
建坪とは?「建築面積」「延床面積」「坪単価」との関係
「建坪とはどのような意味?」「建築面積や延床面積との関係は?」と疑問を持つ方もいるのではないでしょうか。家を建築する上で、建坪を正しく認識しておくことは大切です。
今回は、「建坪」の意味や計算方法に加え、理解しておきたい建築用語、建坪の計算で用いる「建築面積」をチェックするときのポイントなどをわかりやすく解説します。
建坪(たてつぼ)とは?家を真上から見た面積を坪単位に換算したもの
建坪とは、建物を真上から見たときの面積である「建築面積」を坪数に換算したものを指すのが一般的です。しかし、建築基準法で定められている言葉ではないため、建坪の定義はあいまいです。
施工会社によっては「1階床面積の坪数」という意味で使うケースもあるようです。「1階床面積」とは、その言葉通り1階の床面積を表しますが、床面積は壁や柱などの中心線で囲まれた部分の面積を指します。
この場合、「建築面積」の方が「1階床面積」より大きくなるため、坪数に換算すると認識のズレが生じトラブルの原因になる可能性も考えられます。
家づくりで失敗しないためには、依頼先へ「建坪」の定義をしっかり確認しておくことが大切になるでしょう。
建坪の計算例
ここでは建坪を「建築面積の坪数」と仮定し、建坪の計算方法をご紹介します。1平米(㎡)は0.3025坪に相当するため、計算式は以下の通りです。
建坪 = 建築面積(㎡) × 0.3025 |
例えば、建築面積が50平米(㎡)の場合
建坪 = 50㎡ × 0.3025 = 15.125 |
となり、建築面積が50平米の建坪は約15坪であると分かります。
なお、「坪」という単位は日本独自の面積を表す言葉です。戦後に国際単位系に統一されたことで、現在は住宅建築や設計における正式な書面では用いられなくなりました。
その反面、不動産業界などでは「建坪」の表記を使うケースがいまだにあります。不動産広告などで建坪の記載があった際には、以下の早見表を参考におおよその建築面積を把握しましょう。
建坪 | 建築面積 |
---|---|
約15坪 | 50㎡ |
約20坪 | 66㎡ |
約25坪 | 84㎡ |
約30坪 | 100㎡ |
約35坪 | 116㎡ |
約40坪 | 133㎡ |
建坪と一緒に理解しておくとよい広さを表す言葉
ここからは、家づくりを進めるうえで理解しておくとよい土地や建物などの広さを表す言葉をご紹介します。建坪との違いなども解説しますので、それぞれを正しく把握しましょう。
建築面積① | 建物を真上から見たときの面積 (一般的に、建坪と同様) |
延床面積②+③ | 全て階の床面積を合計した面積 |
敷地面積④ | 建物が建つ土地を真上から見たときの面積 |
施工面積 | 実際に施工した部分の面積 |
建築面積
建築面積とは、真上から建築物に光を当てたときに、地面に影となって映る面積(水平投影面積)のことを指します。壁や柱も含めた住宅全体の面積がカウントされます。
なお、建築面積は、建築基準法で定義されているため、ハウスメーカーや施工会社によって認識が異なることはありません。
延床面積
延床面積とは、各階の床面積を合計した面積のことです。壁や柱の中心線で囲まれた各空間の床面積の合計を示すため、居住スペースの広さと考えることができるでしょう。
建築面積が建坪であると仮定した場合、建坪と延床面積の違いは「面積を示す場所」といえます。建築面積はもっとも広い階の面積であるのに対し、延床面積は全ての階の床面積を合計した面積となります。
【関連記事】建築面積とは?延床面積の違いや、バルコニーは含まれるかなどを解説
敷地面積
敷地面積とは、建築物が建つ土地全体を真上から見たときの面積を表します。敷地面積と用途地域などの規定により、その土地に建てられる家の大きさが決まります。
敷地面積は土地の広さを表すのに対し、建坪は建物でもっとも大きい階の広さを表します。
【関連記事】用途地域とは?検索の仕方や13種類の特徴。住宅建築時のポイントも解説
施工面積
施工面積とは、建築時において実際に工事した部分の面積を指します。延床面積に含まれない、居住スペース以外の「玄関ポーチ」「バルコニー」「吹き抜け」など、すべての施工箇所を含むのが一般的です。そのため、施工面積は延床面積よりも大きくなる傾向にあります。
一方で、施工面積は建築基準法上において明確な定義がありません。正確に把握するためには、依頼するハウスメーカーなどへの確認が必要でしょう。
「建築面積」を算出するときの5つのポイント
建坪の算出に必要な「建築面積」は、建ぺい率を計算する際に必要な面積でもあります。建ぺい率とは、敷地面積(=土地面積)に対する建築面積の割合のこと。風通しや防災の観点から、地域ごとにどのくらいの面積の建物を建築できるか定められています。
建築基準法上、定められた建ぺい率をオーバーする建物を建築することはできないため、建築面積の把握が重要となります。
家づくりで重要な「建築面積」をチェックするときの5つのポイントは、以下の通りです。
1.1階より2階が広い場合は2階の面積が建築面積となる 2.吹き抜けは建築面積に含まれる 3.屋根のある「中庭」「カーポート」は建築面積に含まれる 4.庇(ひさし)やバルコニーが1m以下の場合は建築面積に含まれない 5.「出窓」は建築面積に含まれない場合もある |
ここからは、建築面積を正しく確認するため、それぞれのポイントについて詳しく見ていきましょう。
<ポイント1>1階より2階が広い場合は2階の面積が建築面積となる
建築面積は、建物を真上から見たときの外周で求めた面積(水平投影面積)のこと。一般的な住宅では1階部分の面積が該当しますが、1階より2階の面積が広い場合は、2階面積がその物件の建築面積となることを覚えておきましょう。
