
低炭素住宅とは?認定基準やメリット・デメリット、申請時の流れを解説
低炭素住宅を建てるメリット・デメリットや認定基準、補助金の有無について知りたい方もいるのではないでしょうか。住宅ローン控除や容積率の緩和など、優遇措置が気になることもあるかもしれません。今回は低炭素住宅の特徴や申請方法などについて紹介します。家づくりの参考にしてください。
低炭素住宅とは?
低炭素住宅とは、二酸化炭素の排出を軽減する対策が取られている、環境に配慮した住宅のことです。
2012年、低炭素・循環型社会の構築を図り都市の低炭素化を促進するために「都市の低炭素化の促進に関する法律(通称:エコまち法)」が制定されました。それにより定められたのが「低炭素建築物の認定制度」です。
低炭素住宅として認定されるには申請手続きが必要で、認定は所管行政庁(都道府県、市又は区)が行います。
低炭素住宅は、容積率や税金面などのさまざまな優遇措置を受けられる点が魅力です。ただし、認定制度の対象となるのは、市街化区域等内に建築される建物に限られる点に注意しましょう。
低炭素住宅の認定基準
低炭素住宅として認定されるには、次の条件を満たす必要があります。
- 省エネ法の省エネ基準に比べ、一次エネルギー消費量が△20%以上となること
- 再生可能エネルギー源を利用するための設備が設けられていること
- 省エネ効果による削減量と再エネ利用設備で得られるエネルギー量の合計値が、基準一次エネルギー消費量の50%以上であること(戸建て住宅のみ)
- その他の低炭素化に資する措置が講じられていること
- 資金計画等が適切なものであること
以下で、主な認定基準の内容を説明します。
省エネ性能がZEH水準であること
低炭素住宅の認定基準の一つに、「ZEHと同等程度の省エネ性能を満たしていること」が挙げられます。「ZEH(ゼッチ)」とは、年間の一次エネルギー消費量の正味ゼロまたはマイナスの建築物を指す言葉です。
住宅の場合、省エネ法の「省エネ基準」に比べて一次エネルギー消費量が、△20%以上であることが必要です。また、断熱性能等の指標となる「外皮性能」が誘導基準に適合していることも求められます。
ここで言う「一次エネルギー消費量」とは、住宅で使用する設備機器(冷暖房や給湯、照明など)のエネルギーを熱量に換算した値のことです。一次エネルギー消費量が少ないほど、省エネ性能が高いと言えます。
参考:国土交通省「エコまち法に基づく低炭素建築物の認定制度の概要」
再生可能エネルギー利用設備の導入
低炭素住宅には、「再生可能エネルギー利用設備の導入」も必要です。例として、以下のような設備が挙げられます。
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創エネ量と省エネ量との合計が、基準一次エネルギー消費量の50%以上
戸建住宅の場合のみ、再生可能エネルギー利用設備で得られる創エネ量と省エネ量との合計が、基準一次エネルギー消費量の50%以上であることも認定基準となっています。
低炭素化に資する措置(選択的項目)
上記に加え、下記の9項目のうち、いずれかの措置を講じることが必要です。
- 節水対策(2項目)
節水型機器の採用・雨水の利用などの節水対策
- エネルギーマネジメント(2項目)
エネルギー使用量のみえる化など
- ヒートアイランド対策(1項目)
敷地や屋上、壁面の緑化など、ヒートアイランド抑制の取り組み
- 建築物(躯体)の低炭素化(3項目)
住宅劣化を軽減するための措置、木造住宅であるなど
- V2H充放電設備の設置(1項目)
住宅から電気自動車などに電気を供給、または電気自動車から住宅に電気を供給できるような設備を有している
これらに該当しない場合でも、標準的な建築物と比べて、低炭素化に資する建築物として管轄行政庁が認めるものは、認定基準を満たしたものとして認められます。
「低炭素住宅」と「長期優良住宅」の違い
長期優良住宅とは、耐震性や断熱性など、長期にわたり快適に住み続けられる構造・設備が備わっている住宅のことです。
低炭素住宅と長期優良住宅は認定の基準が異なりますが、一つの住宅で両方の認定を受けることも可能です。その場合、このあと説明する「税制優遇」については、いずれかの認定を選択して適用することとなります。
ただし、「所得税」の特例については低炭素建築物の認定、「固定資産税」の特例については長期優良住宅の認定というように、税目が異なる場合は併用が可能です。
参考:国土交通省「低炭素建築物認定制度 関連情報:よくある質問」
参考:国土交通省「都市の低炭素化の促進に関する法律(略称:エコまち法)」
低炭素住宅のメリット
<メリット1>光熱費が抑えられる
