
平屋のメリット・デメリット。税金面など二階建てとの違いを解説
近年、平屋の人気が高まっていますが、メリット・デメリットは何でしょう。税金や建築コストといったお金に関することや、暮らしやすさについてなど、二階建てとの違いが気になる方もいるのではないでしょうか。
今回は平屋の特徴や、片流れ屋根・勾配天井といったプラン別のメリット・デメリットをご紹介します。新築注文住宅を検討する際の参考にしてみてください。
平屋とは。平屋の特徴とマンションとの違い
平屋とは、どのような住宅を指すのでしょうか。まずは、平屋の概要について確認しましょう。
平屋とは、一階建ての家のこと
平屋とは、一階建ての家のこと。基本的には階段がなく、リビング・寝室・子ども部屋・バスルーム・トイレなどがすべて「ワンフロア」にあるのが特徴です。
日本に古くからある住宅の形として知られ、昔は平屋が主流でしたが、限られた土地を有効活用するために、戦後からは二階建て・三階建て住宅やマンションなどの集合住宅が主流となっています。
しかし、最近では平屋暮らしを希望する方が増えており、世代に関係なく平屋の魅力が再認識されつつあります。平屋と聞くと、細切れの間取りで動線の悪いイメージがある方もいるかもしれませんが、近年は、暮らしやすさに重点を置いた個性豊かな平屋が増加傾向にあります。
平屋とマンション・アパートの違い
平屋は一般的なマンションやアパートと同じく、ワンフロアでの生活となります。一見、同じような生活が送れると考えがちですが、いくつか異なる点もあります。
平屋は建物が独立しているため、マンションやアパートほど隣家に対する騒音を気にしなくて済みます。また、庭や駐車場を作ることができるのも、戸建ての平屋ならではの魅力。建て替えやリフォームも、マンション・アパートの場合は個人の意思だけで行えませんが、持ち家の平屋であれば自由に行えます。
平屋の人気上昇中!人気の理由は?
国土交通省が発表している建築・着工統計調査によると、2013年の平屋建築件数は36,551軒でしたが、2023年では57,848軒に増加。一方、二階建てを見ると2013年の築件数は424,511軒でしたが、2023年では285,557軒に減少。近年では平屋の建築件数が伸びていることがわかるでしょう。
平屋住宅が人気傾向にある理由としては、次のことが考えられます。
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平屋のメリット
世代を問わず注目を高めている平屋建てのメリットは、次の9つです。
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《メリット1》階段がないため生活しやすい
平屋は階段がないため、誰もが生活しやすい空間になることが最大の魅力といえます。例えば、家事をするために二階に上がる必要もありません。小さい子どもや高齢者がいる場合、階段で転倒したり、段差でつまずいたりするリスクがないのも嬉しいポイントです。
さらに、将来子どもが巣立って子ども部屋を使わなくなった場合も、平屋であれば同じフロアの移動だけで済むため、客室や夫婦の趣味部屋などとして再利用しやすいでしょう。
《メリット2》動線がコンパクトでスムーズに動ける
平屋はすべての間取りがワンフロアに集約されているため、家事動線や生活動線がコンパクトにまとまります。上下階の移動がなく部屋同士の距離が短いことで、効率よく家事がしやすいのも特徴です。
水回りを集めるなど動線効率を意識した間取りを設計することで、忙しい朝の時間帯や掃除・洗濯をするときにそのメリットを実感できるでしょう。
《メリット3》家族間のコミュニケーションがとりやすい
「部屋と部屋の距離が近い」「廊下が少ない」といった間取りの傾向から、家族間のコミュニケーションがとりやすいことも平屋の大きなメリットです。家族の気配を感じやすく、子どもが成長し自分の部屋を持つようになっても、お互いの様子を把握しやすいのも嬉しいポイント。
「いつでも家族を身近に感じたい」という希望を叶えたい場合に、おすすめな住まいの形といえるでしょう。
《メリット4》バリアフリー化の対応がしやすい
二階建てや三階建ては、バリアフリー化するとなると、大きな改修が必要となり、費用も高額になる傾向にあります。一方の平屋はもともと階段がなく、ワンフロアのためバリアフリーに対応しやすいのも特徴です。
