
完全分離型で後悔しない二世帯住宅づくり。メリットや税金の優遇面を解説
二世帯住宅の完全分離型とは、すべての住空間を親世帯と子世帯で分けた住居のことです。今回は、完全分離型ならではのメリットや後悔した事例、二世帯住宅の家づくりの注意点やポイントをご紹介します。
完全分離型の二世帯住宅とは
「完全分離型」の二世帯住宅とは、玄関を始めとするすべての住空間が親世帯と子世帯で別々になったタイプの住居のこと。二世帯住宅には大きく分けて3つのタイプがあり、完全分離型のほかには、すべての空間や設備を共用する「完全同居型」、玄関や浴室など部分的に共用する「部分共用同居型」があります。
一般的に、二世帯住宅は同じ住居に親世帯がいる安心感がある一方で、プライバシーの面でストレスを感じやすいともいわれています。完全分離型は近居に近いため、「同居はしたくないけれど、近くに住みたい」という希望を叶えてくれる二世帯住宅です。
完全分離型の二世帯住宅の間取りのパターン
完全分離型の二世帯住宅には、大きく分けて2つのパターンの間取りがあります。
上下分離型
上下分離型は、親世帯と子世帯で居住階層を上下に分ける横割りタイプの二世帯住宅。マンションの1階と2階に暮らすイメージで、1階部分に親世帯が生活し、2階部分または2階から上階部分に子世帯が生活することが一般的です。
親世帯は、平屋のような感覚で生活ができます。高齢になっても階段の上り下りがないため、安心感がある間取りといえるでしょう。
左右分離型
左右分離型は、左右で居住空間を分けた縦割りタイプの二世帯住宅です。メゾネットタイプのアパートの隣同士に、親世帯と子世帯が住んでいるイメージが近いでしょう。
左右で分けることにより、2階建てでも下の階への物音が気になりにくいほか、どちらの世帯も日当たりのよさが変わりにくいという特徴があります。
完全分離型二世帯住宅のメリット
完全分離型の二世帯住宅には、どのようなメリットがあるのでしょうか。主なメリットを4つご紹介します。
適度な距離を保ちやすい
完全分離型のメリットは、居住空間が完全に別々でプライバシーを確保しやすいことです。リビングや玄関など共有スペースがないため、適度な距離感で生活できます。
就寝時間の早い家族がいる場合でも、照明の明るさや生活音を気にすることなく世帯ごとのペースを確保できるでしょう。普段は干渉しあわない生活をしつつ、手を貸してもらいたいときには、声をかけたり駆けつけたりしやすい点も完全分離型の魅力です。
建築費や生活費を分けやすい
完全分離型の二世帯住宅は、家を建てる費用や引越し後の生活費を分けやすいこともメリットの一つです。二世帯住宅の建設費を親世帯と子世帯で分ける際、共有スペースの費用をどちらが負担するかでトラブルになったり、後悔したりするケースもあります。
共用スペースがない完全分離型は建設費用を分けやすく、後からトラブルになることもないでしょう。日々の生活でもそれぞれの世帯で買い物をするため、食費や消耗品費の支払いも別々です。
また、水道光熱費は世帯ごとに契約できるため、お金の管理で不仲になりにくいといえます。
税金の優遇がある
完全分離型の二世帯住宅を建設、または居住していると、税金の軽減措置を受けられる場合があります。そのためには、二世帯住宅の各居住空間を区分所有建物として登記(区分登記)することが必要です。
登記の条件は、「各部屋が構造上の独立性を有している」「各部屋が利用上の独立性を備えている」の2つ。それぞれの要件を満たしていれば、「不動産取得税」「固定資産税」「住宅ローン控除」で減額などの優遇があります。完全分離型であっても「相続税」の軽減措置はありますが、区分登記する場合は適用外となるため、注意しましょう。
床面積や登録状況、住居のある自治体などによって要件は異なりますので、事前に確認した上で家づくりを進めましょう。
ライフスタイルの変化に対応しやすい
完全分離型の二世帯住宅は、変化するライフスタイルに対応しやすいというメリットもあります。親世帯が高齢になって介護施設へ居住したり亡くなったりするなど、年月が経つにつれてライフスタイルや家族構成は変化するものです。
完全分離型であれば、親世帯の住居が空き家になった際、成長した孫が単身で住めるほか、結婚した孫世帯が暮らせます。また、自分たちが高齢になった際に親世帯が使っていた部分を使い、子世帯が使っていた部分を孫世帯が使うことも可能です。
家族が使わない期間は片方を賃貸に出したり、転勤の際は中古物件として売却したりと、さまざまな形で対応しやすいでしょう。
完全分離型の二世帯住宅で後悔した事例
完全分離型の二世帯住宅で生活する方には、後悔していることもあるそうです。ここでは、二世帯住宅を建てて後悔した事例をご紹介します。
完成した間取りに満足できなかった
