土地や建物の広さを表す「坪」という単位は、家づくりで必ず出会う基礎知識です。しかし、この「坪」を正しく理解していないと、「思っていたより狭かった」「坪単価の計算ミスで予算がオーバーした」といった後悔につながりかねません。
本記事では、一坪が正確に何平米(㎡)、何畳にあたるのかや、住みやすい家の広さを考えるときの目安を解説。さらに、30坪の土地を最大限に活かしたハウスメーカーの実例もご紹介します。
一坪の正確な広さと定義
「坪」とは、日本独自の単位で面積を表す言葉です。これは「尺貫法」と呼ばれる日本古来の計算方法のなかで、面積を示す単位として用いられてきました。測地用の慣用単位でもあり、旧土地台帳や旧家屋台帳でも見られます。
戦後に尺貫法は廃止となり、国際単位系(SI単位系)に統一されたことで、現在は住宅建築や設計における正式な書面では「坪」は用いられなくなりました。しかし、現在でも土地や建物において「一坪〇〇万円」といったように使われるケースが多くあります。
家づくりにおいて失敗しないためにも、まずは一坪の広さを正しく理解することが大切です。ここからは、一坪を平米(㎡)や畳数に換算したときの正確な大きさを解説します。
一坪は何平米(㎡)?正確な換算値と計算式
一坪を平米(㎡)にすると、約3.31㎡です。具体的には、一坪は1辺が約1.82mの正方形のため、平米に換算すると「一坪≒1.82m × 1.82m = 3.3124㎡ ≒ 3.31平米(㎡)」となります。
なお、「一坪=3.31㎡」はあくまでおおよその数字であり、坪数が大きくなるほど、平米数に誤差が生まれてしまうため、不動産取引などで正確な換算を行う際は、以下の計算式が用いられます。
例えば、30坪の土地の正確な平米数は、30坪 ÷ 0.3025 ≒ 99.17㎡となります。
一坪は何畳?地域による畳のサイズの違い
一坪を畳数に換算すると約2畳になります。「畳1畳=畳一枚分」と考えるのが一般的ですが、実は地域や建物の種類によって畳一枚の正確な大きさが異なることを知っておきましょう。
▼地域などにおける畳の大きさの違い
名称
| 畳一枚の大きさ
| 面積(概算) |
|---|
江戸間(東日本エリア)
| 176.0cm × 横 87.8cm
| 1.54㎡ |
中京間(東海エリア)
| 182.0cm × 横 91.0cm
| 1.65㎡ |
京間(西日本エリア)
| 191.0cm × 横 95.5cm
| 1.82㎡ |
団地間(共営住宅・アパート・マンションなど) | 170.0cm × 横 85.0cm
| 1.44㎡ |
不動産取引における統一基準
上記のように地域によって畳の大きさは違いますが、不動産広告などで混乱を避けるため、「不動産の表示に関する公正競争規約(表示規約)」においては、居室等の広さを畳数で表示する場合、畳一枚当たりの広さは、1.62㎡(各室の壁芯面積を畳数で割った数値)以上と定めれています。
この統一された数値を踏まえると、一坪(3.31平米)は、約2畳と捉えるのが、家づくりにおける一般的な認識となります。
1坪・5坪・10坪をイメージ!身近なもので広さを体感
坪数や平米数という数字だけでは、実際のイメージがしづらいものです。そこで、身近な場所や物に換算して、坪数の広さをイメージしてみましょう。
以下の換算表とあわせて、間取り検討に役立ててください。
| 坪数 | 平米数(概算) | 畳数(統一基準) | 身近なものでのイメージ |
|---|
| 1坪 | 約3.31㎡ | 2畳 | 規格サイズのユニットバスや玄関+廊下の一部 |
| 5坪 | 約16.53㎡ | 10畳 | 軽自動車2台分の駐車スペース、あるいは広いリビングの一部 |
| 10坪 | 約33.10㎡ | 20畳 | 夫婦2人での生活が可能なワンルームマンションの延床面積程度 |
| 30坪 | 約99.17㎡ | 60畳 | 一般的な注文住宅の延床面積(3~4人家族の目安) |
参考:不動産公正取引協議会連合会「不動産の公正競争規約 」
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坪単価の「落とし穴」!正しい見方と計算方法を解説
注文住宅の検討を始めると、必ず目にする「坪単価」とは、土地や建物の床面積一坪当たりの価格や建築費を指す用語です。特に建物の坪単価は、施工会社を比較する際の重要な目安となります。
ここからは、坪単価の基本的な計算方法から、住宅会社を比較検討する際に注意すべき正しい見方を解説します。
坪単価の計算方法と相場感
建物の坪単価を算出するための基本的な計算式は以下の通りです。