最初から段差のないフラットな空間にしておけば、安全性が高まり、バリアフリーに対する改修費用も抑えられるでしょう。
《メリット5》地震や台風に強い
近年、地震や台風などの自然災害が多発している日本では、長く安心して住み続けられる住宅の需要が高まっています。平屋であれば、木造や鉄骨造に関わらず地震や台風に強い構造であるのもメリットです。
平屋の場合、二階部分の重さがかからず一階で支える重量が軽いため、安定しやすく耐震性がアップします。建物自体の高さが低く、一階の面積が広いことで風の影響を受けにくいことも併せて、災害時に対する安全性を高められるでしょう。
なお、平屋における木造と鉄骨造の違いは、価格や断熱性、間取りなどに現れます。詳しく知りたい場合は、ハウスメーカーの営業担当者に相談してみるとよいでしょう。
《メリット6》間取りや外観の自由度が高い
平屋は支える重量が軽い分、二階建てと比べて壁や柱が少なく済み、開放的な空間や大きな開口部をつくりやすいのも特徴です。そのため、平屋の間取りや外観は自由度が高く、多彩な住まいの形を実現しやすいのも嬉しいポイントといえます。
家の形をシンプルな形状だけでなく、ロの字型やコの字型、L字型などのタイプから選ぶことが可能で、屋根との組み合わせ方でも個性を出しやすいでしょう。ほかにも、勾配屋根にして天井を高くとるだけでなく、空間を最大限に活かした「ロフト」や「屋根裏」を設けて遊び心のある間取りを作ることもできます。
最近では、一つのデザインコンセプトに基づいて設計された平屋のデザイン住宅も人気が高いので、ライフスタイルに合わせて、暮らしやすい空間を検討してみてはいかがでしょうか。
【関連記事】ロフト付き平屋の間取りは?固定階段は設置できる?気になる疑問を解説
《メリット7》ワンフロアなので光熱費を抑えられる
平屋はワンフロアでの生活になるので階層ごとの気温差が生まれず、冷暖房費などの光熱費を抑えやすいといったメリットもあります。また、トイレなどの水回り関係を一階・二階それぞれに設けることもないため、水道代も安く済むでしょう。
最近では、平屋の大きな屋根を活かして、太陽光発電を取り入れる方も多いです。太陽光発電によって、電気代が抑えられるほか、売電収入が得られたり、停電したときでも電気を使えたりするメリットも享受できます。
【関連記事】太陽光発電のメリット・デメリットを総ざらい。売電やマイホームへの設置費用
《メリット8》建物のメンテナンス費用が安く済む
一戸建てを建てると、5年、10年という単位で、外壁や屋根の塗装メンテナンスが必要となります。建物のメンテナンスは高所での作業となるため足場設置費用がかかりますが、平屋は足場の高さが二階建ての半分で済み、修繕場所の高さや面積によっては不要なケースもあります。その分、メンテナンス費用を安く抑えることができるでしょう。
《メリット9》不要な階段部分のスペースを有効活用できる
平屋は階段部分が不要のため、その分のスペースを有効活用できます。一般的に、階段やホールの部分に必要なスペースは4〜5畳ほどとされています。平屋であれば、このスペースを収納や趣味の部屋にするなど、有意義に活用することが可能です。
あるいは、不要なスペース分だけ床面積を削減すれば、建築費用のコストダウンにつながります。生活動線だけでなく、費用面においてもコンパクトな暮らしを実現しやすくなるでしょう。
平屋のデメリット
平屋にはメリットだけでなくデメリットもあります。ここでは、平屋の検討前に知っておきたい7つのデメリットとその対策をご紹介します。
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《デメリット1》広い土地が必要となる
二階建てでは、階ごとに部屋を分けられるため、広い土地を必要としません。一方の、平屋は一階部分に全ての間取りを取り入れる必要があるため、その分広い土地が必要となり、取得費用も高くなるでしょう。
また、土地は地域によって、敷地面積に対する建てられる建物の建築面積の割合(建ぺい率)が決まっています。広い土地を確保できたとしても敷地いっぱいに建物を建てられない場合もあるため、注意が必要です。
【関連記事】建ぺい率とは?計算方法や容積率との違いをわかりやすく解説!
