
【実例付き】パティオとは?戸建てに設けるメリット・デメリットや失敗しない活用術
パティオとは、スペイン語で「中庭」を意味します。新築住宅にパティオを取り入れたいけれど、どのようなメリットや注意点があるのか、どう活用すればよいのか気になりますよね。今回の記事では、パティオのある暮らしの魅力や、実用的な活用術、おしゃれな間取りの実例をご紹介します。後悔しないパティオのある住まいづくりに、ぜひお役立てください。
パティオとは?
そもそも「パティオ」とは、何を表す言葉なのでしょうか?まずはその意味や語源についてご紹介します。
スペイン語で「中庭」を意味する言葉
パティオとは、スペイン語で「中庭」「裏庭」を意味する言葉です。日本とは違い、土足文化が根付くスペイン地方において、パティオは単なる庭ではなく「屋外のもうひとつの部屋」として親しまれてきました。
色とりどりのタイル張りの床や噴水を設置したり、植木や家具を置いたりと、暑い気候の中で涼を得るためのオープンスペースとして活用されています。このようなパティオがある住宅は「コートハウス」とも呼ばれ、食事や景色を楽しむスペースとして、住む人のライフスタイルに合わせてアレンジできるのが大きな魅力です。
日本で見られるパティオの特徴
日本の住宅建築におけるパティオは、単純に「建物に囲まれた屋外空間」を指すことが多いですが、マンションなどの集合住宅では、入居者だけが利用できる「屋外共同スペース」を指すこともあります。広義で、中庭や特定のスペースを「パティオ」と呼ぶ傾向があるようです。
一戸建て住宅に中庭としてパティオを設ける場合、壁や窓で四方を囲み、完全なプライベート空間を楽しめる「ロの字(回廊型)」タイプや、三方向だけを壁や窓で囲んで開放感を演出した「コの字」タイプなどがあります。
「パティオ」と「テラス・バルコニー・ベランダ」との違い
パティオをはじめ、テラス・バルコニー・ベランダも、屋外スペースに設けられているため、混同されがちです。明確な法的定義ががあるわけではありませんが、一般的には以下のように使い分けられています。
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特に住宅の1階に儲けられるテラスは、掃き出し窓などで室内とつながり、一体感が感じられるのが特徴です。
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パティオのある住宅のメリット
パティオ付きの住宅には、日々の暮らしを豊かにするたくさんの魅力があります。ここでは特に大きなメリットをご紹介します。
自然光や通風を取り入れやすい
パティオは、開口部から明るさと心地よい風を室内へ呼び込みます。家の中心にパティオを設けることで、通常は採光を取り入れにくい北側の部屋にも、やわらかな自然光を取り込むことができるでしょう。
また、自然な風の通り道ができ、家の中の空気の循環が良くなります。これにより、湿気がこもりにくくなるため、カビや結露の発生を抑える効果も期待できます。
使い方次第で暮らしが豊かになる
パティオは単なる庭ではありません。アウトドアリビング、子どもの遊び場、ガーデニング、バーベキューなど多様な使い方ができ、日々の暮らしを豊かに彩ってくれるでしょう。
また、リビングやダイニングと一体化させることで、視覚的な広がりが生まれ、より開放的な住空間に。ランドリールームの隣に設ければ、洗濯物を干すのが格段にラクになり、家事効率もアップします。
スペインで日常のオアシスとして人々に愛されるパティオのように、日本においても、パティオのある家は、日々の暮らしに癒やしをもたらす特別な空間となるでしょう。
日常的にプライベート空間を満喫できる
プライバシーを守りながら、屋外の環境を楽しめるのも、パティオの大きなメリットです。都市部に多く見られる狭い土地や、隣家との距離が近い敷地条件であったとしても、外からの視線を気にすることなく、プライベートな屋外空間を満喫できます。
子どもやペットを安心して遊ばせられる
住宅の中に壁や窓で囲まれたパティオがあれば、お子さんやペットを安心して遊ばせられます。外部からの浸入を防げるためセキュリティ面でも安心ですし、道路への飛び出しといった危険性もありません。家族が安心してのびのびと過ごせる空間として活用できるのは大きな魅力です。
パティオを設けるデメリットと後悔しないための対策
パティオのある住宅にはメリットがある一方、デメリットも存在します。後悔のない家づくりのために、事前にデメリットをしっかり把握し、対策を検討しておきましょう。
居住空間が狭くなり、建築コストも増える