例えば、本体価格3,000万円で延床面積が30坪だった場合、計算式は3,000万円÷30坪となり、坪単価は100万円と分かります。また、坪単価は同じ仕様や設備であっても、延床面積が小さくなるほど相対的に高くなる傾向があります。これは、床材や壁材の費用が減っても、本体価格の3割程を占めるキッチンやお風呂などの設備機器の費用は変わらないためです。
相場感に関しては、採用する工法や設備グレードなどによって大きく異なります。一般的に、ローコスト系の住宅会社は低めに、高品質で保証が充実している大手ハウスメーカーは高めに設定される傾向があります。
ハウスメーカーで異なる坪単価の基準
坪単価は資金計画において大きな落とし穴となりかねない要素です。その最大の原因は、基準が施工会社によって異なる点にあります。坪単価を比較する際は、まず以下の2つの面積基準のどちらを採用しているかを確認することが大切です。
- 延床面積(全ての階の床面積の合計):一般的に広く使われる正式な面積
- 施工床面積(延床面積に加え、玄関ポーチやバルコニー、ロフトなども含めた面積):延床面積に含まれない工事部分を加えているため、数字上、坪単価が安く見える傾向がある
|
同じ仕様・設備であっても、延床面積ではなく施工床面積で算出している会社の方が坪単価が安く見えるため、単純な数字の比較だけで判断することは避けるべき。仕様や設備が同一かを確認するだけでなく、坪単価の算出方法を把握し、同じ条件で比較検討していくことが重要です。
坪単価に含まれない「別途工事費」の具体例
坪単価の正しい見方において、もう一つ重要なのが「坪単価に何が含まれていないか」を確認することです。坪単価の計算に用いる本体価格には、一般的に建物本体の工事費用のみが含まれており、総費用全体の約3割を占める別途工事費や諸費用は含まれていません。これを見落とすと、契約後に予算が大幅に膨らむことになるので注意が必要です。
以下の項目は、別途工事費として本体価格に含まれないケースが多いため、必ず見積もりで確認しましょう。
▼別途工事費の代表例
- 土地の整備費用:地盤改良工事費、古家解体費用
- 屋外設備費用:外構工事費用(駐車場、庭など)、電気・ガス・水道の引き込み工事費
- その他:エアコン、カーテン、照明器具の一部
|
失敗しない土地選び!坪数と建築可能面積の関係

坪数と平米数の換算を理解した上で、次に重要なのが「土地の坪数と、実際に建てられる家の坪数は違う」という点です。土地広告で「40坪」と書かれていても、家の広さ(延床面積)が40坪になるとは限らないということです。これを理解していないと、購入後に希望のサイズの家が建てられないとなる可能性があります。
土地と建物の「坪」の違い:敷地面積、延床面積、建築面積
家づくりにおいて「坪」という単位を使うとき、それは以下の3種類の面積を指すため、混乱しないように注意が必要です。
| 敷地面積(土地の坪数) | 土地広告に記載されている「〇〇坪」のこと、土地の水平投影面積全体を指す |
| 延床面積(建物の坪数) | 建物の各階の床面積を合計した面積で、建物そのものの広さを表す。坪単価の計算に使われる |
| 建築面積 | 建物を真上から見たときの水平投影面積(建物の最も広い部分)。一般的に1階部分の面積とほぼ同じだが、2階のほうが広い場合は2階の面積が採用される |
土地探しでは「敷地面積」ばかりに目が行きがちですが、実際に家のサイズを決めるのは、次の項目で解説する「建築面積」と「延床面積」の上限です。
【関連記事】建築面積とは?延床面積の違いや、バルコニーは含まれるかなどを解説
【関連記事】建坪とは?「建築面積」「延床面積」「坪単価」との関係
建ぺい率・容積率とは?土地の坪数を最大限に活かす方法
土地の坪数に対して、建てられる家のサイズを制限している2つの規制があります。それは、土地の面積に対して、建物を真上から見たときの広さ(建築面積)の上限を定めた「建ぺい率」と、土地の面積に対して、建物の各階の床面積の合計(延床面積)の上限を定めた「容積率」です。
土地広告に記載された坪数が「敷地面積」であるのに対し、この2つの規制によって実際に建てられる家の広さが決まります。このルールを理解し、土地の坪数以上の延床面積を確保する方法について、ハウスメーカーに相談することが大切です。
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【関連記事】容積率とは?制限や緩和、計算方法をわかりやすく解説
住みやすい家の広さの目安
「一坪の大きさは理解できたけれど、どのくらいの広さの家を建てれば快適に暮らせるのだろう?」と悩んでいませんか?
