ビルトインガレージとは。実用的な間取りや後悔しないための注意点を解説
住宅の内部に駐車スペースを組み込む、ビルトインガレージ。「家の間取りはどうするの?」「後悔しないための注意点は?」など、ビルトインガレージ付きの家づくりに興味がある人もいるのではないでしょうか。平屋建てや木造注文住宅でも設置可能なのか気になる人もいるかもしれません。
今回の記事では、ビルトインガレージのメリット・デメリットや設置の注意点、20坪・30坪・40坪の間取りを考えるコツなどをご紹介します。
ビルトインガレージとは
ビルトインガレージとは、建物の一部分に車を格納するスペースを設け、車の出入り口にシャッターやドアを設置したガレージのこと。ビルトインガレージ付き住宅は、2階建てや3階建ての家に見られることが多いですが、広い敷地面積があれば平屋建てでも建築できます。
ビルトインガレージの特徴
ビルトインガレージの特徴は「大きな開口部」であり、車1台あたりの間口は3m〜3.5mが目安です。そのため、一般的な住宅よりも建築の工法に制約を受けやすく、建物を支えるための強度が必要となります。鉄筋コンクリート造が最も設計しやすいとされていますが、木造注文住宅でも、梁や柱を補強し強度を持たせることで建築可能です。
ビルトインガレージとインナーガレージとの違い
「ビルトインガレージ」と「インナーガレージ」は、どちらも住宅の内部に組み込まれるガレージのことを指すため、意味合いに違いはありません。
ハウスメーカーによって呼び方が異なるケースはありますが、ビルトインガレージやインナーガレージを設けた住宅は「ガレージハウス」と呼ばれるのが一般的です。
ビルトインガレージの6つのメリット
建物とは別に立てるガレージやカーポートと比べた際に、ビルトインガレージにはどのようなメリットがあるのでしょうか。具体的な6つのポイントを見ていきましょう。
<メリット1>風雨や紫外線、いたずらなどから愛車を守れる
ビルトインガレージは、車やバイクを雨風や紫外線から守ることで経年劣化を防ぎ、愛車を長くきれいに保つことができます。台風による飛来物による破損や、土埃・花粉による汚れから防げるのも嬉しいポイントです。
さらに、シャッターやドアを閉めておけば、車へのいたずらや盗難などの不要なトラブルに巻き込まれにくく、防犯面においても安心して生活できるでしょう。
<メリット2>天気が悪い場合でも、車の乗り降りが楽
ビルトインガレージは、建物の中に駐車場を作るため、天気が悪いときでも楽に乗り降りが可能です。傘をさす必要がないため、小さい子どもや高齢者がいるときにも雨に濡れず安心でしょう。
積雪の多い地域では、カーポートや車の雪下ろしの必要がなくなるため、ビルトインガレージを取り入れる家庭も増えています。
さらに、車からLDKまでの導線が短くなるよう間取りを工夫すれば、買い物帰りなどの荷物の運搬に便利です。ガレージからパントリーやキッチンへの荷物の持ち運びが楽になれば、片付けもスムーズになるでしょう。
<メリット3>土地が狭くても駐車スペースを確保できる
敷地面積が狭い場合、建物とは別に駐車スペースを確保することが難しいケースがあるでしょう。しかし、ビルトインガレージであれば、居住する建物の一部に車の格納スペースが組み込まれるため、土地が狭くても駐車スペースを保持できます。
また、ビルトインガレージを設ける場合、容積率の緩和措置を受けられるのも嬉しいポイントです。この緩和措置によって、都市部のような土地が狭い地域でも予想以上に広い家を建てられます。
容積率とは 敷地面積に対する建物の延床面積の割合を示す数値のこと。延床面積を都市計画法によって定められている容積率内に収めなければならない。 |
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<メリット4>趣味部屋や第2のリビングなど多様な活用ができる
ビルトインガレージは愛車を停めるスペースとしてだけでなく、書斎や趣味部屋、第2のリビングなど多様な使い方ができるのもメリットです。最近では、子どものプレイスペースとして水遊びやボール遊びを行ったり、シャッターを開けてBBQを楽しんだりと、家族にとって便利な場所として利用する方も増えています。
ビルトインガレージは、もともと敷地の広さに制限があるために取り入れる方が多いもの。アウトドア用品やタイヤの保管場所などにも使用でき、限られたスペースの有効活用も可能です。
季節や天候を問わずあらゆる活用ができることで、生活も豊かになるでしょう。
<メリット5>自然光や通風に有利な2階リビングの間取りにしやすい
ビルトインガレージの場合、どうしても1階スペースはガレージで削られることになります。2階以上に居住スペースを設けることで採光が確保でき、住宅密集地でも明るく開放的な2階リビングの間取りが実現できるでしょう。
さらに、ビルトインガレージであれば居住する建物の基礎と屋根をガレージと共有することができます。外付けでガレージを建てるよりも、基礎や屋根の費用を抑えられるでしょう。
