
木造と鉄骨、建てるならどっちがいい?違いやメリット・デメリットを解説
住宅メーカーを検討する際、「木造住宅と鉄骨住宅のどちらがよいのだろう?」と悩む方もいるかもしれません。今回の記事では、木造住宅と鉄骨住宅それぞれの特徴やメリット・デメリットを比較します。ぜひ家づくりの参考にしてみてください。
木造住宅と鉄骨住宅の特徴
注文住宅の購入を検討する際、家の骨組みとなる「構造」選びで悩む方も多いのではないでしょうか。現在、家づくりで採用されている主な住宅構造には、以下の4種類があります。
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一戸建て住宅は、さまざまな箇所の修繕やリフォームを繰り返しながら何十年と住み続けるものです。しかし、構造自体はあとから変更できないため、慎重な選択が求められます。
今回は、数ある構造の中でも比較的多く採用されている「木造」と「鉄骨造」にスポットを当て、それぞれの特徴をご紹介します。
木造住宅(W造)とは
木造住宅とは、住宅の主要な部分に「木材」を使っている住宅のことです。総務省が公開している住宅構造に関する最新の統計データによると、日本の住宅の約5割が木造住宅となっています。多くの方に馴染みのある住宅構造である一方、ここ30年間ほどでコンクリートや鉄骨でできた住宅の割合が増えているのも事実です。
木造住宅で主に使用される工法は、主に「木造軸組(在来)工法」と「2×4(ツーバイフォー:木造枠組壁)工法」の2種類に分けられます。
木造軸組(在来)工法の特徴
木造軸組(在来)工法は、日本古来の「伝統工法」を現代的に簡略化した工法のことです。柱と梁で骨組みを築き、筋違いや合板で組み上げて強度を高めます。日本の新築住宅では、最も一般的な工法です。
2×4(ツーバイフォー:木造枠組壁)工法
2×4(ツーバイフォー)工法は、木造枠組壁とも言われる北米由来の工法のことです。柱や梁を基礎とするのではなく、2インチ×4インチの規格化され、パネル状になった木材を組み立てて建築する方法です。柱などの線ではなく、面で建物を支える構造体となっています。
参考:総務省 統計局「令和5年住宅・土地統計調査」
鉄骨住宅(S造)とは
鉄骨住宅とは、建物の主要な部分に「鉄骨」を使っている住宅のことです。使用する鉄骨には「軽量鉄骨」と「重量鉄骨」の2種類があり、それぞれ特徴が異なります。
軽量鉄骨の特徴
軽量鉄骨造とは、家の柱や梁などに厚さ6mm未満の鋼材を用いた構造のことです。一般的に、ハウスメーカーの戸建て住宅では、軽量鉄骨造が採用されています。
軽量鉄骨造の建て方としては、「軽量鉄骨ブレース工法」を用いるのが一般的です。この工法では、鉄骨で骨組みを作ったあと、対角線をつなぐ筋交い(ブレース)で補強し、ボルトで連結して組み立てます。
【関連記事】軽量鉄骨造とは?メリット・デメリットや木造・RC造との違いを解説
重量鉄骨の特徴
重量鉄骨造とは、厚さ6mm以上の鋼材を使った構造のことです。主にマンションや大型商業施設の建設に用いられます。
重量鉄骨造の建設では、筋交いや耐震壁が不要な「鉄骨ラーメン工法」が採用されるケースが多く見られます。柱と梁を溶接して強固な枠組みを作っていくため、柱や壁の少ない広々とした空間を作ることが可能です。
表で比較!木造住宅と鉄骨住宅の違い
木造住宅と鉄骨住宅の違いを比較表にまとめました。
項目 | 木造住宅 | 鉄骨住宅 |
---|---|---|
コスト | 安い | 高い |
断熱性・気密性 | 高い | 低い |
耐震性 | 揺れを吸収して地震に強い | 強度が高く地震にも強い |
防音性(遮音性) | 低い | やや高い |
防虫性(シロアリ被害) | 被害に遭いやすい | 被害に遭いにくい |
間取りの自由度 | 低い | 高い |
火災保険 | 高い | 安い |
固定資産税 | 安い | 高い |
一般的に、鉄骨住宅は木造住宅よりも建設コストが高い傾向にあります。しかし、近年では木材価格の高騰や人件費の増加により、住宅価格全体が上昇傾向にあるため、一概にはいえません。
住宅のコストは、メーカーや使用する素材、設計プランなどによって大きく左右されます。複数のハウスメーカーに見積りを依頼し、比較検討することをおすすめします。
木造住宅のメリット
木造住宅のメリットをご紹介します。
鉄骨住宅に比べて軽量で低コスト
ハウスメーカーにもよりますが、一般的に木造住宅は鉄骨住宅に比べて建築コストを抑えやすい傾向があります。理由として、軽量な木材の材料費の方が鉄骨よりも安いことや、工期が比較的短いことが挙げられます。
ただし、木材の種類や質によって費用は大きく変わります。質の高い木材を多く使う場合などは、費用が高額になる可能性があります。木造住宅を検討する際は、予算に合わせて使用する木材の種類やグレードを検討するとよいでしょう。
環境に優しい
木材は、環境負荷の少ない貴重な資源です。森林資源を適切に管理し、再生産しながら使い続けることで、持続可能な社会の実現に貢献できます。また、建設や加工される過程においても、二酸化炭素の排出量が少ないという利点があります。
さらに、木は大気中の二酸化炭素を吸収し、炭素を固定する役割を担っています。地球温暖化対策が重要な課題となっている現代において、木造住宅は温室効果ガス削減に貢献する有効な手段といえるでしょう。
脱炭素化が求められる建設業界において、木造住宅の果たす役割は今後ますます大きくなると予想されます。
