
容積率とは?制限や緩和、計算方法をわかりやすく解説
容積率とは「敷地面積に対する延床面積の割合」のこと。家づくりで知っておくべき重要な数値で、「わかりやすく教えてほしい」「計算方法や建ぺい率との違いを知りたい」という人もいるのではないでしょうか。今回は、容積率の意味や計算方法、緩和されるケースなど、容積率に関する基礎知識を解説します。
容積率とは?
容積率とは、「土地に対する建物の延床面積の割合」のことです。簡単に言うと、その土地に建てることができる建物の大きさを制限するルールで、容積率の数値が大きいほど、大きな建物を作ることができます。数値の上限は建築基準法や都市計画法で地域ごとに定められているため、理想の家づくりを実現するためには、土地選びの段階から正しい容積率を知っておくことが大切です。
延床面積とは、建物の各階の床面積の合計で、建物全体の広さを表すもの。例えば、3階建ての家を建てる場合、1階、2階、3階それぞれの床面積をすべて合計したものが、その家の延床面積です。一般的に、建物が大きく、階数や部屋数の多い建物ほど延床面積は大きくなります。
容積率は何のためにあるの?
土地の広さに対して建てることができる建物の大きさの上限を示す容積率には、都市の過密化を防ぐ役割があります。容積率がなければ、都市部は高層ビルで埋め尽くされ、交通渋滞がひどくなったり、電力供給や下水処理などが追いつかなくなったりする可能性があります。容積率によって、人口のバランスを保ち、良好な住環境を維持しているのです。
住宅販売の広告などには、「建ぺい率50%・容積率100%」などと表記されているケースが多いため、その地域で建てられる家の規模を把握する手がかりとなるでしょう。
容積率の計算方法
容積率は以下の計算式で求めることができます。
容積率(%)=建物の延床面積÷敷地面積×100 例:1階60㎡、2階50㎡、敷地150㎡のとき、(60㎡+50㎡)÷150㎡×100≠73.3% |
容積率の上限は、都市計画法で定められた用途地域によって異なり、50~1300%と幅広く設定されています。住居系の地域は一般的に容積率が低く設定されているため、大規模な商業施設や工場などの建設は難しくなっています。一方、商業系の地域は、土地を有効利用するために容積率は高めに設定されています。
ただし、土地の前面道路の幅が狭かったり、複数の用途地域にまたがっていたりする土地の場合、容積率の計算は複雑になります。家を建てる際は、ハウスメーカーに相談し、土地に関する正確な情報を把握することが大切です。
「用途地域」については、このあと『容積率に影響する「用途地域」と「前面道路の幅員」』で詳しく解説します。
容積率と建ぺい率の違い
容積率と似ている指標に「建ぺい率」があります。どちらも土地に対する建物の大きさを制限するものですが、それぞれ計算対象と目的が異なります。
指標 | 意味 | 制限する範囲 |
---|---|---|
容積率 | 敷地面積に対する延べ床面積(すべての階の床面積合計)の割合 | 建物の高さ |
建ぺい率 | 敷地面積に対する建築面積(建物を真上から見下ろした投影面積)の割合 | 建物の広がり |
容積率は、「建物全体の大きさ」で立体的な割合を指しますが、建ぺい率は「地面に接する部分の広さ」を指す平面的な指標です。 つまり、容積率は建物の高さを、建ぺい率は建物の広がりを制限するルールといえるでしょう。
仮に建ぺい率だけで考えると、小さな土地に高層建築が無秩序に建ち並ぶかもしれません。もし容積率の制限がなければ、交通渋滞や排水処理能力の限界など、生活環境全体に負荷がかかる可能性があります。
また、地震などの災害時に避難経路を確保できない、火災の延焼リスクが高まるなど、大きな被害が出ることも考えられます。都市環境の調和や安全性、快適な生活環境を確保するためには、容積率と建ぺい率の両方を順守した家づくりが大切です。
容積率に影響する「用途地域」と「前面道路の幅員」
上述のとおり、容積率は用途地域によって異なります。加えて、前面道路の幅員(土地に面する道路の幅)も容積率に関わる要素です。容積率の上限を超える建築は認められないため、土地選びの段階から、用途地域と前面道路の幅員を確認しておきましょう。
容積率の上限は用途地域によって異なる
通常、容積率の上限は、各自治体の都市計画により用途地域ごとに指定されています。これを「指定容積率」と呼ぶこともあります。
用途地域とは、住宅地・商業地・工業地など、土地の性格や利用目的によって12種類に分けた土地の区分のことです。それぞれの用途地域で建築可能な建物の種類や規模が定められており、容積率も異なります。
例えば、「第一種低層住居専用地域」は主に戸建て住宅などの低層住宅のための地域で、良好な住環境を保護するため容積率は低く設定されています。一方、「第二種住居地域」は住宅地であっても容積率の上限が高く、住宅がメインではあるものの、マンションやオフィスのほか、大型店舗や遊戯施設なども混在するエリアとなります。
参考: e-Gov 法令検索「建築基準法第52条第1項」
参考:国土交通省 みんなで進めるまちづくりの話4『土地の使い方と建物の立て方のルールの話』
前面道路の幅員によって制限や緩和されるケースがある
容積率は、建物の高さによって制限されるだけでなく、道路の状況(前面道路の幅員など)によっても変わります。
