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防火構造とは?外壁・軒裏の基準や耐火構造との違いをわかりやすく解説

家選びネット公式 (ie-erabi.net) 2025-07-11
基礎知識
防火構造は、万が一火災が発生した際に、周囲への延焼を防ぎ、被害を最小限に抑えるための重要な建物構造の一つです。これとよく似た言葉に「耐火構造」や「準耐火構造」がありますが、それぞれ防火性能の基準が異なります。この記事では、防火構造の基礎知識から、これらの構造ごとの違いまでわかりやすくご紹介します。


防火構造とは?火災から家を守る基本を知ろう



いつ発生するかわからない住宅火災の被害を最小限に抑え、安全なまちづくりを進めるため、建築基準法では建物構造や建築材料にさまざまな基準を設けています。その中で、まずは火災への備えとして最も基本的な基準の一つ「防火構造」の定義や特徴についてご紹介します。


防火構造が求められる箇所:外壁や軒裏

防火構造とは、建物の防火性能を示す基準の一つで、建築基準法によって厳しく定められています。具体的には、建物の周囲で発生した火災からの燃え移りを防ぐために、外壁や軒裏に一定の防火性能を持たせることです。そのため、「外壁・軒裏防火構造」とも呼ばれます。


建築基準法第二条八では、防火構造を以下のように定義しています。

防火構造 建築物の外壁又は軒裏の構造のうち、防火性能(建築物の周囲において発生する通常の火災による延焼を抑制するために当該外壁又は軒裏に必要とされる性能をいう。)に関して政令で定める技術的基準に適合する鉄網モルタル塗、しつくい塗その他の構造で、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものをいう。


防火構造として認められるには、国土交通大臣が定めた構造方法や大臣認定仕様、告示仕様のいずれかを用いる必要があります。


参考:e-Gov法令検索「建築基準法」

参考:国土交通省「○防火構造の構造方法を定める件」


防火性能を支える2つの基準:非損傷性と遮熱性

防火構造における「防火性能」は、屋外からの火災に対し、外壁や軒裏が30分間その性能を維持し続けることが求められます。これは建築基準法施行令第百八条に詳しく規定されており、主に以下の2つの要素から成り立っています。


  • 非損傷性:火にさらされた際に、構造耐力上支障が出るような変形や損傷が生じないこと
  • 遮熱性:加熱されていない屋内側の温度が、可燃物が燃え出す温度以上に上昇しないこと


この2つの性能によって、もらい火や隣家からの延焼など、外部からの火災が建物内部へ燃え広がるのを抑制します。特に、火災が発生しやすい市街地や住宅が密集する地域において、被害の拡大を防ぐ上で非常に重要な役割を果たすでしょう。


参考:e-Gov法令検索「建築基準法施行令」


防火構造のメリット



防火構造には、耐火構造と比べて、家を建てる上でうれしいメリットがいくつかあります。主なメリットを3つ見ていきましょう。


建築コストを抑えられる

防火構造は、壁や柱、床といった建物の主要構造部全体に高い防火性能を求める耐火構造に比べて、外壁や軒裏など建物の外側に燃えにくい建材を使用します。この違いにより、耐火構造よりも建築費用を抑えることができます。最近では、防火性能の高い石膏ボードや塗料などの開発が進んでおり、さらに費用の抑制につながっています。


設計の自由度が高い

建物の構造体に大きな制限を加えないため、設計の自由度が高いのも防火構造の魅力です。窓やドアなどの開口部や設備の配置に制約が少なく、理想の間取りやデザインを比較的自由に実現できるため、外観や内部のレイアウトにこだわりたい方にとって大きなメリットとなるでしょう。


木造建築物にも取り入れやすい

防火構造は木造建築物にも取り入れやすいという特徴があります。木造ならではの温もりやデザイン性を活かしつつ、防火性能を確保できるため、一般的な戸建住宅の多くで採用されています。



防火構造・耐火構造・準耐火構造の違い



防火構造と同じく、火災に対する性能を持った構造として「耐火構造」「準耐火構造」があります。これらは混同されがちですが、それぞれ目的や求められる性能が異なり、「耐火構造 > 準耐火構造 >防火構造」の順で防火性能が高くなっています。

それぞれの構造の違いを分かりやすくまとめた【比較表】はこちらです。
構造の種類主な目的対象となる部位火災に耐える時間(目安)
耐火構造
建物の倒壊防止・長時間延焼防止

主要構造部
(柱、梁、床、壁、屋根など)  

1時間~3時間以上
準耐火構造   建物の延焼抑制主要構造部45分~1時間以上
防火構造屋外からの延焼防止  外壁、軒裏30分以上


次に、それぞれの構造が持つ意味と、火災に対する役割の違いを詳しく解説します。


耐火構造とは?|長時間にわたり建物の倒壊や延焼を防ぐ

耐火構造とは、建築基準法で定められた、建物の主要構造部(壁、柱、床など)が高い耐火性能を持つ構造です。外部からの延焼を防ぐ防火構造とは異なり、建物内部で火災が発生した場合でも、長時間にわたって建物の倒壊を防ぎ、周囲への延焼を抑制することを目的としています。これにより、高層ビルや大規模な建物などでは、利用者が安全に避難する時間を確保し、消防活動を支援する重要な役割を果たします。