階数に関係なく、面積が最も広い階が建築面積に該当することを理解しておくことが大切です。
<ポイント2>吹き抜けは建築面積に含まれる
吹き抜けとは、1階部分の天井・2階部分の床を抜いた複数階にまたがる連続した空間のこと。吹き抜けは、天井または屋根があるため建築面積に含まれます。
しかし、各階の床面積を合計した延床面積を算出する場合は、例外を除き吹き抜け部分は算入されません。建築面積と延床面積の算入基準には違いがあるため、間違えないよう注意しましょう。
<ポイント3>屋根のある「中庭」「カーポート」は建築面積に含まれる
中庭やカーポートが建築面積に含まれるかは「屋根があるか」がひとつの基準となります。したがって、屋根のない中庭や駐車場であれば建築面積に含まれません。しかし、屋根のついた中庭やカーポートは建築面積に含まれます。
一方で、カーポートや外に開放されたポーチなどにおいて、高い開放性を認められる場合は算入されないケースもあるため、詳しい内容はハウスメーカーなどに確認ください。
<ポイント4>庇(ひさし)やバルコニーが1m以下の場合は建築面積に含まれない
庇やバルコニーといった建物の壁や柱よりも外側に突き出している部分は、建築面積に含まれるのか気になる方もいるでしょう。
なお、庇とは、建物の窓や玄関などの開口部に設置される屋根のこと。バルコニーは、住宅から外に張り出した屋根のない2階以上に設けられるスペースのことを指します。
建築基準法によると、庇やバルコニーは突き出ている部分が1m以下の場合は建築面積に含まれません。ただし、1m以上突き出している場合は、突き出している部分の先から1m後退したところまでが建築面積に含まれます。
<ポイント5>「出窓」は建築面積に含まれない場合もある
建物から突き出るような「出窓」は、建築面積に含まれないケースと含まれるケースがあります。一般的に出窓の形状が外壁面から突出した出窓と認められる場合は、建築面積に含まれません。具体的な内容は以下の通りです。
建築面積に含まれないケース
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建築面積に含まれるケース
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他にも、出窓の形状によっては建築面積に含まれるケースがあります。出窓の設置を検討する場合は、どのような形状にするのか詳細を確認し、建築面積に「含まれる」「含まれない」についても認識を合わせておくことが大切でしょう。
また住宅を建てる際は、建ぺい率に加えて容積率などの規制があります。容積率などの割合によって建てられる家の大きさが異なるため、あらかじめ建てたい土地の建ぺい率や容積率を確認しておくことが重要でしょう。
建ぺい率や容積率について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
【関連記事】建ぺい率とは?計算方法や容積率との違いをわかりやすく解説!
参考:e-Gov法令検索「建築基準法施行令」
建坪と坪単価との関係で押さえておくべき注意点
建坪を理解する上で坪単価も気になる方もいるでしょう。最後に、建坪と坪単価との関係で押さえておくべき注意点をご紹介します。
坪単価とは延床面積1坪あたりの建築費
坪単価とは、延床面積1坪当たりにかかる建築費のことを指します。つまり、坪単価を算出する際、建坪ではなく建物全ての床面積の合計である延床面積を使うため、計算に使用する言葉の意味をはき違えないように注意しましょう。
坪単価の算出方法は以下の通りです。
坪単価 = 建物の本体価格 ÷ 延床面積(㎡) |
坪単価に含まれる内容はメーカーによって異なる
住宅を購入する際、同じ建坪の物件でも「坪単価」に違いが出てくるケースがあります。違いが生じる要因は、主に以下の2つです。
【1】施工会社によって、建物の本体価格に含まれる内容が異なる 【2】家の形状やグレードによる違い |
まず、施工会社によって、建物の本体価格に含まれる内容が異なる場合があることを知っておきましょう。本体価格に含まれる項目は、各メーカーや施工会社で決めることができます。一般的には、基礎工事代や大工さんの手間賃のほか、設備や内装、外壁、建具など変動しない建物のみの価格を本体価格と表します。
しかし施工会社によっては、付帯工事と呼ばれる地盤調査費用や設計料、外構費などを含める場合もあります。本体価格が高くなれば、その分坪単価も高くなるでしょう。
また、家の形状やグレードによる違いも、坪単価が変わる要因となります。家の形が複雑であったり設備などのグレードが高かったりすると、建築や設備費用が増え本体価格も上がります。すると、必然的に坪単価も上がることになるでしょう。
施工会社を検討する際、坪単価を一つの目安にしている方もいるかもしれません。しかし、同じ建坪や延床面積であっても、坪単価は価格に含まれる内容に違いがあります。各施工会社ごとに「本体価格に何が含まれるのか」「設備のグレードに違いはあるか」といった詳細を確認し比較することが大切になるでしょう。
【関連記事】坪単価の計算方法。坪単価の変動ポイントを知って注文住宅の予算を検討!
戸建て住宅の建坪平均はどのくらい?
一戸建て住宅を検討している方の中には、平均的にどのくらいの建坪で建築しているのか気になる方もいるでしょう。国土交通省の「令和5年度 住宅市場動向調査報告書」によると、注文住宅と分譲戸建て住宅の平均延床面積は以下のとおりとなります。
全国(建坪) | 子育て世帯(建坪) | |
---|---|---|
注文住宅 | 121.3㎡(約36.7坪) | 120.9㎡(約36.5坪) |
分譲戸建住宅 | 121.9㎡(約36.9坪) | 116.0㎡(約35坪) |
※調査地域は、注文住宅は全国、分譲戸建住宅は三大都市圏での調査結果