
エコ住宅で補助金を受ける基準や条件は?設備事例やデメリットも解説
エコ住宅とはなにか、補助金制度やメリット・デメリットについて知りたい方もいるのではないでしょうか。今回は、エコ住宅の種類や利用できる補助金・税制優遇制度のほか、太陽光発電など採用されることの多い設備について、詳しく解説します。注文住宅などを購入する際の参考にしてみてください。
エコ住宅の定義と種類
日本では現在、温室効果ガスの排出削減や、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」の実現を目指し、地球温暖化対策の取り組み強化を図っています。その中で注目されているのが、エネルギー消費の約3割を占める「建築物分野での省エネ対策」です。まずは、エコ住宅の定義や種類を確認していきましょう。
エコ住宅とは、自然エネルギーを活用した環境に優しい住宅
エコ住宅とは、住まいの気密性や断熱性を高め、家庭の消費エネルギーを抑えた住宅のことを指します。エコ住宅は地球温暖化問題に対する対策の一つとしての位置づけであり、建築を促すために補助金制度も設けられています。
なお、一般的にエコ住宅と呼ばれる住まいは、各省庁によって呼び名や定義が異なります。
環境省では「エコハウス」と呼び、地域の気候風土や敷地の条件、住まい方に応じて自然エネルギーを最大限に活かし、環境に負担をかけない方法で建てられた住宅と定義しています。
国土交通省と経済産業省では「省エネ住宅」と呼び、高気密・高断熱等により暖冷房のエネルギー消費を抑えることのできる住宅として、省エネ基準を定めています。
それぞれ呼び名は違うものの、同じような目的をもった住宅と言えるでしょう。
エコ住宅の種類。基準や条件を解説
エコ住宅と一口に言っても、さまざまな種類があります。具体的にどのようなエコ住宅があるのか、住宅ごとの定義や基準を解説します。
【長期優良住宅】長期に渡り安心して快適に暮らせる住宅
長期優良住宅とは、長期にわたり良好な状態で使用することのできる住宅のことです。「長期に使用するための構造及び設備を有している」「一定面積以上の住戸面積を有している」など、定められた基準を満たす必要があります。各自治体の所管行政庁に認定申請を行えば、長期優良住宅として認定を受けることができます。
参考:国土交通省「長期優良住宅のページ」
【認定低炭素住宅】CO2抑制を目的に低炭素化に資する措置を講じた住宅
認定低炭素住宅とは、建物内における生活や活動に伴って発生するCO2を抑制するための低炭素化に資する措置を講じた住宅を指します。「都市の低炭素化の促進に関する法律(エコまち法)」の中で、基準が定められています。
具体的には、省エネ法の省エネ基準に比べ、一次消費エネルギーをマイナス10%以上とするほか、節水対策やヒートアイランド対策といった低炭素化に資する措置を行うことなどが要件となります。認定を受けるには、所管行政庁への申請が必要です。
参考:国土交通省「低炭素建築物認定制度関連情報」
【ZEH(ゼッチ)住宅】エネルギー収支をゼロまたはプラスにする住宅
ZEH(ゼッチ)とは「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の略で、大幅な省エネルギーの実現した上で、再生可能エネルギー等を導入し、年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとなることを目指した住宅のことです。国においても、政府目標を定めたロードマップを策定し、ZEH住宅普及を推進しています。
参考:経済産業省資源エネルギー庁「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)に関する情報公開について」
【LCCM(エルシーシーエム)住宅】CO2収支をマイナスにする住宅
LCCM住宅とは「ライフ・サイクル・カーボン・マイナス」の略で、ライフサイクルを通じてのCO2収支をマイナスにする住まいのことです。住宅建設時だけでなく運用時や廃棄時においてもCO2削減に取り組み、さらに太陽光発電などにより再生可能エネルギーを創出することで、CO2の収支のマイナスを目指します。
LCCM住宅は、長寿命かつ一層のCO2削減を目標とする上で、最終的に行き着く住宅のカタチと言えるでしょう。定められ要件を満たすことで、認定を受けられます。
参考:国土交通省「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)、LCCM(ライフ・サイクル・カーボン・マイナス)住宅関連事業(補助金)について」
【性能向上計画認定住宅】建築物省エネ法の基準を満たす住宅
性能向上計画認定住宅とは、「建築物省エネ法」で制定された基準を満たす住宅のことを指します。エネルギーの消費性能が省エネ基準を超え、かつ、国で定める基準に適合するものが対象です。都道府県または市区町村から認定れれば、容積率の特例を受けることができます。
参考:一般社団法人住宅性能評価・表示協会「性能向上計画認定とは」
参考:国土交通省「建築物省エネ法について」
エコ住宅建築で受けられる補助金
