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在来工法とは?ツーバイフォーとの見分け方や構造・耐震性を解説!

家選びネット公式 (ie-erabi.net) 2022-11-09
基礎知識

「在来工法とは?」「ツーバイフォーとの見分け方は?」と疑問に思っている方もいるのではないでしょうか。今回の記事では、在来工法で建てる木造住宅の構造や特徴、気になるメリット・デメリットや耐震性について解説します。


在来工法とは、古くから建築に用いられてきた伝統工法


在来工法の特徴や構造は?

在来工法は、日本に古くからある伝統工法で「木造軸組工法」とも言います。在来工法の特徴は、柱と梁によって建物を支える構造となっていること。コンクリートの基礎の上に柱を建て、その柱に梁を組み合わせて骨組みをつくり、その後「屋根」「壁」を張りつけて建築していく工法です。


屋根が先にできあがるため、構造の内部や以降の工程で使用する資材を雨風から守ることができ、雨の多い日本の風土に合った工法と言えます。


在来工法は、ほかの構造に比べて地震などによる倒壊が心配な方もいるかもしれません。現在では、地震や災害に耐えられるよう「耐力壁」を配置したり、柱と梁を支える「筋交い」を入れて補強したりするなど、耐震性・耐風性を高めています。伝統による木の技術を生かしつつ、現在もその技術は日々進化していると言えるでしょう。


在来工法は木造住宅のうち76%を占める

現在、日本の一戸建て住宅の多くは在来工法で建てられています。木造住宅の建築方法には、「在来工法(木造軸組工法)」と「ツーバイフォー工法(木造枠組壁工法)」がありますが、2018年に行われた林野庁の調査によると、木造住宅のうち76%が「在来工法」だといいます。


加えて、一戸建て住宅の構造のうち、木造住宅は約9割を占めることから、「在来工法」は日本で最も普及している工法と言えるでしょう。


参考:林野庁「木材利用の動向(2)」

参考:総務省統計局「住宅の種類,建て方及び構造」


在来工法とツーバイフォー(2×4)工法の見分け方


木造住宅の工法では、「在来工法(木造軸組工法)」が最も一般的な工法ですが、同じ木造の工法である「ツーバイフォー(2×4)工法(木造枠組壁工法)」との違いは何でしょうか。その見分け方を見ていきましょう。


ツーバイフォー工法とは、建築基準法上においては「木造枠組壁工法」と呼ばれる、四方の壁4面・床・天井の6面体で建物を支える工法のことです。在来工法のように柱や梁で建物を支えるのではなく、壁で建物を支えます。


一般的に、寸法が約2インチ×約4インチ(ツーバイフォー)の構造用木材を組んで作った枠組に、合板などの構造用面材を接合した6面体構造で形成されます。ツーバイフォー工法は、アメリカやカナダなどの北米から輸入され、現在日本でも普及している工法です。


以下に「在来工法」と「ツーバイフォー工法」の主な違いをまとめました。


在来工法
ツーバイフォー工法

建物を支える建材

・柱、梁、筋交い、耐力壁
・4面の壁、床、天井
工期
・設計の自由度が高いため、打ち合わせなども含めて工期が長くなる
・規格化された工法のため短い

間取りの自由度

・高い
・低い
接合部

・継手※1 ・仕口※2 ・補助金物

・釘 ・金物
開口部
・数や種類が豊富

・規格化されているため制限あり

・壁の強度を維持するため一定以上は大きくできない

リフォーム
・大規模なリノベーション、間取り変更が可能

・規格化されているため制限あり

・リノベーションは難しい

施工会社
・古くから用いられてきた工法のため取り扱う施工会社が多い
・取り扱う施工会社は少ない

※1「継手」(つぎて):2つ以上の部材を同一方向に継ぐ方法、またはその接合部のこと。

※2「仕口」(しぐち):建築部材の接合方法の一種。方向の異なる複数の部材をT字形、または斜めに接合・交差させること。


専門的な知識や経験がないと、在来工法とツーバイフォー工法の違いを見分けるのは困難でしょう。しかし在来工法は、柱や梁の木材同士の接合部に柔軟性があります。一方で、ツーバイフォー工法は「面」を金物などで強く接合するため、剛性(変形しにくい特性)があることが双方の大きな違いと言えます。


ツーバイフォー工法を詳しく知りたい方はこちらツーバイフォー工法とは?概要やメリット・デメリット、価格相場を紹介


在来工法のメリット


在来工法を用いた家にはどんなメリットがあるのでしょうか。4つのメリットをご紹介します。


<メリット1>個性的でおしゃれな浴室にできる

在来工法の浴室は、モルタルとタイルで仕上げます。近年はシステムバスが主流となっていますが、在来工法ではシステムバスで実現できない「自由度の高い浴室」をつくることが可能です。