参考:林野庁「3章 木造建築物の一般的特性」
断熱・調湿性能に加え、防音性も向上
木材は断熱性や調湿性に優れているため、四季のある日本の風土にも適した住宅を建てられます。夏は涼しく、冬は暖かく過ごせるのは木造住宅の大きな魅力といえるでしょう。優れた調湿性能は結露やカビの発生を抑制する効果も期待でき、湿度の高い夏でも安心して過ごせる住まいづくりが可能です。
また、かつての木造住宅は通気性がよい反面、防音性や遮音性が低いというイメージがありました。しかし、近年は「高断熱・高気密」化が進み、隙間を最小限に抑えた木造住宅が登場しています。そこに断熱材の効果も相まって、防音性は格段に向上しています。
木造住宅のデメリット
木造住宅のデメリットをご紹介します。
腐朽や蟻害への対策が必要
木材は鉄鋼に比べると、腐朽菌やシロアリによる被害を受けやすいという側面があります。特に、高温多湿な日本の環境下においては、適切な対策を講じないと木造住宅の寿命を縮めてしまう可能性があります。
具体的には、通風・通気性を確保することで、湿気を防ぎ、木材の腐朽を抑制することができます。また、防蟻処理や定期的な点検など、シロアリ対策もしっかりと行いましょう。
木造住宅を検討する場合には、ハウスメーカーのシロアリ予防対策や保証内容を十分に確認しておくことが重要です。
性能や品質にバラつきが生じやすい
木造住宅は、職人の技量や木材の品質によって仕上がりに差が生じやすいということも理解しておきましょう。そのため、信頼できる施工会社を選ぶことが重要です。
ハウスメーカーや工務店を選ぶ際には、営業担当者としっかり話し合い、施工実績や職人の質、木材の品質を事前にしっかりと確認しましょう。また、住宅の性能を客観的に判断するために、耐震性を表す耐震等級や気密性を表すC値(相当隙間面積)、断熱性を表すUA値(外皮平均熱貫流率)やQ値(熱損失係数)といった数値が参考になります。
柱や壁が多く必要となるため、間取りが制限される
木造住宅は、耐震性を担保するために使用する柱や壁の数が多くなる傾向があります。そのため、鉄骨造の住宅に比べて間取りの自由度が低くなる場合があることを知っておきましょう。
広いワンフロアや壁一面の大きな窓など、鉄骨住宅では実現可能な間取りであっても、木造住宅では難しい場合があります。
【関連記事】木造住宅のメリットとデメリットは?気になる寿命と防音性や耐震性
鉄骨住宅のメリット
ここからは、鉄骨住宅のメリットを見ていきましょう。
品質が安定しやすく、工期も短い
鉄骨は工場で生産されるため、品質にばらつきが生じにくいという特徴があります。建築時も、ハウスメーカーの多くは、工場で部材をあらかじめ組み立てる「プレハブ工法」を用いているため、現場での加工が少なく、作業員の技術力で品質が左右されるといった心配もありません。
また、現場での作業工程が少ないため、工期も短縮できるというメリットがあり、コスト削減にもつながります。
大空間の間取りをとりやすい
鉄骨住宅の場合、強度の高い鉄を使用するため、柱と柱の間隔を大きくとることができます。そのため、同じ延べ床面積でも、大空間や吹き抜け、大きな窓などで開放感あふれる間取りを実現できます。
間仕切り壁を設けずに、開口部を大きく取ることで、太陽光を取り込みやすくなります。日当たりの悪い土地でも、工夫次第で明るい空間を作れるのは、鉄骨住宅の大きな魅力といえるでしょう。
強度が高く、粘り強いため地震に強い
鉄骨住宅は、鉄や鋼の「粘り強さ」によって地震に耐える構造になっています。地震の力が加わっても、鉄骨がしなることで地震のエネルギーを吸収し、建物の倒壊を防ぎます。耐震性に関しては、木造と同等の性能を持っていることになります。
【関連記事】耐震等級3は必要?意味や調べ方、証明する費用やメリットを解説
鉄骨住宅のデメリット
鉄骨住宅のデメリットをご紹介します。
建築コストがかかる
鉄骨造の注文住宅は、一般的に木造住宅よりも建築コストが高くなる傾向があります。鉄骨は木材に比べて材料費が高いことに加え、工場で一邸ごと加工する必要があるため、その分の費用がかかります。将来的なリフォームや増改築においても、同様に費用が高額になるケースが多いようです。
地盤改良が必要なケースが多い
鉄骨住宅は木造住宅に比べて重量があるため、土地の地盤が弱い場合には、地盤を強化する必要があります。立地条件や地盤形状によっては、地盤改良工事が必要になるため、物件価格だけでなく工事費用なども十分に考慮しましょう。
土地選びの段階で失敗しないためにも、自治体が公開しているハザードマップなどを活用して、地盤の強さを事前に確認することが大切です。
【関連記事】ハザードマップの見方。色付けで分かる災害リスクと使い方のポイント
適切な断熱対策が必要
鉄骨住宅は木造住宅に比べて熱伝導率が高く、熱を通しやすいという特徴があります。そのため、快適な住環境を維持するためには、適切な断熱対策が必要になります。
鉄骨住宅の場合、柱の外側に断熱材を敷き詰めることで断熱効果を高める「外断熱」を用いたほうがよいとされています。しかし、コストが高くなる傾向があるため、予算と相談しながら検討する必要があります。鉄骨住宅を検討する際には、ハウスメーカーのパンフレットやホームページで、断熱性能を確認しましょう。
【関連記事】鉄骨住宅のメリット・デメリット。特徴や木造住宅との違いとは
木造住宅と鉄骨造住宅、どちらを選ぶべき?