《デメリット2》坪単価が高くなりやすい
二階建てと比べ、一坪当たりの建築費である「坪単価」が高くなりやすいのも平屋のデメリットとして挙げられます。二階建てと同じ延床面積や建材、設備であったとしても、平屋はコストがかかるといわれる「屋根材」と「基礎部分」の面積が大きく建築費用が高額になるためです。
日本では二階建てが主流のため、平屋用部材は流通量が少なく、仕入れの原価が割高となる傾向にあるのも理由の1つです。
しかし、建築コストは実際のプランによってさまざまです。総費用でみると、二階建てのほうが高くなるケースも多いため、さまざまな視点から費用をチェックしてみましょう。
《デメリット3》同じ坪数の二階建てと比べ、税金が高くなる
平屋は同じ坪数の二階建てと比べて、固定資産税が高くなります。理由として、二階建てに比べ土地の面積が広くなることや、屋根や壁などに多くの資材を使用し資産価値が高いと見なされることなどが挙げられます。
一方で、固定資産税を抑える方法はいくつかあります。土地の安い場所を選択したり、使用する資材をなるべく少なくなるようシンプルな造りにしたりするなど、工夫することで固定資産の評価額を安くできる可能性があるでしょう。
【関連記事】一戸建てにかかる固定資産税の計算方法。減税措置やマンションと税額の違いはある?
《デメリット4》日当たりの確保に工夫が必要となる
平屋はワンフロアに全ての間取りを収めるため、建物の中心部分の部屋は採光がとりにくくなります。また、隣接する土地に二階建てや三階建ての家が建ってしまうと、とたんに日当たりが悪くなる可能性があるでしょう。
隣接する土地に建物が建っていない場合でも、将来を見越して「中庭を作る」「建物に凹凸を作り採光面を増やす」など、設計時において日当たりを確保するための工夫ができるとよいですね。
《デメリット5》防犯面に不安がある
平屋は一階建てのため、二階建ての二階部分に比べ防犯面に不安があります。空き巣などの被害に合わないためには、人目につかない土地は避けるなど立地選びから注意をすることが大切です。
そのほか、防犯対策を意識した外構作りも必須となります。「プライバシーを確保したオープン外構にする」「建物の周りに音の出る砂利を敷き詰める」なども効果的。近隣住民とのコミュニケーションを心がけることで、犯罪抑止にもつながるでしょう。
【関連記事】オープン外構の侵入防止・目隠し対策を解説。必要な理由やメリット
《デメリット6》水害時には浸水リスクがある
一階建ての平屋は、水害時に浸水の被害に遭うことも想定されます。また、台風や洪水など大規模な災害が起きた場合、二階建てであれば二階部分に避難できますが、平屋では家の外に避難しなければならないことも念頭に置く必要があるでしょう。
土地選びから始める場合は、自治体が公表しているハザードマップを参考に、浸水想定区域でないか確認しておくことをおすすめします。
参考:国土交通省「ハザードマップポータルサイト」
《デメリット7》プライベートが確保しにくい
平屋はワンフロアであるがゆえに、音や声が漏れやすく、プライベートを確保しにくい点も懸念ポイントです。子どもの思春期を想定して「リビングから離して子ども部屋をつくる」などプライベート空間への配慮が必要になるかもしれません。ほかにも「廊下を設ける」「間取りにロフトを取り入れる」などの工夫を取り入れることも大切でしょう。
また、平屋は部屋同士の距離が近いため、家族間だけでなく来客時に対する検討も重要です。その際、玄関から来客動線と家族の生活動線を分けた間取りがおすすめ。動線が分かれることで、来客時でもプライベート空間を確保でき、心地よい暮らしにつながるでしょう。
平屋住宅が向いている人とは
家づくりの際は、平屋と二階建てどちらで建てようか悩む方もいるかもしれません。一般的に、理想の住まいのかたちは、「ライフスタイル」「家族構成」「予算」「土地の広さ」はもちろんですが、「どんな暮らしがしたいか」などによって異なります。
平屋住宅がおすすめな方は以下の通りです。
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平屋プラン別に見るメリット・デメリット
平屋は家づくりの自由度が高く、注文住宅を建てる際には「片流れ屋根」や「廊下なし」などさまざまなプランを検討できます。ここでは、気になる方が多いプランのメリット・デメリットをご紹介します。
片流れ屋根のメリット・デメリット
片流れ屋根は、一方向にだけ傾斜をもつ屋根のことです。形状がシンプルなため、建築費用を安く抑えられます。平屋を片流れ屋根にすれば、屋根の一方に高さを出せるため、高い位置に窓を配置し採光を確保しやすくすることも可能です。
一方で片流れ屋根の住宅は、屋根や外壁が劣化しやすいといわれています。屋根が下っている方向は軒が長いですが、ほかの三方向は軒が短い傾向にあり、外壁が風雨や紫外線の影響を直接受けてしまうのです。また、雨も一方向にしか流れないため、屋根の負担が大きい分、劣化が早まってしまいます。
【関連記事】片流れ屋根のメリット・デメリット。外観の特徴や雨漏り・風対策について解説!