床や壁のほか、窓の大きさなども好みに合わせてデザインでき、素材も自由に選べるためヒノキ風呂や大理石などの浴槽をつくることも可能です。機能面で劣るといったデメリットはありますが、お風呂のデザインにこだわりたい方には大きなメリットとなるでしょう。


<メリット2>間取りに自由がきく

在来工法は、外観のデザイン、内装の間取りなどの自由度が高く、好みに合わせた設計を実現できるメリットもあります。


在来工法であれば、家族構成や環境の変化にともなって柔軟にリフォームやリノベーションを施すことも可能です。例えば、部屋を仕切っていた壁を取り除いて大空間にしたり、1つの部屋に壁をつくって部屋を増やしたりなど、間取りの変更ができるのが大きな特徴です。

ただし、耐震性や耐久性に影響を及ぼすことのないよう、間取りを変更する際は設計士などのアドバイスを取り入れるようにしましょう。


<メリット3>開口部を大きく作れる

住まいに大きな開口部をとることができるのも、在来工法の魅力の一つです。開口部とは、「天窓」や「掃出し窓」「出入り口」のことで、用途によってさまざまな大きさや形状があります。大きな開口部をつくることで、通風性がよく、湿気の溜まりにくい住環境にすることができるでしょう。


また、美しい景観に囲まれた敷地であれば、大きな開口部から眺められるよう設計することで、景観そのものを絵画のように楽しむこともできます。住宅密集地であれば、中庭をつくることで、プライバシーを確保しつつ建物の隅々まで自然な明るさを取り入れることもできるでしょう。


<メリット4>施工業者が多い

先述したように、在来工法は古くから日本で用いられてきた建築方法です。よって、多くの施工業者が在来工法で建物を建てています。施工業者が多いメリットは、信頼でき、腕のよい大工がいる会社を探しやすいところにあります。


在来工法のデメリット


つづいて、在来工法を検討する際に知っておきたいデメリットをご紹介します。戸建てを建築する前に、メリットのみならずデメリットも把握して、後悔のないようにしましょう。


<デメリット1>工期が長い

在来工法は、工期が比較的長くなるデメリットがあります。間取りの自由度が高いため、打ち合わせの時間がかかるためです。在来工法は細部にいたるまで思い通りの間取りを実現できますが、設計から工打ち合わせの時間がかかる打ち合わせの時間がかかる日数が長くなることを覚えておきましょう。


<デメリット2>建築費用が高い

在来工法は、ツーバイフォーや規格住宅と比べて材料のコストがかさみます。また工期が長くなると、必然的に人件費も多くかかってくるため、全体的に費用が割高になることがデメリットとして挙げられるでしょう。


<デメリット3>質に差が生まれやすい

施工する大工の技術、経験値によって仕上がりの質に差がでることも、在来工法のデメリットとして知っておきましょう。施主の希望を取り入れた間取りの自由がきく反面、工程が複雑になる傾向があり、依頼先は慎重に検討する必要があります。


コストを抑えるために取り入れられている工夫


上記のデメリットで、在来工法は建築費用が割高になってしまう旨をお伝えしましたが、近年はさまざまな工夫のもと、費用削減・工期短縮が行われています。


・プレカット加工

「プレカット加工」とは、建築部材を施工現場に持ち込む前に、原材料の切断や切断部の加工を工場で機械加工しておくこと。近年の在来工法では、プレカット加工の導入などで効率化を図り、コスト削減が進んでいます。建築現場では事前にプレカット加工された木材を組み立てていくため、時間短縮にもつながります。


・金物工法

在来工法の特徴である、継手や仕口で仕上げる接合部を金物に置き換える「金物工法」という工法もあります。接合部が金物にかわるだけで、構造は在来工法と同じです。金物工法は接合部の耐力が明確になり、断面欠損も少ないことから、より強度を増した構造体にすることができます。尚且つ金物工法は、必要な金物を事前に工場で取り付けておいてから現場に搬入するため、安全でスピーディーな施工が可能となり、工期短縮にもつながります。


在来工法のメリットもそのままに、金物工法は、天井高を高くして広がりのある空間にしたり、光を沢山取り込める大開口を設けたりすることもできます。戸建て建築の際は、依頼する施工会社が金物工法を取り入れているかという視点で選んでみてもよいかもしれませんね。


在来工法は地震に強い?気になる耐震性は?