木造住宅はこんな暮らしをしたい方におすすめ
木造住宅は、以下のような方に向いています。
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木造住宅は、鉄骨住宅に比べて建築コストを抑えられるため、できるだけ費用を抑えたい方におすすめです。また、環境への負担が少ない家づくりを実現したい場合にも、再生産可能な資源である木材が適しているでしょう。
鉄骨住宅はこんな暮らしをしたい方におすすめ
鉄骨住宅は、以下のような方に向いています。
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鉄骨住宅は、建築コストが高くても、安心して暮らせる頑丈な家を求める方にとって魅力的な選択肢となるでしょう。また、木造住宅に比べて耐用年数が長いため、初期費用が高くても、長期的に見て費用を抑えられる可能性があります。
ただし、固定資産税は木造住宅の方が安く、火災保険は鉄骨住宅の方が抑えられるなど、税金や保険料の違いも考慮する必要があります。どちらの構造が向いているかどうかは、人によって違うため、それぞれのメリット・デメリットを比較して検討することが大切です。
【関連記事】【軽量鉄骨・木造】住宅の寿命はどのくらい?耐用年数の違いや長く住むためのコツを解説
防火地域や準防火地域に住宅を建てる場合は?
火災による被害を最小限に抑えるため、自治体によっては「防火地域」や「準防火地域」といったエリアが指定されています。これらの地域では、耐火性を高めた住宅(耐火建築物)を建てる必要があります。
防火地域や準防火地域では、鉄筋コンクリート造や鉄骨造の住宅が多く見られます。しかし、木造住宅でも耐火構造を施すことで建築が可能です。木造住宅は、他の構造に比べて軽量で建築費用も抑えられることから、近年では防火地域や準防火地域でも増加傾向にあります。
【関連記事】防火地域・準防火地域とは?木造でも大丈夫?調べ方や建築制限について解説
大手ハウスメーカーが手掛ける注文住宅
大手ハウスメーカーは、それぞれ独自の特徴を持った住まいを提供しています。鉄骨住宅や木造住宅でどのような注文住宅を建てられるのか、住宅展示場やモデルハウスなどで実際に確かめてみるのがおすすめです。ここでは、その一例をご紹介します。
【木造住宅】地元の国産材や銘木を使ったこだわりの住宅
ハウスメーカーの中には、地元の国産材や世界の銘木を使った、こだわりの家づくりを提案しています。木造住宅で気になる耐火性についても、外壁建材を独自の技術で施工することにより、優れた耐火性能を実現しているハウスメーカーもあります。
【鉄骨住宅】強度があり高い品質を保ち続ける住宅
鉄骨住宅では、独自の研究を重ねた結果、建物を支える鉄骨などの耐用年数60年以上を実現しているハウスメーカーがあります。デザイン設計の自由度も高く、開放感あふれる大空間を設けるなど、ダイナミックな空間づくりが可能となっている点も魅力です。
地震や台風といった自然災害の多い日本では、住宅の耐震性や耐久性が気になるところです。しかし、大手ハウスメーカーでは、木造住宅でも鉄骨住宅でも、住宅性能表示制度の最高等級を取得している住宅が主流になってきているため、住宅性能面では木造と鉄骨造の違いはなくなってきています。
【関連記事】大手ハウスメーカーの特徴を一覧で比較!工務店との違いやおすすめポイント
木造住宅と鉄骨住宅の特徴を比較して最適なハウスメーカー選びを
今回は、木造住宅と鉄骨住宅の特徴や、それぞれのメリット・デメリットを比較しました。同じ資材を使っていても、施工会社によって仕上がりなどに違いが出る点には留意は必要です。
木造か鉄骨かにこだわるのではなく、資料請求をしたり実際に住宅展示場へ足を運んだりして、各メーカーごとの特徴を比較検討し、信頼できる施工会社を選ぶことが大切です。ご自身やご家族にとって理想の家づくりができるとよいですね。