
10坪の狭小住宅。気になる間取りと価格相場は?2階建て・平屋の建築事例も
10坪の土地にどのような狭小住宅が建てられるのでしょうか。2階建て・平屋の間取りや狭小住宅の価格相場も気になるところです。今回は、限られた10坪という空間を最大限に活かす間取りの工夫や、家づくりで失敗しないためのメリット・デメリットを解説します。
10坪の土地にはどんな家が建つ?
まずは10坪というコンパクトな土地で実現可能な「狭小住宅」についてくわしく見ていきましょう。
10坪の土地でどれくらいの広さの家が建てられる?
「狭小住宅」という言葉に明確な定義はありませんが、15〜20坪(約50㎡)程度の狭い土地(狭小地)に建てられた住宅のことを指すことが多いです。特に時価の高い都市部では、「都心に住みたいけれど、土地のコストは抑えたい」というニーズから、狭小住宅を選ぶ方が増えています。
10坪の広さは、畳に換算すると約20畳です。この広さから、玄関や浴室、トイレ、洗面所などの水回りに必要なスペースを差し引いて考えてみましょう。一般的な広さでみると、居室や収納スペースに充てることができるスペースが意外に多いことがわかります。
2階建てや3階建てといった多層階にすることで、廊下や階段に必要な面積は増えるものの、延べ床面積を広げることが可能です。つまり、10坪の土地でも、家族構成やライフスタイルに合わせた家づくりが叶います。
10坪の家づくり、土地選びの重要なポイント
建てられる家の広さは、同じ敷地面積の家でも、土地の条件にも大きく左右されます。その鍵となるのが、「建ぺい率」や「容積率」という建築基準法で定められた割合です。
知っておくべき「建ぺい率」と用途地域
「建ぺい率」は、敷地面積に対する建築面積の割合で、用途地域ごとに日照の確保や防災の観点から上限が定められています。一方、「容積率」は、敷地面積に対する建築延べ面積の割合で、良好な住環境を保護するために用途地域に応じて50〜1300%の範囲で制限されています。
ここで特に重要なのが、用途地域によって建ぺい率が大きく異なるという点です。
用途地域 | 特徴 |
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商業地域・近隣商業地域 |
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住居系の用途地域 |
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例えば、建てたい家の建築面積が10坪で、建ぺい率80%の場合は約12.5坪以上、住居系の用途地域で、建ぺい率が60%の地域の場合、約16.7坪(10坪 ÷ 0.6)以上の敷地面積が必要になります。
また、建ぺい率と容積率に加えて、以下の制限も建てられる家の種類や大きさに影響します。
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これらの制限は、10坪の土地にどのような家が建てられるかを考える上で、重要な要素となることを覚えていきましょう。
【関連記事】用途地域とは?検索の仕方や13種類の特徴。住宅建築時のポイントも解説
土地の形状も考慮する:角地のメリット
土地が角地の場合は、建ぺい率が10%緩和されるため、必要な土地面積を抑えることができます。角地は土地代がやや高くなる傾向がありますが、必要な敷地面積が少なくなるのはメリットといえるでしょう。
また、住居系の地域であっても、準防火地域に指定されていれば、火災に強い準耐火以上の仕様の建物にすることで、角地でなくても建ぺい率が10%緩和されることがあります。ただし、前面道路の幅が狭い場合は、建物の高さに制限が生じたり、容積率が指定された数値よりも低くなったりすることもあるため、注意が必要です。
このように、「建ぺい率」は10坪の建物を建てる上で非常に大きな影響を与えるため、土地を探す際には必ず確認するようにしましょう。
気になる費用は?10坪の土地に建てる狭小住宅の価格相場
【間取り実例】10坪の狭小住宅プラン|2階建て・平屋
10坪の家は、縦の空間を有効活用することで、意外なほどの広さと快適さを実現できます。ここでは、10坪の狭小住宅にぴったりな家族構成やライフスタイルを魅力的な間取り事例とともにご紹介します。ハウスメーカーや工務店、建築家のいる設計事務所など、建築依頼先に相談する際の参考にしてみてください。
間取り1:吹き抜けで開放的な空間をつくった2階建て
