長期優良住宅とは?条件やメリット、申請時の注意点をわかりやすく解説
長期優良住宅とは何かメリット・デメリットや建築時の条件を知りたい方もいるのではないでしょうか。固定資産税など税金面でのメリットや、入居後のメンテナンスなど気になることもあるかもしれません。今回は、長期優良住宅の特徴と申請時の流れや注意点などを、わかりやすくご紹介します。
長期優良住宅とは「長期優良住宅認定制度」の基準を満たした家のこと
長く安心して暮らせる住まい「長期優良住宅」が、近年増えています。マイホームを検討する際に、長期優良住宅について検討したいと考える方もいるのではないでしょうか。まずは、長期優良住宅の概要をわかりやすくご説明します。
長期優良住宅の概要
長期優良住宅とは、長期にわたり良好な状態で使用するための構造や設備が備わった住宅のこと。国が「良いものを作り、手入れをして長く使う」ストック活用型社会への転換を目指している背景から、長期優良住宅を標準仕様とするハウスメーカーも増えています。
長期優良住宅は「長期優良住宅認定制度」で定められた基準を満たす計画を作成し、申請することで、認定を受けることができます。申請する際には手間や費用がかかりますが、国が推進していることもあり、さまざまな支援制度が整えられています。
参考:国土交通省「長期優良住宅のページ」
長期優良住宅の認定基準
長期優良住宅の認定基準は次の通りです。
- 長期にわたり住宅を使用するための構造や設備を備えていること
- 良好な居住水準を確保するため、一定以上の住宅面積を確保していること
- 地域の居住環境の維持や向上に配慮していること
- 維持保全の期間や方法などが適切であること
認定基準の詳細を見ていきましょう。
認定基準の9項目
長期優良住宅を建てる場合は、以下9項目の条件が定められ、それぞれの判断基準として「等級」や「基準値」などが設定されています。
<1>劣化対策
数世代にわたって居住できる住宅構造であること。
<2>耐震性
大規模な地震が起きた場合でも、建物の損傷を低くおさえられること。
<3>可変性(共同住宅のみ適用)
居住者のライフスタイルの変化に応じ、間取りを容易に変更できること。
<4>維持管理・更新の容易性
内装や配管などの設備において、点検や清掃、補修などの維持管理ができるようになっていること。
<5>高齢者等対策 (共同住宅のみ適用)
バリアフリーに配慮し、スロープの設置などに対応できる廊下などのスペースが確保されていること。
<6>省エネルギー対策
断熱などの省エネルギー性能が確保されていること。
<7>居住環境
地域により定められた地区計画や景観計画等の条例に従い、良好な居住環境の維持や向上に配慮されていること。
<8>住戸面積
1階の床面積が最低でも40㎡以上、且つ一戸建ての場合は75㎡以上、マンションの場合は 55㎡以上であること。なお、地域の実情に応じて、数値が変更となる場合もある。
<9>維持保全計画
建築時に住宅の耐久性を確保するとともに、引き渡し後も定期的な点検や補修等
などを計画的に行うこと。
長期優良住宅マンションはあるが、まだ少ないのが現状
長期優良住宅制度は、一戸建ての新築・リフォームで活用されているケースが多く見られます。マンションなどの共同住宅も、基準を満たせば長期優良住宅として扱われますが、認定には時間やコストがかかることから、「長期優良住宅認定マンション」はまだ少ないのが現状です。
長期優良住宅のメリット。一般住宅との違いは?
長期優良住宅は、一般住宅と比べてどのような違いがあるのでしょうか。長期優良住宅のメリットを、わかりやすく解説します。
《メリット1》固定資産税など税制面での優遇がある
長期優良住宅として認定された場合、一定の条件を満たせば固定資産税や登録免許税、不動産取得税などの優遇措置を受けられます。実際に申請を行う際には、お住まいの自治体で内容を確認するようにしましょう。ここでお伝えする優遇内容は2021年8月20日時点のものです。
- 固定資産税
新築住宅に関して、長期優良住宅は固定資産税の「減額措置の適用期間」が一般住宅に比べて長くなります。新築の長期優良住宅であれば、一戸建ての場合は5年(一般住宅は3年)、マンションの場合は7年(一般住宅は5年)、固定資産税が2分の1に軽減されます。
- 登録免許税
登録免許税とは、土地や建物に所有権を登記する際、国に納める税金のこと。長期優良住宅は、一般住宅に比べ登録免許税の優遇を受けられます。例えば保存登記をする場合の登録免許税は、一般住宅が不動産の価格に対して0.15%かかるところが、長期優良住宅の場合は0.1%に軽減されます。
- 不動産取得税
土地や建物など不動産を取得した場合、不動産取得税がかかります。長期優良住宅の場合、不動産の価格である「課税標準額」の控除額が一般住宅よりも大きいため、不動産取得税を安く抑えることができます。一般住宅の場合の控除額は1,200万円ですが、長期優良住宅の場合は1,300万円です。
《メリット2》住宅ローン控除額の最大額が増える
長期優良住宅を建てる際に住宅ローンを利用する場合は、住宅ローン控除の控除額上限が増えることもメリットです。住宅ローン控除とは、所得税等の控除が受けられる制度で、住宅ローンを利用して住宅を新築・中古購入、リフォームする場合に利用できます。控除期間や具体的な内容については下記資料を参考にしてください。