狭い道路に面している土地は、過密な建設を防ぎ周辺の交通や住環境を守るため、容積率によって建物の高さが制限されていることがあります。これは、建築基準法第52条第2項に基づくもので「基準容積率」とも呼ばれます。例えば、土地に面した道路の幅が12m未満の場合は、前面道路の幅員に規定の係数を乗じた容積率に制限されます。
一方、幹線道路沿いや商業地、幅員15m以上の特定道路が一定の範囲にある土地など、特定の条件を満たす土地では容積率が緩和される場合があります。
参考: e-Gov 法令検索「建築基準法第52条第2項」
容積率の調べ方
容積率を調べるには、まず、自治体が公開している都市計画図を確認しましょう。この図には、土地ごとに定められた指定容積率や用途地域(例:第一種低層住居専用地域、商業地域など)が詳しく記載されています。市役所の都市計画課など行政の窓口のほか、公式サイトや地図情報システムなどを活用して土地情報を調べてみましょう。
また、住宅販売サイトや不動産会社などが提供する土地情報も、広告などに用途地域や容積率が記載されている場合が多いです。ただし、特殊な条件や緩和規定が適用されるケースなど、専門家のアドバイスが必要となることがあるため、より正確な情報を得るためにも最終的にはハウスメーカーの担当者や建築士などに相談することをおすすめします。
容積率が緩和される5つの特例
延床面積に含まれない特例を上手に利用して、容積率を緩和することも可能です。住宅の構造や自治体によって条件が異なるため、ここでは主な5つの特例をご紹介します。用途地域や前面道路の幅員による制限を受けながらも、大きな家を実現するための参考にしてみてください。
1.地下室
地下室は、天井の高さが地盤面から1m以下であれば、延床面積の3分の1を限度に、容積率の計算対象外となることが一般的です。半地下で自然光が入る場合でも、地盤面から1m以下であれば法の規定内のため、容積率には算入しません。地下室の分だけ広い床面積を確保できるため、地価の高い地域でも土地を有効利用できるでしょう。
2.ビルトインガレージ(駐車場)
建物の壁で囲まれているビルトインガレージは延床面積に算入されますが、その一部である延床面積の5分の1を上限に容積率の計算から除外できます。
例えば、延床面積が200㎡の住宅に50㎡のガレージを設けた場合、通常は200㎡全体が延床面積として計算されます。しかし、このガレージ部分の5分の1にあたる40㎡を容積率から除外できるという緩和措置が設けられています。
つまり、ガレージを設けることで、実質的に容積率を緩和し、居住空間をより大きくできる可能性があるということです。家を建てる際に車を保有している場合は、ビルトインガレージを検討してみてはいかがでしょうか。
3.小屋裏収納(屋根裏収納)
天井と屋根の間にある空間を収納スペースとして活用する場合も、容積率が緩和されます。この場合、天井の高さが1.4m以下、床面積が直下の階の面積の2分の1未満であることが条件です。
ただし、用途は収納に限定され、居室(ロフト)のように人が常時生活できる空間として利用する場合は、延床面積に算入されるため容積率は緩和されません。また、収納スペースへの出入りは「はしご」が一般的で、固定階段は小屋裏の床面積に含まれる場合があるので、自治体の建築要件を確認しましょう。
4.バルコニー・ベランダ
屋外であるバルコニーやベランダは、原則として建物の床面積には含めないため、容積率から除外できます。ただし除外できるのは先端から2m以下の場合で、2mを超えた分は容積率に算入されます。なお、格子をつけた場合やインナーバルコニーなど、条件によっては床面積として計算されることがあります。誤ると容積率に算入されるため、自己判断せず建築士などの専門家に相談した方が賢明でしょう。
5.屋上・ペントハウス
屋上やペントハウスも、建物の高さを抑えつつ、居住空間を広げるための有効な手段です。
屋上は、通常床として取り扱わないため、物干し場や屋上ガーデンなどに利用しても、容積率緩和の対象になります。
一戸建て住宅のペントハウスとは、屋根から突き出た小屋(塔屋)のような空間のこと。マンションの最上階にある部屋とは異なり、ルーフバルコニーに通じる階段室やホームエレベーターの機械室など、多くは屋上へのアクセスや設備の収納などに利用されます。高さが5m以下、水平投影面積が建築面積の8分の1以内という条件を満たせば、階数にカウントされず、容積率に影響されません。
容積率をオーバーした場合はどうなるのか?
容積率を超えて建築物を建てると、建築基準法に違反することになり、さまざまな問題が発生する可能性があります。
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こうした問題を避けるためには、計画段階で容積率を厳守した設計が重要です。大手メーカーは、豊富な経験と知識をもとに、建設予定地の正確な容積率・建ぺい率を計算して設計してくれるので、安心して家づくりを進めることができるでしょう。
容積率の緩和措置を有効活用して理想のマイホームを
今回は「容積率」の意味や計算方法、建ぺい率との違い、そして容積率に関わる用途地域や前面道路の幅員による影響などについて、わかりやすく解説しました。容積率には緩和規定がある一方で、制限が強化されるような規定もあり、用途地域だけで数値を判断するのは困難です。
家づくりには土地の特性が関わってくるため、専門知識をもつハウスメーカーの担当者や建築士などに相談することが大切です。緩和措置を有効活用しながら、より快適な家づくりを進められるとよいですね。