建築面積10坪の住宅密集地に、吹き抜けを設けて開放的な空間を実現しら2階建ての間取り事例があります。3~4人のファミリー層に最適な間取りですが、採光を重視するご夫婦や、開放的な空間で趣味やワークスペースを楽しみたい一人暮らしの方などにもおすすめです。
隣家との距離が近い狭小住宅では、日照の確保が重要な課題になることが多くあります。吹き抜けを設けることで、上階からの光を効率的に取り入れ、家全体を明るくすることができます。また、縦方向の空間が生まれることで、視覚的な広がりを感じさせ、風通しも向上するでしょう。
間取り2:2階LDKで家族が集う広々スペースを実現した2階建て
「家族が集うスペースを広く明るい空間にしたい」という理由から、LDKを日当たりのよい2階に配置した狭小住宅の間取り事例もあります。1階が暗くなりがちな住宅密集地でよく見られる間取りで、リビングを明るく開放的な空間にしたいご夫婦や、バルコニーを活用してアウトドアリビングを楽しみたいアクティブなご家族などにおすすめです。
2階のLDKに合わせて大きなバルコニーを配置すると、バーベキューなどを楽しむための便利な動線も確保できます。
間取り3:最上階に子ども部屋を配置して日当たりを確保した3階建て
10坪の土地でも、3階建てのように高さを活かした間取りにすることで、居住スペースを確保することができます。最上階に子ども部屋を配置することで、日当たりを確保し、成長期のお子様にとって快適な環境をつくることができます。お子様のプライベート空間を確保しつつ、日当たりの良い環境で成長を見守りたいご家族におすすめです。
【関連記事】3階建ての間取りや外観の選び方。高さを活かした家づくり
間取り4:LDKを中心に生活動線がスムーズな平屋
コンパクトな住まいにはなりますが、平屋の狭小住宅を建てることもできます。LDKを中心に水回りや居室がまとまった家づくりをすると、高齢になっても暮らしやすい住まいとなるでしょう。また、小さなお子様のいるご家族のように、ワンフロアで移動しやすい生活を重視する方やコンパクトながらも効率的な間取りを求める方にぴったりの間取りです。
扉を引き戸にするなど、細かな工夫を取り入れて、限られたスペースを有効活用できるとよいですね。
【関連記事】平屋のメリット・デメリット。税金面など二階建てとの違いを解説
狭小住宅のメリット
コンパクトな狭小住宅を選ぶからこそ得られるメリットを3つご紹介します。
土地代や税金が抑えられる
狭小住宅のメリットは、土地代や税金が抑えられることです。
同じ地域に家を建てる場合、当然ながら広い土地よりも狭い土地の方が購入費用を大幅に抑えられます。浮いた資金を建物のデザインや設備代にあてることで、予算内で理想の住まいを実現できます。
また、建築時や入居後に支払いが必要となる固定資産税や登録免許税、不動産取得税といった税金も、土地や建物の評価額に応じて課税されるため、狭小住宅の方が安く抑えられます。初期費用だけでなく、維持費の面でもメリットがあるといえるでしょう。
土地の選択肢が増える
東京や大阪などの都心部でマイホームを検討している場合、狭小住宅は土地の選択肢を大きく広げてくれます。駅近や生活利便性の高いエリアは人気が高く、土地価格も高騰しがちですが、狭い土地であれば比較的安価に見つかることもあります。
これまで予算で諦めていたエリアでも、狭小住宅という選択肢を持つことで、理想の土地を手に入れることができるかもしれません。
掃除やメンテナンスの負担が減る
居住スペースがコンパクトな狭小住宅は、掃除の手間や時間を大幅に削減できます。設計時に効率的な家事動線にすることで、さらに掃除が楽になるでしょう。
また、メンテナンス箇所が少なくなるため、忙しい人にとって大きなメリットとなります。
狭小住宅を建てる前に知っておきたいデメリット・注意点
狭小住宅には多くの魅力がある一方で、事前に把握しておきたいデメリットや注意点も存在します。ここからは、特に気をつけたい3つのポイントをご紹介します。
居住スペースが狭くなる
狭小住宅のデメリットは、やはり居住スペースが限られることです。快適な暮らしを実現するためには、デッドスペースを有効活用して収納スペースを確保するなど、吹き抜け、スキップフロアなどの空間を広く見せるための工夫を取り入れることが大切です。
また、子供の成長や独立など、将来的な家族構成の変化を見据えて、可変性のある間取りやライフステージに合わせて用途を変えられる空間などを検討することもポイントです。
建築コストがかかる場合がある(防音・耐震など)
住宅密集地に狭小住宅を建てる場合、静かな居住環境とプライバシーを確保するための防音対策や、縦に伸びる建物特有の耐震対策が必要になることがあります。これらの対策には追加の費用がかかり、結果的に建築コストが割高になる可能性があります。
