A0944bd7 df51 4aec 854a 23e0686ac096

「耐火構造」とは?防火構造との違いや基準について詳しく解説

家選びネット公式 (ie-erabi.net) 2023-11-24
基礎知識
耐火構造は、火災時の被害を最小限に抑えることを目的として法律で定められた建物構造の一つです。よく似た言葉に「防火構造」がありますが、それぞれの定義には違いがあります。今回は耐火構造の基準や特徴、準耐火構造と防火構造との違いについてわかりやすくご紹介します


「耐火構造」「準耐火構造」「防火構造」とは?



建物火災が発生した場合、人命や財産に被害が及ぶことが考えられます。住宅密集地では、延焼によって被害が拡大する恐れもあるでしょう。このような被害を最小限にとどめるために、建築基準法等では「構造」や「建築材料」などについて一定のルールを定めています。

このルールに則った基準でつくられた構造が「耐火構造」です。まずは耐火構造の定義や内容についてお伝えします。


耐火構造とは?

「耐火構造」とは、通常の火災が終了するまでの間、建築物の倒壊及び延焼を防止するために必要な構造のこと。建築基準法第二条七によると、耐火構造の定義は以下の通りです。


壁、柱、床その他の建築物の部分の構造のうち、耐火性能に関して政令で定める技術的基準に適合する鉄筋コンクリート造、れんが造その他の構造で、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたもの
(e-Gov法令検索 建築基準法第二条七


耐火構造にする場合、通常の火災によって一定時間、火熱が加えられたときに「建築物の構造耐力上支障となるような変形、溶融、破壊その他の損傷を生じないこと」が耐火性能として求められます。

どのくらいの時間、熱に耐える必要があるのかは建築物の部分や階数で異なります。以下で、耐火構造の耐火性能に関する基準をまとめました。


建築物の部分
・最上階
・最上階から数えた階数
2以上4以内の階
最上階から数えた階数
5以上9以内の階
最上階から数えた階数
10以上14以内の階
最上階から数えた階数
15以上19以内の階
最上階から数えた階数
20以上
壁(間仕切壁・外壁)
1時間
1.5時間
2時間
2時間
2時間

1時間
1.5時間
2時間
2時間
3時間

1時間
1.5時間
2時間
2時間
2時間
はり
1時間
1.5時間
2時間
2時間
3時間
屋根
30分間
30分間
30分間
30分間
30分間
階段
30分間
30分間
30分間
30分間
30分間

(参考:e-Gov法令検索:建築基準法施行令 第百七条


つまり、耐火構造には、通常の火災が発生してから最長で3時間「火熱」に耐えることが求められます。


準耐火構造とは?

耐火構造が「建物の倒壊や延焼を防止する」構造であるのに対し、準耐火構造は「建物の延焼を抑制する」構造です。そのため準耐火構造の建物は、火災が発生した場合に建物自体が倒壊する可能性があると言えるでしょう。しかし、延焼を抑制することで、人命や財産の被害を最小限に抑えることが期待できます。

準耐火性能に関する技術的基準をまとめました。こちらも耐火構造と同様、通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後それぞれ示した時間は、変形や溶融、破壊その他の損傷を生じないものである必要があります。


建築物の部分
時間
壁(間仕切壁・外壁)
45分間

45分間

45分間
はり
45分間
屋根
30分間
階段
30分間
(参考:e-Gov法令検索:建築基準法施行令 第百七条の二

参考:国土交通省「建築基準法制度概要集」


防火構造とは?



耐火構造と防火構造は、どちらも火災の被害を抑えるために必要な構造ですが、目的や基準が異なります。

「防火構造」は、周辺で発生した火災による影響を建物自体が受けない、つまり周りからの燃え移りを防ぐための構造のことです。

建築基準法施行令第百八条では、以下のように技術的基準が定められています。
一 耐力壁である外壁にあつては、これに建築物の周囲において発生する通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後三十分間構造耐力上支障のある変形、溶融、破壊その他の損傷を生じないものであること。

二 外壁及び軒裏にあつては、これらに建築物の周囲において発生する通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後三十分間当該加熱面以外の面(屋内に面するものに限る。)の温度が可燃物燃焼温度以上に上昇しないものであること。
(参考:e-Gov法令検索:建築基準法施行令 第百八条


つまり、外壁や軒裏が火災による加熱から30分間耐えられるよう一定の防火性能を備える必要があります。また、防火構造の要件を満たすためにも、外壁や軒裏は国土交通大臣認定の仕様、もしくは構造方法である必要があります。


防火・準防火地域と耐火構造の関係性



防火地域・準防火地域とは?

火災の被害を最小限に抑えるためには、まち全体で対策をおこなうことが必要です。そのために都市計画法では、火災の発生や延焼のおそれが高い地域を「防火地域」「準防火地域」として指定。火災の被害を抑えるために、防火地域や準防火地域では、耐火構造や防火構造、防火設備の設置などの規制を設けています

防火地域や準防火地域に建物を建てる場合は、建物の条件によって、耐火構造などの条件を満たした「耐火建築物」や「準耐火建築物」を建てなければなりません。

近年では、法改正や大臣認定の仕様が増え、木造であっても耐火建築物を建築することは可能です。木造の耐火建築は施工が難しいこともあるため、その分野が得意なメーカーに依頼するのがよいでしょう。


防火地域・準防火地域の調べ方

防火地域・準防火地域の調べ方は、不動産会社やハウスメーカーに依頼して調べてもらうほか、自治体のホームページや、自治体の役所に直接出向いて確認する方法があります。事前に住む予定の地域や住みたい地域が、防火地域や準防火地域に指定されているかどうかを調べておくと安心ですね。


耐火構造のメリット・デメリット



耐火構造のメリットは、次の通りです。


  • 火災に強く燃え広がりにくい構造のため、火災の被害を最小限に留め、家族の身の安全を守ることができる
  • 防火地域に指定されることの多い都市部にも住宅を構えることができ、利便性の高い暮らしを送れる
  • 災害時の損害を想定して保険料が決まる火災保険において、保険料が安くなる


一方で、以下のようなデメリットがあります。


  • 国土交通大臣認定の部材を使用するなどの制限がある
  • 建築費用が高くなる
  • 設計の段階でデザインが制限される


こうしたデメリットを克服するためには、耐火構造の建築実績が豊富なハウスメーカーに相談することをおすすめします。

「耐火構造」で安心・安全な家づくりを!