住宅の中心にパティオを設けることで、その分のスペースが居住空間として使えなくなります。その結果、室内の面積が狭くなったと感じるかもしれません。敷地面積が限られている場合は、特に考慮が必要でしょう。
また、パティオを設置するには、通常の壁や基礎に加え、排水設備や採光のための窓、おしゃれな床材など、追加の建築費用が発生することがあります。予算計画の段階で、これらのコストを十分に盛り込んでおくことが大切です。
メンテナンスの費用や手間がかかる
パティオは屋外スペースのため、長期的に見てメンテナンスの手間と費用がかかります。どの角度からも中庭を眺められるように配置された窓の多くは、定期的な窓拭きが必要です。また、雑草などの手入れも発生し、状況によっては業者への依頼が必要となるケースも考慮しておきましょう。
水はけが悪く、災害時に水が溜まりやすい
パティオは構造上、水はけが悪く、雨水がたまりやすい傾向があるため、排水経路がしっかりと確保されていないと水害を受ける可能性が高まります。
突然の集中豪雨や台風による大雨などに見舞われた場合は、被害が大きくなる可能性があるため、設計段階で十分な排水計画と設備を検討しましょう。
冷暖房効率が下がりやすい
パティオの景観を楽しむためには窓が多くなりがちですが、一般的に窓は熱や冷気が逃げやすくなる部分です。そのため、断熱性や冷暖房効率が下がって光熱費が高くなる可能性があります。対策として、パティオを囲む窓には、ペアガラスやトリプルガラスなどの高断熱窓を選ぶことで、快適性と省エネ性を両立させることができます。
失敗しない!おしゃれで実用的なパティオにするためのポイント
プライバシーを守りながら、屋外の開放感を楽しめる空間として、近年注目を集めるパティオ。ここからは、おしゃれで実用的に使えるパティオにするための具体的なコツをご紹介します。
パティオでの過ごし方を具体的にプランニングする
パティオを設ける上で最も大切なのは、「どんな風に過ごしたいか」を明確にイメージすることです。このイメージによって、パティオの大きさ、形、設置場所、必要な設備などが大きく変わってきます。例えば、以下のような過ごし方を想定してみましょう。
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パティオでお茶を楽しみたいなら、テーブルや椅子を置くスペースの確保、木陰やオーニング、パラソルなどで日陰を作る工夫などが必要になります。また、ガーデニングなら日当たりや風通しなど、植物が育つ環境を整える必要もあるでしょう。後悔しないパティオにするためには、具体的な過ごし方を考慮した上でのプランニングが何よりも大切です。
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デッキやタイルなどで床材を選び、幅広い用途で活用する
パティオの床材は、使い勝手やデザイン性を大きく左右します。特に「デッキ」を敷くことで、使いやすさが格段に向上し、活用の幅が広がります。子どもたちが遊んだり、ヨガを楽しんだりと、多目的に使えるのが魅力です。パティオ全面をデッキにして各部屋とつなげれば、パティオを「廊下」のように活用し、家族が自然と集まる動線を生み出すことも可能です。
また、パティオの一部をデッキにし、残りの部分を芝生やタイルなど、異なる素材にするのもおすすめ。空間にメリハリが生まれ、デザイン性が高まります。家族の暮らしに合わせたデザインを検討し、素材の組み合わせを楽しんでみましょう。
上階にパティオを設けてプライベート感を高める
もし可能であれば、2階以上にパティオを設けるのもおすすめです。上階のパティオは、1階よりも風が通り抜けやすく、開放感をより一層味わえます。
また、周囲からの視線も気になりにくいため、カーテンやシェードがなくてもプライベートな時間を過ごすことができるでしょう。上階に接する窓を大胆に大きくすることで、室内から見える景色も変わり、より特別感を演出できます。上階パティオならではの間取りを実現し、優雅な時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。上階の床材には、手入れのしやすい「デッキ材」が特におすすめです。
和モダンなどテーマを決めて空間演出する
「パティオは洋風」というイメージを持っている方も多いかもしれません。しかし、和のアイテムを上手に取り入れて「和モダン」を演出するなど、テーマを決めることで、洋風のパティオとはひと味違ったオリジナリティあふれる雰囲気を演出できます。
特に二世帯住宅の場合、和モダンなパティオは世代間ギャップが生まれにくく、家族全員が心地よく過ごせる共有スペースとなりえます。居住空間が分かれるタイプの二世帯住宅では、程よいプライバシーを確保しつつ、自然な交流を促す「境界スペース」となるでしょう。