低炭素住宅は、省エネ性能が高いため、電気代やガス代などの光熱費を安く抑えられます。加えて、選択的項目のうち「節水対策」を選び、節水型の便器や食洗器などを導入した場合は、水道代の節約も可能です。長く住めば住むほど、そのメリットを享受できる住宅だと言えるでしょう。
<メリット2>容積率が緩和される
低炭素住宅の認定を受けた建物は、容積率が一般の住宅より緩和される点もメリットです。低炭素化に資する設備について、通常の建築物の床面積を超える部分は、述べ面積の20分の1を限度として、容積率算定の基礎となる床面積に算入されません。
参考:国土交通省「エコまち法に基づく低炭素建築物の認定制度の概要」
<メリット3>住宅ローン控除など税金の優遇措置がある
優遇措置1:住宅ローン控除
低炭素住宅の場合は、控除対象借入限度額が一般住宅よりも2,000万円拡充され、最大5,000万円までが住宅ローン控除の対象となります。
2022年1月1日から2025年12月31日までに入居した方が対象です。
居住年 | 借入限度額 | 控除期間 | 控除率 | 最大控除額 | |
---|---|---|---|---|---|
新築住宅 買取再販 | 2022年から 2023年まで | 5,000万円 | 13年 | 0.7% | 455万円 |
新築住宅 買取再販 | 2024年から 2025年まで | 4,500万円 | 13年 | 0.7% | 409.5万円 |
既存住宅 | 2022年から 2025年まで | 3,000万円 | 10年 | 0.7% | 210万円 |
優遇措置2:登録免許税
登録免許税とは、不動産登記の手続きを行う際にかかる税金です。もともと軽減措置がありますが、低炭素住宅はさらに税率が低くなります。
2024年3月31日までに取得した方が対象です。
登記の種類 | 本則 | 軽減措置(一般住宅) | 軽減措置(低炭素住宅) |
---|---|---|---|
所有権保存登記 | 0.4% | 0.15% | 0.1% |
所有権移転登記 | 2.0% | 0.3% | 0.1% |
※2022年度の税制改正により、適用期限は2024年年3月31日まで延長されました。
<メリット4>フラット35 S(金利Aプラン)を利用できる
低炭素住宅は、「フラット35 S」(金利Aプラン)の対象です。「フラット35 S」とは、一定の条件を満たす住宅を取得する場合に、フラット35の借入金利が一定期間引き下げられる制度です。低酸素住宅は金利Aプランの対象で、借入当初から10年間の借入金利が0.25%引き下げられます。
参考:住宅金融支援機構「【フラット35】Sの技術基準の概要」
<メリット5>補助金を受けられるケースがある
低炭素住宅に認定されると、「地域型住宅グリーン化事業」の補助金対象となる場合があります。「地域型住宅グリーン化事業」とは、低炭素住宅や長期優良住宅など、省エネルギー性や耐久性などに優れた住宅を、新築・改修する場合に補助金の支給を受けられる制度です。ただし、あらかじめ国に採択された施工事業者グループによって建築された住宅に限ります。
低炭素住宅のデメリット
低炭素住宅には、デメリットもあります。低炭素住宅を検討するときに、どのような点に注意すればよいのか確認しておきましょう。
<デメリット1>認定基準を満たすための導入費用がかかる
低炭素住宅の認定基準を満たすためには、一般的な住宅に比べて建築費用が高くなる傾向にあります。ただし、光熱費を抑えられる住宅性能や税制の優遇措置をふまえると、長期的にはお得になる可能性も。建築前に費用シミュレーションを行っておくことをおすすめします。
<デメリット2>「市街化区域」でないと認定申請ができない
低炭素住宅の認定を申請できるのは、市街化区域内に建築される建物に限定されています。「エコまち法」が、都市部における低炭素化促進を目的としているためです。低炭素住宅の認定を検討しているのであれば、マイホームの候補地が市街化区域かどうか、事前に確認しておきましょう。
低炭素住宅の申請手続き
低炭素住宅の認定には、申請が必要です。建築着工の前に、エコまち法で定められた申請書に、必要な添付図書(正本及び副本)を添えて、所管の行政庁に提出することになります。
必要書類
申請に必要な資料は次のとおりです。
- 認定申請書(規則様式第5)
- 添付図書
○設計内容説明書
○各種図面・計算書(1次エネルギー消費量の計算書、外皮平均熱貫流率、冷房機の平均日射熱取得率、PAK計算表等)
○その他必要な書類等(技術的審査の適合証など行政庁が必要と認める図書)
○建築確認に関する申請図書(法第54条委より認定申請と併せて建築確認を行う場合は、建築確認の申請図書を提出)
正本1部、副本1部を用意して、それぞれ添付図書を添えて行政庁へ提出します。
参考:国土交通省「エコまち法に基づく低炭素建築物の認定制度の概要」