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ユニバーサルデザイン住宅とは。導入のメリット・デメリットと住宅実例を紹介

家選びネット公式 (ie-erabi.net) 2024-03-11
選び方
ユニバーサルデザイン住宅とは、小さい子どもから高齢者まで、誰もが暮らしやすいように設計された住宅のこと。近年、ユニバーサルデザインの考え方があらゆる場面で広まっており、住宅分野も例外ではありません。

今回は、ユニバーサルデザイン住宅の特徴について理解を深められるよう、バリアフリー住宅との違いや、ユニバーサルデザイン住宅のメリット・デメリットを解説します。新築にユニバーサルデザインを取り入れるときのポイントなども紹介するので、家づくりの参考にしてください。


ユニバーサルデザイン住宅とは、誰もが暮らしやすい住宅のこと



住宅におけるユニバーサルデザインは、住む人の年齢やライフステージにかかわらず、生涯に渡って家族全員が暮らしやすいように工夫された住まいのことを指します。

そもそもユニバーサルデザインとは、年齢や性別、障害の有無、国籍などに関係なく、最初から誰もが利用できるデザインを指します。近年は、誰でも利用しやすく暮らしやすい社会の実現を目指し、建物や製品、環境などあらゆる場面で活用されている考え方です。

ユニバーサルデザイン住宅を理解するために、「ユニバーサルデザインの7つの原則」と「ユニバーサルデザイン住宅とバリアフリー住宅との違い」を見ていきましょう。


ユニバーサルデザインの7つの原則

ユニバーサルデザインの言葉や考え方は、アメリカのノースカロライナ州立大学のロナルド・メイス博士によって提唱されました。メイス博士が創設した「ユニバーサルデザインセンター」では、ユニバーサルデザインを以下の「7つの原則」に定めています。


  1. 誰でも公平に使える(公平性)
  2. 柔軟性が高く自由に使える(自由度)
  3. 使い方が簡単で分かりやすい(単純性)
  4. 必要な情報すぐに理解できる(明確さ)
  5. うっかり間違えても危険につながらない(安全性)
  6. 体への負担が少なく楽に使える(省体力)
  7. 使いやすい適当な広さがある(空間性)


ユニバーサルデザインは、誰もが乗り降りしやすい「ノン・ステップバス」や、低い位置に購入ボタンがある「自動販売機」など、身近な場所で多く取り入れられています。


ユニバーサルデザイン住宅とバリアフリー住宅の違い

ユニバーサルデザイン住宅と似た言葉に「バリアフリー住宅」があります。ユニバーサルデザイン住宅とバリアフリー住宅の違いは、対象者と目的です。



対象者
目的

ユニバーサルデザイン住宅

全ての人
最初から、全ての人が使用しやすい
バリアフリー住宅
高齢者や体の不自由な方
障害によってもたらされる障壁となるものを除外する


ユニバーサルデザイン住宅は、高齢者や体の不自由な方も含めて、全ての人が最初から暮らしやすい住宅を目指したものです。対して、バリアフリー住宅は、高齢者や体の不自由な方を対象に、生活をする上で障壁となるものを取り除いた住宅を指します。



ユニバーサルデザイン住宅のメリット



ユニバーサルデザインを取り入れた住宅を建築する具体的なメリットを紹介します。


<メリット1>誰もが暮らしやすく安全性が高い

ユニバーサルデザイン住宅は、最初から誰もが安心して暮せるように設計されています。そのため、暮らしやすく安全性が高いことが最大のメリットです。

小さい子どもがいる場合には、「勢いよく扉を閉めてケガをする」「急な階段から足を滑らせる」といった事故が生じやすいです。また、高齢者に関しても、食べ物の誤えん等による窒息や交通事故による死亡よりも、転倒・転落・墜落による死亡事故の方が多い状況となっています。

住宅で起こりやすい事故を予測して、未然に防ぐための内装材や設備が取り入れられているユニバーサルデザイン住宅なら、より安心して生活できるでしょう。


<メリット2>病気やケガをしたときに介護がしやすい

ユニバーサルデザイン住宅には、家族が病気やケガをしたときに介護しやすい、といった利点もあります。作業や行動がしやすいように浴室やトイレが広く設計されるケースが多いためです。

突然のケガや病気に見舞われた場合であっても、本人や介助する家族の負担が軽くなる住まいは、生涯に渡って安心感にもつながるでしょう。


<メリット3>長く快適に暮らせる

ユニバーサルデザイン住宅は、20年・30年先の将来を見据えて設計されているため、長く快適に暮らせることも魅力の一つです。子どもの独立や自身の身体が不自由になったときなど、ライフステージの変化にも柔軟に対応しやすいでしょう。

家事や移動がスムーズに行えるように間取りも工夫されているため、少ない労力で暮らせることも、ストレスが軽減し長く暮らせるポイントと言えるでしょう。


ユニバーサルデザイン住宅を建てる際のデメリット



安全で快適な暮らしを実現できるユニバーサルデザイン住宅ですが、建てる際は理解しておきたい注意点もあります。ここでは、ユニバーサルデザイン住宅を建てる際に押さえておくべきデメリットを見ていきましょう。