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<メリット6>固定資産税が安くなる
ビルトインガレージ付きの住宅は、ビルトインガレージのない住宅と比較して固定資産税が安くなるケースが多いでしょう。建物全体の延床面積のうち、ビルトインガレージの床面積が5分の1までの広さなら、そのスペースは延床面積の計算外となる容積率の緩和措置が受けられるからです。
例えば、延床面積が100㎡で20㎡以下のビルトインガレージを作れば、駐車スペース部分は「延床面積に含まれず固定資産税の対象外となる」とされています。
ただし、ガレージの入り口に電動シャッターを付けるなどした場合、設備によっては固定資産税の評価対象となる可能性もあります。また、ビルトインガレージの評価方法は自治体によって異なるため、あらかじめ営業担当者に固定資産税についても相談しておくと安心です。
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ビルトインガレージの6つのデメリット
メリットが多いビルトインガレージですが、家づくりに取り入れる際はデメリットを把握しておくことも大切です。住み始めてから後悔ポイントにならないよう、詳細を確認していきましょう。
<デメリット1>建ぺい率に算入されるので、居住空間が削られる
ビルトインガレージを作る場合、ガレージの建築面積も建ぺい率や容積率の計算に算入されるため、居住スペースを削る必要が出てくる可能性を理解しておきましょう。建ぺい率とは、建物全体を上から見たときの最大面積のこと。ビルトインガレージのある1階部分の床面積が多かったり、平屋に設計したりする場合には大きく影響が出てきます。
敷地面積がそれほど広くない場合には、希望の間取りを採用できないといったケースも出てくるかもしれません。その場合、居住空間とのバランスを考えた住まいづくりを心がけたいものです。
例えば、ビルトインガレージを設置するために、2階にLDKを設置すると、荷物を持った移動など生活動線が不便になります。一方で、2階のリビングが広くなったり生活スペースの日当たりがよくなったりといったメリットも考えられます。
ビルトインガレージを取り入れる際には、将来にわたってどのような暮らしをしたいかを意識しながら、ライフスタイルに合った間取りを検討しましょう。
<デメリット2>ガレージによっては駐車の難易度が高くなる
ビルトインガレージは壁に囲まれた駐車スペースになるので、ガレージの広さや形状によっては、駐車が難しいと感じるケースがあります。今は小型車で駐車に問題ないと思っていても、将来大きな車に乗り換える可能性もあるかもしれません。
長いスパンでの利便性を考えてガレージ設計をすることが大切になるでしょう。
<デメリット3>建築費用が高くなる
ビルトインガレージ付き注文住宅のガレージ部分の建築費用は、家の規模やこだわりによって異なりますが、一般的な相場として一坪あたり50万〜90万円程度かかります。シャッターや換気扇など、付属設備のグレードが上がると更に費用は高額になるでしょう。
単純に駐車スペースとしての利用を考えているのであれば、ビルトインガレージの設置費用と、周辺の駐車場賃料と比較しながら、ビルトインガレージ付きの住宅を検討するとよさそうです。
<デメリット4>土地の条件によっては3階建てになることも
ビルトインガレージは、居室スペースが2階以上、土地の条件によっては3階建てになる場合があります。3階建てとなると、年を重ね体力が衰えることを見据えて、設計段階から階段の上り下りに配慮した間取りや設備を検討する必要があるでしょう。
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<デメリット5>広い間口部が必要な場合、建築工法の制約を受けやすい
車を2台以上格納するなど、間口の広いビルトインガレージを設ける場合、耐震性を強化するために、建物を建てる際の建築工法が限られてしまうことがあります。鉄骨造や鉄筋コンクリート(RC)造であれば耐久性に優れているため間口を広く取りやすいですが、木造住宅では注意が必要です。
木造でビルトインガレージを検討している場合には、耐震補強の技術が高いハウスメーカーを選ぶようにしましょう。
<デメリット6>音や振動が気になる
ガレージ内でエンジンをかけるだけでなく、暖機運転することも考えられるため、車やバイクの種類によってはエンジン音や振動が気になることがあるでしょう。ガレージの真上に寝室があると、車が出入りするたびに睡眠が妨げられるといったことも予想され、音や振動に考慮した間取りが重要です。
シャッター音も、音が大きい種類・素材によっては近所迷惑になるケースがあります。ビルトインガレージのシャッターを検討する際には、開閉時にどのくらいの音が出るのかをきちんと確認しましょう。
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