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パティオを設けるときの注意点
ここでは、実際にパティオをつくるときに注意しておきたい点をお伝えします。
適切な排水計画と防水対策を行う
パティオは屋外空間であるため、雨水の処理が非常に重要です。排水計画が不十分だと、水が溜まりやすくなり、カビや虫の発生、さらには隣接する居室への浸水リスクも高まります。特に「ロの字型」パティオのように四方を建物で囲まれている場合は、水の逃げ場がなくなるため、より綿密な排水設備が必要です。
設計段階で、勾配(水が流れる傾斜)や排水溝の設置場所、容量などを十分に検討し、専門家と相談しながら万全な防水対策を行いましょう。
採光・通風などを考慮して建物の配置と高さを決める
パティオに十分な光と風を取り込むためには、建物の配置と高さが非常に重要です。太陽の光を最大限に活用できるよう、建物の南側の高さを抑えたり、建物の高さと広さのバランスを考慮して日当たりを確保したりする工夫が必要です。
また、風の通り道ができることで、家全体の通風も改善されます。地域ごとの風向きや気候も考慮し、自然の風を効果的に取り込めるような設計を心がけましょう。
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【間取り実例】 大手ハウスメーカーで叶えるパティオのある暮らし
パティオを戸建てに取り入れることで、どのような家づくりが実現できるのでしょうか。ここでは、ハウスメーカーで実際に建てられたパティオ付き住宅の施工実例をご紹介します。
<実例1>LDKと一体化した開放的なパティオ
ダイニングとリビングの間にパティオを設けることで、家全体に開放感をもたらした実例です。大開口の掃き出し窓でパティオと室内をつなぎ、素足でも出られるデッキ材を採用。まるでリビングがそのまま屋外に広がったような、一体感のある空間を楽しめます。
隣家からの視線が気になる場合は、大きめのパラソルや背の高い植栽を配置することで、プライバシーを確保しながら開放感を損ないません。パティオに使用する素材や窓の取り方次第で、さまざまな使い方ができ、家族でおだやかな時間を過ごせるでしょう。
<実例2>プライバシーを守りながら自然を楽しむ、都市型住宅のパティオ
都会などの狭小地では、隣接する高層階のマンションなどからの視線が気になるところです。しかし、工夫次第でこうした条件でも素敵なパティオをつくることが可能です。
この実例では、パティオの周囲をフロントガラスなどで囲むことで外部からの視線をシャットアウト。ガラスとガラスの間に縦横の隙間を設けることで、自然な通気性を確保しています。さらに、背の高い樹木を植えるのも、視覚的なプライバシー効果を高めるとともに、都心にいながらにして豊かな自然を感じられる方法です。
<実例3>和の趣を取り入れた、落ち着きのある和モダンパティオ
和モダンをテーマに、竹などの四季の移ろいを感じられる植栽を取り入れたり、趣のある灯籠を置いたりすることで、都会の喧騒から離れた静かで優雅な大人の時間を楽しめる空間を実現した実例もあります。周囲の視線を遮るパティオが、お茶を嗜んだり、瞑想をしたりと、心穏やかに過ごすための「隠れ家」のような存在になるでしょう。
<実例4>平屋×パティオで叶える、光と風が巡るワンランク上のくつろぎ
広々としたリビング・ダイニングから続くコの字型のパティオが特徴の平屋です。三方向に設けた大開口の窓からは、さんさんと陽光が降り注ぎ、家全体が明るく開放的な雰囲気に包まれます。
この間取りの素晴らしいポイントは、パティオと洗面・脱衣所などの水回りがスムーズにつながっていること。洗濯物をすぐに外に干せるため、毎日の家事動線が驚くほどコンパクトにまとまります。内と外が心地よくつながり、どこにいても光と風を感じられる、機能性とデザイン性を兼ね備えた平屋の住まいが実現できます。
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まとめ|パティオを取り入れて理想の暮らしを実現しよう
パティオとは何かという基本的な情報から、戸建てに設けるメリット・デメリット、具体的な間取り実例までご紹介しました。パティオは、住まいに開放感と特別な空間演出をもたらし、暮らしを豊かにする大きな魅力を持っています。
その一方で、費用やメンテナンス、水はけや断熱性など、事前に知っておくべき注意点もあります。建築後に後悔することがないよう、パティオを設ける際は具体的な使い方のプランニングをし、建物の配置や排水計画、適切な素材選びなど、多角的に検討することが大切です。今回紹介した内容を参考に、理想のパティオのある住宅を建てられるとよいですね。