニ、大型スーパーなどが混ざり合っているのが典型的な風景です。そのため、住居専用の地域に次いで住宅が多く見られる地域であり、生活の利便性と家づくりのしやすさのバランスが取れたエリアと言えるでしょう。
準工業地域に住宅を建てる3つの大きなメリット
「工場があるエリア」というイメージだけで、準工業地域を選択肢から外してしまうのはもったいないかもしれません。実は、家計にも暮らしにもうれしい3つのメリットがあります。
1. 利便性が抜群!大型商業施設やスーパーが近い
準工業地域は、工場や住宅だけではなく病院や学校、商業施設など、何でも建てられるエリアです。そのため、徒歩圏内にコンビニやスーパーがあるのはもちろん、少し離れれば大型ショッピングモールやホームセンターなどが隣接しているケースが多いのが特徴です。
共働きなどで忙しいご夫婦にとって、週末のまとめ買いや家族でのレジャーが近所で完結するのは、大きな時短メリットになります。
2. 土地価格が抑えられ、建物に予算を回せる
同じ駅からの距離でも、住居専用地域と比較すると「準工業地域」は土地の価格が安く設定されていることが多いです。土地代を抑えられる分、広い土地を手に入れることもできるでしょう。
また、「キッチンのグレードを上げる」「庭やバルコニーを少し広くする」「太陽光パネルや高断熱材を導入する」といったこだわりに予算を振り分けることが可能になります。「エリアは譲れないけれど、予算内で注文住宅を建てたい」という方にとって、賢い選択肢となります。
3. 建築の自由度が高い
準工業地域は、住居専用地域に比べて高さや日当たりに関する制限が大幅に緩和されているため、設計の自由度が広がります。
多くの住居専用地域にある「絶対高さ制限(10mや12mまで)」がない自治体が多いため、天井の高いリビングやゆとりのある3階建てを無理なく計画できます。
また、住居系地域では厳しく制限される「北側斜線制限」がないのも大きな特徴です。建物の北側を斜めに削る必要がないため、家の端まで天井の高さをしっかり確保でき、開放感のある吹き抜けや大きな窓、広々とした3階の個室など、こだわりの間取りを妥協せずに叶えられるでしょう。
【要確認】住んでから後悔しないための注意点と対策
メリットが多い準工業地域ですが、多種多様な建物が建てられるからこそ、住居専用地域にはない注意点があります。購入前に知っておくべき4つのポイントを確認しましょう。
1. 隣に何が建つかわからない「環境変化」のリスク
準工業地域は、パチンコ店などの施設や一定規模までの工場も建築できます。今は空き地や駐車場であっても、数年後ににぎやかな施設や大きなマンションが建つ可能性があります。
検討中の土地の隣接地に、将来建物を建てる余地があるか、またその土地の持ち主が誰かを不動産会社に確認しておきましょう。
2. 工場の騒音・振動・トラックの通行量
準工業地域には多種多様な建物が混在するため、工場の稼働音や資材を運ぶトラックによる振動・騒音が発生しやすい環境にあります。特に大型車が頻繁に通る道路沿いでは、音だけでなく、微細な「振動」が気になるケースも少なくありません。
住んでみてから後悔しないためには、事前に周辺に工場があるかなど、現地確認し、許容できる範囲かどうかを見極めることが大切です。また、音や振動が気になる場合は、設計段階で「寝室を道路から遠ざける」「防音性能の高いサッシを選ぶ」など工夫すると、室内を静かに保つことができるでしょう。
3. 日当たりが保証されにくい
準工業地域は、住居専用地域に比べると「日影規制」がゆるく設定されています。そのため、現時点では日当たりが良くても、将来的に南側の土地に高い建物が建ち、日当たりが大きく変わってしまうリスクがあります。
もちろん、工業系地域の中では日当たりが確保されている地域ではありますが、住居専用地域ほどの保証はありません。現状の明るさだけで判断せず、隣地に最大の高さの建物が建った場合のシミュレーションをハウスメーカーに依頼するなど、慎重に見極めることが大切です。
4. 土壌汚染の可能性と調査費用
かつて工場として使われていた土地の場合、有害な化学物質による土壌汚染が残っているリスクがあります。土地に土壌汚染がないかは、見た目では分からず、健康な生活に影響を及ぼす場合があるほか、浄化のための多額の費用が発生する場合もあります。
そういった被害を避けるためにも、土地の地歴調査(過去にどんな建物が建っていたか)を必ず行いましょう。汚染が疑われる場合は土壌汚染調査を検討し、その費用負担を誰がするのか、契約前に明確にしておくことが大切です。
準工業地域でチェックすべき建築制限(斜線・建ぺい率)
準工業地域は家を建てやすいといわれる理由は、住居専用地域に比べて建築制限が緩やかだからです。同じ広さの土地でも、より広く、より高い家を建てられる可能性があります。
建ぺい率・容積率:土地いっぱいに大きな家が建てられる?
