
【防火構造とは?】基礎知識や耐火構造との違いを分かりやすく解説
防火構造は、万が一火災が発生した場合に周囲への延焼を防ぎ、被害を最小限にとどめるための建物構造です。よく似た言葉として「耐火構造」「準耐火構造」がありますが、それらは防火性能の基準によって分類されます。今回は、防火構造の基礎知識や構造ごとの違いをご紹介します。
防火構造とは?
住宅火災は、自分がどんなに気を付けていても、近隣からの延焼や放火など、完全に避けることは難しい場合があります。特に建物が密集しているようなエリアでは、被害が大きくなる可能性も考えられるでしょう。
こういった被害を最小限に抑えるために、建築基準法等では建物構造や建築材料などが定められています。
そのうち、防火性能を表す基準として用いられる構造が以下の3つです。
- 耐火構造
- 準耐火構造
- 防火構造
これらを性能の高い順に並べると、「耐火構造 > 準耐火構造 >防火構造」の順になります。まずは、「防火構造」の定義や特徴などの基礎知識を確認しましょう。
防火構造は、外壁や軒裏に一定の防火性能を持たせること
防火構造とは、建物の防火性能を表す基準の一つで、建築基準法によって定められています。建物の周囲で発生した火災による燃え移りを防ぐために必要な外壁や軒裏の構造のことです。「外壁・軒裏防火構造」と呼ばれることもあります。
建築基準法第二条八では、防火構造を以下のように定義しています。
防火構造 建築物の外壁又は軒裏の構造のうち、防火性能(建築物の周囲において発生する通常の火災による延焼を抑制するために当該外壁又は軒裏に必要とされる性能をいう。)に関して政令で定める技術的基準に適合する鉄網モルタル塗、しつくい塗その他の構造で、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものをいう。 |
(参考:e-Gov法令検索「建築基準法第二条八」)
防火構造では国土交通大臣認定の仕様、もしくは構造方法を用いる必要があります。また、ここで言う「防火性能」は、建築基準法施行令第百八条に詳しく記されています。
一 耐力壁である外壁にあつては、これに建築物の周囲において発生する通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後三十分間構造耐力上支障のある変形、溶融、破壊その他の損傷を生じないものであること。 二 外壁及び軒裏にあつては、これらに建築物の周囲において発生する通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後三十分間当該加熱面以外の面(屋内に面するものに限る。)の温度が可燃物燃焼温度以上に上昇しないものであること。 |
(参考:e-Gov法令検索「建築基準法施行令 第百八条」)
つまり、外壁や軒裏の延焼を抑制するために、一定(30分間)の防火性能を持たせることが要件となります。
防火構造のメリット
防火構造は、耐火構造に比べて「建築コストが安い」「設計の自由度が高い」などのメリットがあります。
壁や柱、床など、建物の主要構造部に高い防火性能が求められる「耐火構造」に比べて、外壁や軒裏など建物の外側に燃えにくい建材を使用する防火構造は、建築費用を抑えることができます。
現在では、防火性能の高い石膏ボードや塗料の開発が進んでいることも費用の抑制につながっているようです。
また、防火構造は木造建築物にも取り入れやすいため、一般的な戸建住宅の多くで用いられています。窓やドアなどの設備への影響もなく、設計の自由度が高いという点も魅力です。
「防火構造」「耐火構造」「準耐火構造」の違い
「防火構造」と同じく、防火性能を持った構造として「耐火構造」「準耐火構造」があります。ここでは、耐火構造と準耐火構造について解説します。
耐火構造は「建物の倒壊や延焼を防止する」構造
「耐火構造」とは、建築基準法において壁や柱、床などの建物の主要部分が一定の耐火性能を備えた構造のことです。
外壁や軒裏に対する防火構造とは違い、建物の内部で火災が起きた場合に、建物自体の倒壊や周囲への延焼を防ぐための構造ということになります。
建築基準法第二条七によると、耐火構造の定義は以下の通りです。
壁、柱、床その他の建築物の部分の構造のうち、耐火性能に関して政令で定める技術的基準に適合する鉄筋コンクリート造、れんが造その他の構造で、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたもの |
(e-Gov法令検索「建築基準法第二条七」)
壁や柱、床などについて、建物の階数に応じて定められた一定時間「火熱」を加えても、建築物の構造耐力上支障となるような変形、溶融、破壊その他の損傷を生じないものである必要があります。くわしい要件は「建築基準法施行令 第百七条」で示されています。
参考:e-Gov法令検索「建築基準法施行令 第百七条」
準耐火構造は「建物の延焼を抑制する」構造
建物の倒壊や延焼を防止する「耐火構造」に対し、建物の延焼を抑制するのが「準耐火構造」です。建築基準法において、建築物の構造部が「準耐火性能」に適合する建築物の構造のことを指します。
耐火構造と同様、通常の火災による火熱が加えられた場合に、壁や柱などの構造部分に応じて一定時間、変形や溶融、破壊その他の損傷を生じないものであることが求められます。
参考:e-Gov法令検索「建築基準法施行令 第百七条の二」
防火・準防火地域と防火構造の関係
防火地域・準防火地域とは?