廊下なしの間取りのメリット・デメリット
廊下なしの間取りは、住まい全体をコンパクトにまとめることができ、動線を短くできるメリットがあります。限られた敷地に家を建てる場合には、廊下分のスペースをなくし収納スペースをつくるといった有効活用もできるでしょう。
廊下なしの間取りはデメリットもあります。1つ目は、生活音が家中に伝わりやすいこと。浴室やトイレの水音などがリビングに直接伝わることも考えられるため、間取りの工夫が必要です。また、廊下がないことでプライバシーの確保がさらに難しくなります。家族や来客時のことを考えて、プランを検討することをおすすめします。
【関連記事】廊下のない家で失敗・後悔しない!間取りの工夫やメリット・デメリットとは?
勾配天井のメリット・デメリット
勾配天井とは、屋根の傾斜にあわせて斜めになった天井のことです。勾配天井にすることで、天井に高さが出るため、開放感のある空間になります。高い位置に窓を設置することもできるため、平屋でも光を取り入れやすくなるでしょう。
一方で、建築コストが高くなるほか、部屋を明るくするための照明計画にも配慮が必要です。天井に高さがでるため、日々のメンテナンス時に手間がかかることを覚えておきましょう。
【関連記事】勾配天井とは?メリット、デメリットと後悔しない照明などの設置ポイントを解説
コの字間取りのメリット・デメリット
コの字型の平屋とは、建物を真上から見た場合にカタカナの「コ」の字の形をしているタイプを指します。凹んでいる部分にウッドデッキや中庭を作れば、プライバシーを確保しながら子どもの遊び場や洗濯物を干す場所などに活用ができるため、利便性の高さが魅力です。
デメリットは、外壁面が多くなる分、建築価格が高くなることです。また、コの字だと、回遊動線が作りにくく、間取りによっては家事がしづらくなってしまうことが考えられます。
【関連記事】中庭のある平屋の間取り。おしゃれな中庭づくりのコツや後悔しないためのポイントを紹介
ハウスメーカーで建てる!デメリットを最小限にした平屋の提案
ハウスメーカーで平屋の注文住宅を建てたいと考えている方もいるかもしれません。近年は平屋住宅の人気の高まりから、各ハウスメーカーにおいて魅力ある多彩な平屋の住宅商品が提供されています。
大手ハウスメーカーによる家づくりの強みは、独自の技術や経験を活かした高い提案力です。平屋のデメリットを最小限に抑え、叶えたい暮らしのかたちに寄り添った平屋プランを提案してくれるでしょう。
住宅カタログを見たり、住宅展示場を訪れたりして、理想的な平屋の住まいを探してみてください。
【関連記事】大手ハウスメーカーで建てる平屋の特徴を比較!おすすめ商品や人気の間取り
平屋のメリット・デメリットを比較して家づくり!
今回は平屋のメリット・デメリットを解説しました。平屋は階段のないワンフロアのため、「生活しやすくバリアフリーに対応しやすい」「光熱費やメンテナンス費用を安く抑えられる」といったメリットがあります。一方で、「二階建てに比べ税金が高くなる」「日当たりやプライバシーの確保に工夫が必要」といったデメリットも考えられます。
近年は平屋のプランも豊富で、間取りやプランニングにこだわれば、平屋のデメリットを最小限した家づくりが可能です。平屋の注文住宅を検討する際は、さまざまな住宅展示場を見学するなどして、希望に添った建築会社を探してみてはいかがでしょう。満足のいく平屋の住まいを建てられるとよいですね。