<デメリット1>コストがかかる

ユニバーサルデザイン住宅は、一般的な住宅よりも性能や間取りにこだわる必要があるため、建築にかかるコストが割高になる傾向にあります。

さらに、「トイレを広くする」「廊下は車椅子が通れる幅を確保する」など、それぞれの場所に広いスペースを確保しようと思うと、それだけ延床面積も広くなり建築費用が高くなることも。予算や延床面積はどのくらい確保できるのか確認した上で、計画することが重要です。


<デメリット2>一部のスペースが狭くなる可能性がある

延床面積が確定している場合、どこかの広さを確保しようとすると、その分、別のスペースが狭くなる可能性があります。例えば、玄関やトイレを広くしたら、リビングや個室が狭くなってしまい後悔しているという声もあります。

ライフスタイルやライフステージの変化を考慮し、「どこを広くしたいのか」「妥協点はどこなのか」を事前に明確にして間取りを検討したいですね。


ユニバーサルデザイン設備を導入した施工事例



ここからは、ユニバーサルデザインを取り入れた間取りや設備事例を紹介します。こだわりたい場所に応じて必要な設備を導入すれば、自分の生活にあったユニバーサルデザイン住宅を形にできます。自身の暮らし方をイメージしながら参考にしてみましょう。


玄関

玄関は、車椅子の場合や手荷物を持っている場合を想定して、誰もが出入りしやすいような工夫を施しましょう。


<間取り・施工事例>
  • 車椅子でも出入りがしやすいように、間口が85㎝以上確保する
  • 両手がふさがっていてもカギを操作できるよう、施錠・開錠方法はボタンを押すだけのタイプにする
  • 強い力がなくても扉を開けられるように、ハンドルを軽く押すだけで開くタイプにする
  • 玄関スペースを圧迫しない、且つ、靴の脱ぎ履きがしやすくなるように、引き出しタイプのベンチを設置する


階段

階段は転倒や転落事故が起きやすい箇所です。素材や形状の工夫を行いましょう。


<間取り・施工事例>
  • 大きな転倒を防ぐため、L字型の階段を採用する
  • 踏み外したり、階段の角でケガをしたりしないように、踏み板の表面に滑りにくい加工を施す、また、階段の角に柔らかい素材を使用したタイプにする
  • 高齢者や子どもでも昇り降りがしやすいように、踏み板の幅や段差を工夫し勾配を緩やかにする
  • 安心して昇り降りができるように、手すりや足元にLEDライトを設置する


キッチン

キッチンは、複数人で同時に作業を行うことを想定して、家事導線の確保やモノの出し入れがしやすい収納を意識しましょう。


<間取り・施工事例>
  • 作業台の両側を動線として使えるようなキッチンタイプを採用する(例:アイランドキッチン)
  • モノの出し入れがしやすいように、頭より上の収納はボタンで自動昇降するタイプにする
  • モノの位置が分かりやすく楽に取り出せるように、収納はスライド式で開口部が広いタイプを採用する



リビング

リビングは出入りが多くケガが起こりやすい箇所です。家族で長く過ごす場所なので、安全性だけでなく快適性にも考慮した工夫を施しましょう。


<間取り・施工事例>
  • 片引き扉は、指を挟む事故を防ぐために、閉まる時に自動的で減速しゆっくり閉まるタイプにする
  • エアコンや照明の消し忘れを防ぐために、住宅設備や家電をインターネットでつなぎアプリと連動させて遠隔操作ができる仕様にする
  • エアコンやテレビなどを簡単に使えるように、インターネットを活用して音声で操作ができるようにする


お風呂

お風呂は溺れや転倒、ヒートショックといったリスクが高い箇所です。安全面に考慮した工夫を行いましょう。


<間取り・施工事例>
  • 体のバランスを崩して転倒するリスクを回避するために、床面と浴槽へ入る縁の部分の高低差が40㎝前後になる浴槽を採用する
  • 冬場に起こりやすいヒートショックを抑えるために、浴室暖房の設備を導入する
  • 体が洗いやすいように、洗い場を広くしたり大きいサイズの浴槽を採用する
  • 転倒のリスクを防ぐために、浴室と脱衣所の段差をなくし、滑りにくい床の素材を採用する
  • 転倒防止や動作がしやすいように、浴槽近くに手すりを設置する


トイレ

トイレは、車椅子や介助者も入って使用することを想定して、誰もが使いやすい工夫を施しましょう。


<間取り・施工事例>
  • 車椅子や介助者が入っても使用しやすいように、広めのスペースを確保する
  • 立ち座りをサポートするために、便座の近くに手すりを設置する
  • 介護が必要になったときを考慮して、トイレは寝室や浴室の近くに設置する
  • 動作空間を広げるために、便座の大きさや奥行きをコンパクトなものにする
  • 誰でも簡単に使えるように、自動で蓋の開閉や水が流れるタイプにする
  • 夜間の使用時に眠気を覚ましてしまわないように、照明は便座の内部や足元などを優しく照らすタイプを採用する


新築でユニバーサルデザインを取り入れるときのポイント