完全分離型の場合、縦または横に住居スペースを区切ります。限られたスペースで生活に必要な間取りを全て整える必要があるため、完成した家の間取りに満足できないこともあるようです。
例として、「趣味を楽しむスペースが確保できなかった」「間取りを考えるときに、ライフスタイルが変わったときのことも考えておけばよかった」と、悔やむ方もいます。
生活音やプライバシーの確保が難しかった
完全分離とはいっても、同じ建物に二世帯が暮らすとプライバシーの確保に悩むこともあります。活動時間が異なると、お互いの洗濯機や掃除機の動作音、足音が気になることもあるでしょう。
また、玄関の出入りがお互いに見える場合は、「出かけるタイミングが把握されやすい」「友人を呼びにくい」などの理由で、お互いの居住空間から玄関の位置が見えない間取りにしておけばよかったという声もあります。
家に関する費用の負担割合でトラブルになった
家が完成してから費用に関してトラブルに発展するケースもあります。建設費用の負担割合だけでなく、外構や庭、駐車場など建物以外に共有スペースがある場合は、事前に建物以外の共用部分の負担割合を決めておかないと、後悔につながりかねません。
完全分離型の二世帯住宅を建てるときの注意点
完全分離型の二世帯住宅を建てる際に、押さえておきたいポイントをまとめました。
土地の広さが十分かを確認する
一般的に、完全分離型の二世帯住宅は、同居型よりも広い土地が必要です。外構や庭、車の台数によって必要な広さも変わりますが、土地の広さや建ぺい率(敷地面積に対して建築できる建物の割合)を考慮して家づくりをしましょう。
土地が狭い場合は、3階建てなど階数を増やすことで居住空間を広げられます。
予算オーバーにならないよう計画を立てる
キッチンや浴室などを共有しない完全分離型は、建設費がおおよそ2軒分かかるため、予算を超えないような資金計画を立てましょう。建物の外観をシンプルで凹凸の少ないデザインにしたり、水回りの位置を揃えたりすることで費用を抑えられます。
「後から変更できない部分は予算を削らない」というように予算をかける優先順位を検討し、引っ越し費用や入居後の家具の費用も予算に組み込んでおくことがおすすめです。
生活リズムにあわせて過ごせる間取りを検討する
それぞれの世帯の生活リズムに考慮した間取りにすると、プライバシーの確保につながります。音は上下に響きやすいため、寝室の配置が重要です。
1階に親世帯の寝室がある場合は、真上に子世帯のリビングや子供部屋、洗濯室を配置すると生活音が響きます。寝室の真上には、クローゼットや書斎など大きな音が鳴りにくい部屋を配置するとよいでしょう。
将来のライフスタイルの変化に備えた設計にする
間取りを考えている時点では問題がなくても、将来のライフスタイルの変化に対応できる設計にしておきたいものです。親世帯が高齢になった頃に備えて壁に手すりをつける下地をつけておいたり、家の中で手押し車や車椅子を使うことを考慮してゆとりのある空間を確保したりするのもよいでしょう。
また、デイサービスへの行き来がしやすい動線や介護スペースを考慮した間取りにしておくと、将来に大きなリフォームが少なく済みます。
完全分離型の二世帯住宅で後悔しないためのポイント
完全分離型の二世帯住宅を建てる際、後悔しないために知っておきたい2つのポイントを紹介します。
事前に全員で話し合いをする
家づくり全般にいえることですが、事前に家族で意見交換を行うことが重要です。間取りや設備、家づくり全体の費用の負担割合、生活のルールなど、家族全員の第一希望を叶えることは難しくても、歩み寄れる部分や優先度の高さを相談しておくと、引越し後によりよい環境で生活できるでしょう。
実際に家が完成してからでは変えられない部分もあります。自分の気持ちを伝えにくいと感じることもあるかもしれませんが、一人ひとりが長期間快適に暮らすために、前向きな話し合いを行いましょう。
実績やノウハウが豊富なハウスメーカーに依頼する
完全分離型の二世帯住宅の建設実績が豊富なハウスメーカーは、希望にあわせたさまざまなパターンの間取りを提案してくれます。蓄積されたノウハウにより、家づくりだけでなく税金の控除についても親身になって相談に乗ってくれるでしょう。
資料請求をしたり、住宅展示場へ足を運んだりすると、間取りや実際の生活をイメージしやすくなるのでおすすめです。さまざまなハウスメーカーを比較検討してみてはいかがでしょうか。
後悔しない二世帯住宅を建てよう
完全分離型の二世帯住宅は、すべての住空間で共有部分がないタイプの住居のことです。マンションの隣同士、または上下の階に住む近居に近いため、「同居には抵抗があるけれど近くに住みたい」という方のニーズを満たしてくれます。
生活音が気になるなど二世帯住宅ならではの悩みは、間取りを工夫することで住みやすくなります。家づくりの前に家族で不安な点を話し合い、納得のいく二世帯住宅を建てられるとよいですね。