国土交通省は、住生活の安定や向上を促進するために「住生活基本計画」を発表しています。この計画では、居住人数に応じた最低限必要な面積や豊かな生活を送るために推奨される面積が提示されています。ここからは、国土交通省の資料を参考に、最適な住宅の広さの目安を見ていきましょう。
夫婦や子育て世帯に最適な「居住面積水準」とは
国土交通省では、居住面積の目安を「最低居住面積水準」と「誘導居住面積水準」の2つの水準に分けています。特に、豊かな住生活の実現を前提とする「誘導居住面積水準」は、新築の広さを検討する上での重要な指標。都市部を中心を想定した「都市居住型」と、郊外及び都市部以外の地域を想定した「一般型」の2種類に区分けされています。
基準1:健康で文化的な生活のベースライン「最低居住面積水準」
| 単身者 | 25㎡(約7坪・約14畳) |
| 2人以上の世帯 | 10㎡ × 世帯人数 + 10㎡ 例:大人2人の場合 10㎡ × 2人 + 10㎡ = 30㎡ (約9坪・約18畳) |
基準2:豊かな住生活を実現するための「誘導居住面積水準」
| 都市居住型(都心マンションなど) | - 単身者:40 ㎡(約12坪・約24畳)
- 2人以上の世帯: 20㎡ × 世帯人数 + 15㎡
例:大人2人の場合 20㎡ × 2人 + 15㎡ = 55㎡(約16坪・約32畳)
|
| 一般型(郊外戸建住宅など) | - 単身者:55 ㎡(約16坪・約32畳)
- 2人以上の世帯: 25㎡ × 世帯人数 + 25㎡
例:大人2人の場合 25㎡ × 2人 + 25㎡ = 75㎡(約22坪・約44畳)
|
なお、世帯人数において子どもは、3歳未満は0.25人、3歳以上6歳未満は0.5人、6歳以上10 歳未満は0.75人として算定します。
夫婦2人世帯なら25坪程度・子育て家庭なら30坪超が快適な目安
国土交通省の資料をもとに、郊外でのゆとりのある戸建住宅(一般型)を想定して考えると、住みやすい居住面積は「夫婦2人世帯は25坪程度(約83㎡)」「子育て世帯(子ども1人から2人想定)は30坪以上(100㎡超)」が一つの目安となります。
特に、戸建て住宅はマンションに比べてゆとりのある空間や広い庭を求める傾向にあります。子育て世代が長期的に快適な空間を実現するためには、誘導居住面積水準の「一般型」を目安に30坪以上の延床面積があるとよいでしょう。
【実例】ハウスメーカーで叶う!30坪の家づくり
「30坪は狭いのではないか?」と不安に感じる方もいるかもしれません。しかし、家づくりのプロであるハウスメーカーは、限られた坪数でも広々とした理想の暮らしを実現しています。ここからは、30坪前後という広さにおいて、ハウスメーカーがどのようなアイデアを詰め込んでいるのか、具体的な実例を通じてご紹介します。
【実例紹介1】土間と一体のLDKと屋上。30坪で多様な過ごし方を実現
延べ床面積31.2坪の実例では、土間と一体のLDKと屋上を確保し、敷地面積を超えた多様な過ごし方を可能にしました。
オープンな空間設計が実現できる背景には、ハウスメーカーの持つ高い技術力があります。設計の自由度や耐震性能の高さ、一年中快適に過ごせる高水準の断熱性能によって、LDKと土間が一体となった開放的な空間でも住み心地の良さを実現しています。空間を縦と横に最大限に活用し、都市部の30坪でもゆとりと開放感を得られる好例です。
【実例紹介2】効率的なプランニングで30坪以下でも大空間LDKを形に
延べ床面積30坪以下(26.7坪)の住宅であっても、3LDK+小屋裏部屋の住まいを実現した実例もあります。
このケースでは、スペースを無駄なく活用する効率的なプランニングによって、家族が集う大空間なLDKを形にしました。また、収納の取り方を工夫することで、限られたスペースであっても生活空間がスッキリと保たれ、広々暮らせる間取りとなっています。デッドスペースとなりがちな小屋裏を収納や書斎として活用するなど、家づくりのプロならではの多彩なアイデアが詰まっています。
一坪の知識を武器に、理想の住まいを実現しよう
一坪の知識は単なる単位換算に留まらず、坪単価の落とし穴や土地選びの盲点を回避する「武器」となります。また、30坪の実例からも分かる通り、ハウスメーカーでは、高い技術とアイデアによって、広さの不安なく理想の暮らしを実現するお手伝いをしています。
住まいが快適かどうかの最終判断は、肌で感じる広さが決め手です。気になるハウスメーカーを見つけたら、ぜひモデルハウスなどに足を運び、坪数や畳数の広さを体感してみてください。プロの力を借りて、後悔のない理想の暮らしを実現しましょう。