日本は地震大国でもあるため、在来工法で建てられた住宅が地震に強いかは気になるところですね。ここからは、在来工法による住宅の耐震性に不安を感じている方に向け、在来工法の耐震性、また地震対策についてご紹介します。


建築基準法の改正により見直された耐震性

住宅の耐震性を比較する際に重要になるポイントは、「建築基準法の基準を満たしているか」という点にあります。建築基準法は、大きな地震災害がおこるたびに見直しがされてきました。その中でも2000年に見直された建築基準法の改正が、在来工法によって建てられる住宅の耐震性をより強固なものとしています。


改正のきっかけは、1995年に起きた阪神淡路大震災にあります。阪神淡路大震災では、在来工法で建てられた多くの住宅が倒壊し、甚大な被害がありました。建築基準法改正前は、在来工法の壁に対する明確な基準が示されていなかったためです。しかし、阪神淡路大震災の倒壊被害を機に住宅の耐震性が見直され、基準を満たす建物でなければ建築許可が得られないことになっています。


建物の耐震性能を表す指標に「耐震等級」があります。等級は1から3となっており、耐震等級1は、建築許可がおりる建築基準法の最低条件です。施工会社によって対応している等級に違いがあるため、耐震性に関して気になる方は、耐震等級について担当者に聞いてみましょう。


耐震等級を詳しく知りたい方はこちら
耐震等級3は必要?耐震等級の意味や調べ方、証明する費用やメリットを解説


在来工法の耐震対策

ここでは、2000年の建築基準法で改正された「在来工法の地震対策に関するポイント」をまとめました。


・耐力壁の配置

建築基準法改正により、「耐力壁」を一定量以上用いてバランスよく配置することが義務付けられました。耐力壁とは、地震や風など横からの力に抵抗することができる壁のこと。耐力壁は、通常の壁とは違い、筋交いや構造用面材などを入れて強度を高めています。この耐力壁が多ければ多いほど、耐震性が高くなります。


・金物の種類を指定

柱や梁で用いる金物の種類・固定箇所・範囲などの基準が、建築基準法改正後に厳格化されました。新しい基準をクリアした金物を用いることで、建物がしっかりと固定されるようになり、強度も一層高まりました。


・地盤調査の義務

耐力壁や金物指定に加え、地盤調査を行うことも義務付けられました。地盤調査を行うことで、その土地が建物の重みに耐えうる地盤をもっているかを調べられます。ただし、地盤調査は専門家に依頼する必要があり、調査費用もかかることを覚えておきましょう。


このとき、重要な判断基準になるのが自治体ごとに発行される「ハザードマップ」や、国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」です。まずは土地の候補を決め、そのあとに専門家に依頼するとよいでしょう。


地震に強い一戸建てを詳しく知りたい方はこちら
地震に強い一戸建て住宅を建てよう。建物の構造や耐震設備を紹介

ハザードマップの見方を詳しく知りたい方はこちら
ハザードマップの見方。色付けで分かる災害リスクと使い方のポイント


大手ハウスメーカーで在来工法を用いた家を建てよう


日本の伝統工法である在来工法(木造軸組工法)。この工法に最先端の技術を組み合わせ、設計の自由度を確保しながらも、さらに強靭な構造躯体を作り出しているハウスメーカーもあります。


また、在来工法(木造軸組構法)を基本にハウスメーカー独自の規定を運用することで、オンリーワンの構法を取り入れている実例もあります。木造住宅の弱点である接合部の強度不足を補うため、地震波の全方向からの力に対応する技術です。


設計の自由度を持たせつつも、高い耐震性を実現し、進化している在来工法。大手ハウスメーカーは、多くの実績とノウハウを持ち合わせているため、希望に沿ったアドバイスや提案をしてくれることでしょう。積極的に展示場に足を運んだり、資料請求をしたりすることで、ご自身に合うハウスメーカーを見つけられるとよいですね。


在来工法のメリット・デメリットを知って後悔のない家づくり


在来工法とは、柱と梁が基本構造となった木造住宅の一種。床・壁・天井の6面体で支えるツーバイフォー工法との見分け方もおわかりいただけたでしょうか。おしゃれな浴室にできるなど間取りの自由度が高いメリットがある一方、施工を依頼する業者によっては仕上がりの質に差が生まれたり、建築費用が高かったりなどのデメリットがあります。


在来工法は古くから用いられた工法で、現在では最先端技術を取り入れながら耐震性にも優れた住宅が建てられています。在来工法の構造をしっかりと理解し、特徴を把握した上で理想のマイホームを建てましょう。

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