参考:国税庁「No.1213 認定住宅の新築等をした場合(住宅借入金等特別控除)」
《メリット3》「フラット35」の金利優遇が受けられる
住宅ローンの一つである「フラット35」の金利優遇を受けられる点もメリットの一つです。「フラット35」とは、民間金融機関と住宅金融支援機構が提携して提供する、全期間固定金利型住宅ローンのこと。資金受取時に返済終了までの借入金利と返済額が確定するため、返済計画が立てやすいという特徴があります。
長期優良住宅の場合、一般的な住宅で適用となるプランに比べ、金利を10年間、年0.25%引き下げることができる「フラット35S」が利用可能です。
《メリット4》地震保険の割引が受けられる
長期優良住宅の認定を受けた住宅は、地震保険の割引を受けることができます。建物の免震・耐震性能に応じた割引を受けることができるため、一般住宅よりも保険料を安くすることが可能です。
《メリット5》補助金が受けられる
「地域密着型住宅グリーン事業」の適用を受けた中規模工務店で木造住宅の長期優良住宅を建てる場合は、補助金を受けられるケースもあります。一住戸あたり、補助対象経費の一割以内・最大110万円を受け取ることが可能です。
リフォームをする場合、建物の性能向上や子育てしやすい環境整備などを支援する「長期優良住宅化リフォーム推進事業」も活用できます。条件を満たせば、補助金が最大250万円支給されることも知っておくとよいでしょう。
参考:国土交通省「令和3年度地域型住宅グリーン化事業 グループ募集の開始~地域の中小工務店等が連携して取り組む良質な木造住宅等の整備を支援します~」
長期優良住宅のデメリット
長期優良住宅にはメリットだけでなく、デメリットもあります。ここからは、建てる前に知っておきたいデメリットをご紹介します。
《デメリット1》メンテナンスや点検を継続的に行う必要がある
長期優良住宅を建てた場合、認定された維持保全計画に従い、入居後も10年ごとに継続的に点検やメンテナンスを行わなければなりません。メンテナンスの内容は、新築やリフォームといった条件により異なります。
メンテナンスを怠ると認定が取り消され、税金や補助金などの返還を求められるケースもあるので注意しましょう。
《デメリット2》申請費用がかかる
長期優良住宅の申請時には費用がかかります。申請費用は、条件や地域により異なりますが、自分で申請する場合は5~6万円ほどになるでしょう。ハウスメーカーなどで申請してもらう場合、代行費用がプラスされるため10万円を超えるケースもあります。
詳しい費用については、事前に施工事業者や所轄行政庁などで確認しておきましょう。
《デメリット3》建築期間が長くなる
長期優良住宅は、一般住宅より建築期間が長くなることもデメリットです。長期優良住宅に認定されるまでには、所管行政庁での審査などが必要となるためです。
一般住宅よりも数週間〜1カ月ほど、建築期間が長くなるケースがあります。審査に必要な書類の作成時間なども含めると、さらに時間が必要となるでしょう。余裕を持った建築スケジュールを建てることが大切です。
《デメリット4》建築費用が割高になる
長期優良住宅の認定を受けるには、耐震性や断熱性などを上げる必要があるため、建築費用が割高になるでしょう。
ただし、建築コストは依頼する施工業者によって変わります。長期優良住宅を標準としている施工業者もありますので、事前に問い合わせや相談をするとよいでしょう。
長期優良住宅の申請時の注意点
ここでは、長期優良住宅を申請する際の注意点をいくつかご紹介します。
着工前に「申請」及び「認定」を受けておく必要がある
長期優良住宅の申請は、住宅の完成後では間に合いません。長期優良住宅の認定を受けるには、建物の着工前に各都道府県や市区にある所管行政庁へ申請書などを提出し、認定を受ける必要があります。そのため、長期優良住宅を検討している方は、早めに施工会社へ相談し、申請手続きが遅れることのないようにしましょう。
手続きは煩雑で手間がかかる。施工会社への依頼も検討
長期優良住宅の申請は煩雑で手間がかかるため、個人で行うにはハードルが高いと感じることもあるでしょう。
そのような場合、ハウスメーカーなど施工業者への依頼を検討するのも方法の一つです。ただし、施工業者に手続きの代行を依頼する場合、別途手数料がかかるのが一般的です。「思ったよりお金がかかった」と後悔することのないよう、早めに相談し予算計画を建てられるとよいでしょう。
長期優良住宅の申請手続き。必要書類や方法
長期優良住宅申請手続きは、所管行政庁で行います。申請に必要な書類は以下の通りです。
- 認定申請書
- 設計内容説明書
- 各種図面・計算書
- その他必要書類(適合証など)
申請手続きの書類は、認定申請書を中心にそのほか必要な書類を適宜添付する形となります。所轄行政庁に「適合証」を添付するケースでは、事前に「登録住宅性能評価機関」で「技術的審査」を行ってもらいます。適合証が交付されたのち、所轄行政庁へ必要書類をそろえて提出しましょう。
参考:国土交通省「長期優良住宅のページ」