具体的には、建物の階数や用途に応じ、定められた一定時間「火熱」を加えても、建物の構造に支障が出ないことが求められます。よりくわしい要件は「建築基準法施行令 第百七条」で確認できます。

参考:e-Gov法令検索「建築基準法」
参考:e-Gov法令検索「建築基準法施行令」


準耐火構造とは?|一定時間、建物の延焼を抑制する

準耐火構造とは、建物の倒壊や延焼を防止する「耐火構造」に対し、建物内部で発生した火災による延焼を一定時間抑制することを目的とした構造です。建築基準法において、建築物の主要構造部が「準耐火性能」に適合する建築物の構造を指します。

耐火構造と同様に、通常の火災による火熱が加えられた場合に、壁や柱などの主要構造部分に応じて一定時間、変形や溶融、破壊などの損傷を生じないことが求められます。こちらのくわしい要件は「建築基準法施行令 第百七条の二」で確認できます。

参考:国土交通省「建築基準法制度概要集」
参考:e-Gov法令検索「建築基準法施行令」


防火構造と「防火・準防火地域」との関係



火災の被害を最小限に抑えるには、まち全体で対策を講じることが大切です。そのため、都市計画法では、火災の発生や延焼のおそれが高い地域を「防火地域」「準防火地域」として指定し、建築物の防火性能に関するさまざまな規制を設けています。


防火地域・準防火地域とは?

防火地域とは、市街地の中でも特に火災の危険性が高く、大規模な火災発生時に延焼を防止する必要がある地域です。駅前や繁華街、幹線道路沿いなどが指定されることが多いです。

また、準防火地域とは、防火地域に準じて火災の危険性が高いと判断される地域のこと。防火地域の周辺や、比較的建物が密集している住宅街などが該当します。これらの地域では、建物の外壁や開口部に防火戸などを設置するなど、防火構造や耐火構造のほかに、追加の防火設備を設ける規制が定められています。


防火構造で建てられる建物の要件

防火地域では、多くの場合で耐火建築物や準耐火建築物にする必要がありますが、特定の要件を満たす場合は防火構造で建築することも可能です。


地域要件
防火地域延床面積50㎡以下の平屋建ての付属建築物(物置など)
準防火地域 
  • 延床面積500㎡以下の地上1階または地上2階の木造建築物
  • 延床面積500㎡以下の3階建ての建築物

    ※一定の技術基準に適合すれば認められる


このように、準防火地域では、比較的多くの一般的な住宅で防火構造が選択できるようになります。



自分の土地がどの地域か調べる方法

その土地が防火地域や準防火地域に指定されているかを調べる方法はいくつかあります。例えば、土地の購入前や建築計画時に、不動産会社やハウスメーカーに依頼して確認してもらうと確実です。また、各自治体の担当窓口で直接確認することも可能です。自治体によってはホームページで都市計画図や用途地域図を公開している場合もあるので、検索してみるのもよいでしょう。


防火構造の注意点と考慮すべきポイント



耐火構造に比べて規制が緩やかな防火構造ですが、家を建てる際にはいくつか注意しておきたい点があります。


屋内からの出火には弱い特性を理解する

防火構造は、周囲(屋外)で起こった火災のもらい火や延焼を防ぐための構造のため、屋内からの出火に弱いという点に注意が必要です。建物内部から発生した火災に対する防火性能を備えた耐火構造に比べ、防火構造の建物は、キッチンでの火の不始末や電気配線からの出火といった内部からの火災で比較的早く延焼、倒壊するリスクがあることを理解しておきましょう。


木造住宅の場合は火災保険の保険料が高くなることも

マイホームを建てる際、火災保険への加入は必須ですよね。この火災保険料は、保険会社や補償内容だけでなく、建物の構造や立地によっても大きくことなります。

一般的に、防火構造の木造住宅は、耐火構造の鉄筋コンクリート造のマンションなどと比べると、火災のリスクが高いとみなされ保険料が高くなる傾向があります。このように、構造の違いによって火災保険料が変わる可能性があることを覚えておきましょう。


防火構造の家づくりは建築実績が豊富な大手ハウスメーカーに相談



大きな買い物となるマイホームだからこそ、万が一の火災に強く、安心して暮らせる家を建てたいですよね。大手ハウスメーカーの中には、独自の技術を活かした設計や建築で、以下のような高い防火性能を持つ住まいを提供しているところもあります。


  • 壁の内側や天井裏などの「火の通り道」になりやすい箇所に、内部延焼を抑える建材を使用
  • 火災だけでなく、地震や台風などにも強い耐久性の高い素材で外壁を開発し、総合的にみて災害に強い家づくり


家づくりでは、内装や間取りなどに目が行きがちですが、建物の安全性も非常に重要なポイントです。ぜひパンフレットや資料を手にとり、信頼できるハウスメーカーを探してみてください。



まとめ|防火構造の特徴を理解し、安心できる家づくりを



今回は、火災に対する備えとして防火構造がどのような特徴を持つのか、耐火構造や準耐火構造との違い、防火・準防火地域との関係性についてご紹介しました。

防火構造には、「建築コストを抑えられる」「設計の自由度が高い」といったメリットがある一方で、屋内からの出火には弱いといったデメリットも存在します。大切な家と家族を守るためにも、家を建てる前には防火構造の特徴をしっかりと理解し、最適な住まいの構造を検討しましょう。

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