エコ住宅の建築には、補助金を利用できるケースが多いです。ただし、住宅の種類ごとに受けられる補助金は異なるため、ハウスメーカーや工務店などの施工会社に相談しながら、補助金等の申請準備を進められるとよいでしょう。ここでは、どのような補助金があるのか解説します。
こどもエコすまい支援事業【新設】
従来のこどもみらい住宅⽀援事業(2022年11月末で終了)に代わり、こどもエコすまい支援事業が新たに創設されました。子育て世代や若者夫婦世帯を対象に、高い省エネ性能を満たした新築住宅に対して100万円が交付される制度です。
従来のこどもみらい住宅支援事業では、住宅の省エネ性能によって段階的に3つの補助金額が設けられていました。しかし、新設されたこどもエコすまい支援事業は、補助金対象となる住宅の省エネ基準が「ZEH住宅」のみで、支給限度額が一律100万円となっています。予算の上限に達すると早めに制度が終了することがあるため、手続きスケジュールを早めに確認しておくと安心でしょう。
参考:こどもすまい支援事業事務局「こどもエコすまい支援事業」
ZEH補助金制度
ZEH住宅を購入する場合、ZEHの性能によって1戸あたり55万円から最大112万円の補助金が交付されます(2023年度)。ただし、補助金を申請する場合には、SII(一般社団法人 環境共創イニシアチブ)に登録された「ZEHプランナー/ビルダー」に設計・建築の依頼、または販売する住宅でなければなりません。
公募期間内に申請を行い、審査を受ける必要があるため、間に合わないといったトラブルのないよう、早めにスケジュールを確認しておきたいですね。
参考:一般社団法人 環境共創イニシアチブ「2023年の経済産業省と環境省のZEH補助金について」
【関連記事】ZEH住宅とは。メリットや補助金の条件、ハウスメーカーで建てる魅力を解説
給湯省エネ事業
給湯省エネ事業とは、2030年度におけるエネルギー需給の見通しの達成に向け、高効率給湯器の導入支援を行い普及拡大を図る制度です。設置する住宅は、新築およびリフォームが対象です。設置する給湯器は、エネファームやハイブリット給湯機、エコキュート、補助金額は最大で15万円です。
このほか、各地方自治体において独自の補助金、助成金制度を設けているケースが多いです。建築予定地の自治体ホームページを確認してみるとよいでしょう。なお、国の制度と併用できない場合もあるため、内容を十分に確認しましょう。
参考:経済産業省資源エネルギー庁「給湯省エネ事業」
エコ住宅に対する贈与税などの税制優遇制度
エコ住宅を購入した場合には、税制面でも優遇措置を受けられます。ここからは、エコ住宅取得によって得られる優遇措置の制度を紹介します。
住宅ローン減税(控除)の適用
銀行からの融資を利用してマイホームを購入した場合に利用できるのが住宅ローン減税です。一定の要件を満たせば、年末のローン残高の0.7%を所得税や住民税から13年間にわたって控除されます。
住宅取得において税制優遇が大きい制度である一方で、2024年以降に新築の建築確認を受けた一般的な住宅は、住宅ローン減税の制度は適用されません。しかし、長期優良住宅や低炭素住宅などのエコ住宅を建築した場合は、住宅ローン減税の対象となります。
さらに、エコ住宅であれは、住宅ローンを利用せず自己資金のみで取得する場合でも、所得税が控除される「投資型減税制度」を利用できます。
参考:国土交通省「住宅ローン減税」
参考:国土交通省「令和4年 投資型減税(所得税)(新築)」
贈与税幅の拡大
親族等から住宅取得資金の贈与を受ける場合、一定の要件を満たしたエコ住宅の建築は、従来の住宅に比べ贈与税の非課税限度額が大きくなります。
さらに、住宅や土地を取得する際に必要となる「登録免許税」や「固定資産税」、「不動産取得税」などの優遇制度もあります。詳しい内容は国税庁のホームページ等で確認しておくとよいでしょう。
参考:国税庁「No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」
【関連記事】住宅購入時の贈与税は最大3000万円が非課税に!申告方法や条件とは
エコ住宅へのリフォームで活用できる補助金制度もある
省エネ改修などエコ住宅を目指したリフォーム工事を行う際に活用できる補助金、助成金制度もあります。省エネリフォームを支援する2つの制度を紹介します。
既存住宅における断熱リフォーム支援事業
既存住宅における断熱リフォーム支援事業とは、省エネ効果が見込まれる高性能建材である断熱材や断熱窓などを用いたリフォーム事業です。家全体だけでなく、居間のみといった部分断熱にも対応しています。リフォームの内容で異なりますが、120万円以上の補助を受けられるケースもあります。
参考:公益財団法人北海道環境財団「【全国対象】既存住宅における断熱リフォーム支援事業」
先進的窓リノベ事業
先進的窓リノベ事業とは、既存住宅における窓の断熱性能を高めることを目的とした事業です。窓の断熱改修において、一戸あたり最大で200万円までの補助金が交付されます。
なお、先述した「こどもエコすまい支援事業」はリフォームも対象です。エコ住宅設備の設置以外にもさまざまな項目が対象となるため、リフォームを検討している方は確認しておくとよいでしょう。