土地に対してどのくらいの広さ・規模の建物が建てられるかを示すのが「建ぺい率」と「容積率」です。
建ぺい率は、土地を真上から見たときの建物面積。準工業地域の建ぺい率は50%・60%・80%の3段階で設定されており、上限値が用途地域の中で最も高い数値となっています。庭よりも部屋の広さを優先した設計がしやすくなります。
また、容積率は、土地面積に対する建物の延床面積の割合で、準工業地域では100%・150%・200%・300%・400%・500%の6段階となっています。準工業地域はこれらの数値が住居系地域より高く設定されていることが多いため、限られた敷地面積でもゆったりとした居住空間を確保できるのが大きな魅力です。
道路斜線・日影規制:3階建てを建てる際の注意点
準工業地域は、住居専用地域に比べて「高さ」に関する制限が大幅に緩和されているのが大きな特徴です。
第一種低層住居専用地域のように、建物の高さは10m(または12m)までという厳しい制限がない自治体が多いため、天井の高いリビングやゆとりのある3階建てを無理なく計画できます。ただし、前面道路の幅に応じて建物の形状が制限される「道路斜線制限」は適用されるため、設計士との事前の打ち合わせが大切です。
また、隣地に落とす影を制限する日影規制も住居系地域に比べるとゆるく設定されています。そのため、敷地の境界線ギリギリまで建物を寄せて配置するなど、限られた土地を最大限に活かした設計が可能です。
【関連記事】日照権とは?トラブル事例や日当たりの良い家を建てる工夫
固定資産税:住居系地域と比べて違いはある?
「準工業地域だとの税金が高くなるのでは?」と心配される方もいますが、固定資産税の計算方法(税率)は、どの用途地域であっても変わりません。土地の評価額(路線価)は場所ごとに決まるため、用途地域そのものよりも、その土地が「都会にあるか地方にあるか」「駅から近いか」といった条件で左右されます。
ただし、準工業地域は住居専用地域に比べて土地の価格が比較的抑えられているケースが多いため、同じ広さの土地なら、住居系地域よりも毎年の固定資産税を安く抑えられる傾向があります。住宅ローンの返済に加え、維持費を少しでも抑えたい方にとって大きなメリットといえるでしょう。
「準工業地域」の物件を見学する際のチェックリスト
準工業地域で家を建てるなら、現地でしかわからない情報をいかに集めるかが後悔しないポイントです。見学時には以下の点を必ず確認しましょう。
平日の「昼間」と、周辺の「夜」の雰囲気を両方見る
準工業地域は、時間帯によって街の表情がガラリと変わるため、異なるタイミングで何度も現地を訪れることが大切です。平日の昼間であれば、工場が稼働しているときの音や振動、資材を運ぶトラックの走行ルートを確認でき、子どもの通学路に大型車が頻繁に通らないかといった安全面もチェックできます。
一方で、工場や会社が閉まったあとの夜間は、昼間の賑やかさが一転して人通りが少なくなることも多いため、街灯が少なくて暗すぎないか、治安面で不安がないかを確認するなど、その街が持つ「両面の顔」をしっかり知ったうえで納得感のある判断をしましょう。
通学路の「歩道の幅」と「ガードレールの有無」を確認する
生活利便性が高い一方で、大型車が通りやすいのが準工業地域の特徴です。特に子どもがいる世帯は、自宅から小学校までの通学路を実際に歩いてみてください。
「歩道は十分な広さがあるか」「ガードレールで守られているか」「信号のない交差点の見通しは良いか」など、トラックの往来が多いエリアだからこそ、大人の目線で安全性を確かめることが大切です。
周辺の「用途地域」の境界線を知る
検討している土地が「準工業地域」であっても、道路一本挟んだ向かい側が「工業地域」や「商業地域」であるケースがあります。
もし隣接地がより制限のゆるい「工業地域」だった場合、将来的に自宅のすぐそばに大きな工場が建つリスクが高いです。自治体の都市計画図などを活用し、自分の土地の周辺がどのエリアに属しているかも把握しておきましょう。
準工業地域は「利便性とコスパ」を重視する世帯に最適
準工業地域は、一見すると「工場がある場所」という印象を持たれがちですが、実際には住居専用地域にはない多くの魅力が詰まっています。
このエリアが最も向いているのは、暮らしの利便性を最優先しながら、限られた予算で理想の住まいを叶えたいと考える世帯です。駅から近く、買い物にも困らない立地で、土地代を抑えつつ設計の自由度を活かしたこだわりの家づくりができるのが大きな強みです。
もちろん、将来的な環境の変化や、周辺の騒音・振動といったリスクがありますが、平日の昼や夜の状況を自分たちの目でしっかりと確認し、設計段階で防音や配置の工夫を取り入れれば十分に解消することができるでしょう。
準工業地域の制限を満たした理想の家づくりを始めよう
今回は、準工業地域の特徴や制限、住み心地に関わるメリット・デメリットを解説しました。準工業地域は、高さ制限や日影規制が緩やかで設計の自由度が高い一方、騒音や将来の環境変化といった注意点があります。しかし、それらを事前に把握してから納得して選ぶことができれば、予算内で理想の間取りを叶えられる賢い選択肢になります。
大手ハウスメーカーでは、その土地の制限を最大限に活かした設計プランの提案も可能です。まずは気になる土地の特性をプロと一緒に整理して、準工業地域ならではの魅力を活かした住まいを手に入れましょう。