隣地との距離が近い場合は、遮音性の高い壁材や窓を採用するなどの防音対策を検討しましょう。また、地盤が弱い場合は土地の地盤改良工事や、耐震性の高い構造(鉄骨造や耐震性の高い木造軸組工法など)を選ぶことも視野に視野にいれる必要があります。
駐車場(ガレージ)の確保が必要になる
自家用車を所有している場合、狭小住宅における駐車スペースの確保は重要な検討事項です。敷地面積が限られているため、駐車場を設けると居住スペースがさらに狭くなる可能性があります。前面道路が狭い場合、駐車時の運転操作が難しくなることも考慮しなければなりません。
解決策としては、建物の一部をガレージとする「ガレージハウス(ビルトインガレージ)」という選択肢があります。また、費用はかかりますが、近隣の月極駐車場を借りることも選択肢の一つです。ご自身のライフスタイルや予算に合わせて、最適な方法を検討しましょう。
10坪の狭小住宅で快適に暮らすための間取りの工夫
狭小住宅でも、間取りの工夫次第では驚くほど快適に暮らすことができます。限られた空間を最大限に活かすための間取りのアイデアをご紹介します。
効率的な動線設計の設計
狭い居住スペースで快適に過ごすためには、家事動線や生活動線を意識した設計が不可欠です。これらの動線が交わる箇所が多いほど、部屋が狭く感じられ、動線が長くなるほど無駄なスペースが生まれます。
洗濯、物干し、収納を一直線に配置するなど、家事動線をなるべく1フロアでまとめる、洗面所やトイレ、浴室など水回りを隣接させるなど、動線計画を工夫しましょう。
【関連記事】家事動線のよい間取りのポイント。家事が楽になる住まいの工夫とは
吹き抜けやスキップフロアで開放感を演出
吹き抜けやスキップフロア(中2階)は、狭小住宅を広く見せる有効な手段です。吹き抜けは縦方向の空間的な広がりを生み出し、上階からの光を取り込むことで室内全体を明るくしてくれます。スキップフロアは、視覚的な変化を与え、空間を有効活用するだけでなく、収納スペースや趣味の空間としても活用できます。
さらに、大きな窓をたくさん設ける、天井を高く設計する、採光を取り込むための中庭を設けるといった方法も、限られた空間に開放感をもたらし、視覚的な広がりを生み出すのに役立ちます。
【関連記事】スキップフロアとは?メリット・デメリットやおすすめの間取り実例を紹介
【関連記事」【事例紹介】吹き抜けのある家を建てたい!間取りやメリット・デメリット
廊下を極力減らして居住スペースを最大限に確保
少しでも広々とした空間で暮らしたいなら、廊下を可能な限り減らし、その分居室の面積にあてることを検討しましょう。部屋は小さく区切らず、数を少なくするのもポイントです。
ただし、階段周りやプライバシー確保のために廊下が必要となる場合もあります。間取りを決める際は、安全性を考慮しつつ、無駄な廊下や仕切りをなくすように工夫しましょう。
階段下などのデッドスペースを収納として有効活用
狭小住宅では、縦方向への収納アイデアが重要になります。階段下はもちろん、天井裏や壁面など、デッドスペースになりがちな場所は積極的に収納スペースとして活用しましょう。
可動棚や収納ケースを設置したり、壁面収納を造り付けにしたりすることで、収納量を大幅に増やすことができます。階段下をトイレや洗濯機置き場として利用する建築事例もあります。さまざまな事例を参考に、アイデアを取り入れてみてはいかがでしょうか。
大手ハウスメーカーで建てる10坪の狭小住宅
大手ハウスメーカーは、長年の実績と豊富なノウハウを活かし、狭小住宅においても質の高い提案をしてくれます。狭い土地での建築に関する疑問や不安に対しても、経験豊富な営業担当者が親身に相談に乗ってくれるでしょう。
実際に完成した注文住宅を見学できる完成見学会は、最新の技術やデザイン、そして狭小住宅ならではの工夫を体感できる良い機会となります。住宅展示場を訪れたりカタログを請求したりして、大手ハウスメーカーが提供する狭小住宅の可能性を探ってみてはいかがでしょうか。
【関連記事】大手ハウスメーカーの特徴を一覧で比較!工務店との違いやおすすめポイント
まとめ|10坪の土地で理想の狭小住宅を建てよう
10坪というコンパクトな土地に建てる狭小住宅は、特に時価の高い都市部において、土地の価格を抑えながら、利便性の高い住まいを手に入れるための魅力的な選択肢となります。
10坪の土地でも、「効率的な動線設計」「縦の空間の活用」「デッドスペースの有効利用」など、間取りを工夫することで、十分な居住スペースを確保しながら快適に暮らせるでしょう。今回ご紹介した家づくりのコツや間取り事例を参考に、理想の狭小住宅を建てられるとよいですね。