火災の被害を最小限に抑えるためには、まち全体で対策をおこなうことが大切です。そのために都市計画法では、火災の発生や延焼のおそれが高い地域を「防火地域」「準防火地域」として指定し、耐火構造や防火構造のほか、建築物の外壁にある開口部に防火戸などを設けるなど、防火設備を設ける規制などを定めています。
防火地域や準防火地域に建物を建てる場合は、建物の条件により、耐火構造などの条件を満たした「耐火建築物」や「準耐火建築物」にしなければなりません。
ちなみに、その土地が防火地域であるかを調べる方法はいくつかあります。例えば、不動産会社やハウスメーカーに依頼して確認してもらうほか、自治体の窓口で調べることも可能です。自治体によってはホームページで公開している場合もあるので、検索してみるのもよいでしょう。
防火構造で建てられる建物の要件
防火地域では、多くの場合で耐火建築物や準耐火建築物にしなくてはなりません。ただし、以下の要件を満たす場合は防火構造で建築できます。
防火地域 | 延床面積50㎡以下の平屋建ての付属建築物 |
準防火地域 | 延床面積500㎡以下の地上1階または地上2階の木造建築物 延床面積500㎡以下の3階建ての建築物(一定の技術基準に適合する必要がある) |
防火地域では、延床面積50㎡以下の平屋建ての物置(付属建築物)等は防火構造を選べます。準防火地域についても、延床面積500㎡以下の地上1階または地上2階の木造建築物は外壁・軒裏を防火構造にすることで建てることができます。
防火構造の注意点
耐火構造に比べて規制が緩やかな防火構造ですが、家を建てる場合には注意しなければいけない点もあります。
屋内からの出火には弱い
防火構造は、周囲で起こった火災のもらい火を防ぐための構造のため、屋内からの出火に弱いという点に注意が必要です。建物内部からの火災に対する防火性能を備えた耐火構造に比べて短い時間で延焼、倒壊するリスクがあります。
木造住宅の場合は火災保険の保険料が高くなることも
マイホームを建てる場合、火災保険への加入は欠かせません。しかし、火災保険は保険会社によって補償内容や保険料が異なります。同じ建物を補償の対象にした場合も建物の構造や立地などから保険料に差が出ます。
防火構造の木造住宅の場合、耐火構造を備えた鉄筋コンクリート造のマンションなどに比べ火災のリスクが高いため、保険料は高くなる可能性があることを覚えておきましょう。
防火構造の家づくりは大手ハウスメーカーに相談を
大きな買い物となるマイホームは、万が一のリスクに備えた、火災に強い家を建てたいですよね。大手ハウスメーカーのなかには、安心・安全に暮らせるよう、独自の技術を活かした設計や建築を行っているメーカーもあります。
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家づくりは内装や間取りなどに気を取られてしまうことが多いですが、安全性についても十分納得した上で、家づくりのパートナーを選べるとよいでしょう。ぜひパンフレットや資料を手にとり、自分の理想が叶うハウスメーカーを探してみてください。
家を建てる前には防火構造の特徴をしっかりと理解しよう
今回は、火災に対する備えとして防火構造がどのような特徴を持っているのか、耐火構造との違いや防火・準防火地域との関係性などをご紹介しました。防火構造は「建築コストが安い」「設計の自由度が高い」などのメリットがありますが、屋内からの出火には弱いなどのデメリットも存在します。家を建てる前にしっかりと特徴を理解して、住まいの構造を検討しましょう。